第139話 セレナVSアークス模擬戦 女神の息子はズルいな


「うむ、ちまちまヤルのは好かんな! セレナぁぁぁぁーーこれをどう受け止める! 『シャイニングゴッドパーンチ』」


いきなり酷いよ。


これ、前に僕の体に穴をあけたやつじゃん。


真面に喰らったら……また死んじゃうからね。


だったら……


「これが勇者のみに使える奥義の更に先にある奥義ぃぃぃぃーー! 光の翼インフィニティーーーっ」


ゼクトお兄ちゃんから教わった奥義『光の翼』更にそれを二つ同時に仕掛ける『光の翼ダブル』だけど……僕って半神だからそれ以上ができたんだよね。


無尽蔵に……


兎も角、数えきれない位の多くの『光の翼』を放つ…….それがインフィニティ。


しかも打ち出す力は虫さんの力をプラス出来る。


魔力は神の力を上乗せ……これならきっといけるよ。


無数の鳥が剣先から放たれる。


しかも、その鳥の姿は、最早不死鳥に見える。


恐らくこの一羽だけでも魔族の幹部クラスが消滅する。


そんな威力の不死鳥がこれでもかと打ち出される。


その技の神々しさに会場の者は目を奪われていく……


『あれが、勇者のみが使える光の翼……なんて美しいんだ』


『ちがうわ……あれはその進化系……究極奥義の進化系が見られるなんて……もう死んでも構わないわ』


『ああっ神々の戦いとは此処まで美しいのか』


感動し、瞬きすらやめて食いるように見る者。


『ねぇ妲己、あれ私達防げますか?』


『カーミラよ、無理じゃ……あれは神の光を織り交ぜた技じゃ……あんな物喰らったらわらわ処か邪神でも消え去るよ』


『私の婚約者は……もうなんて言って良いのやら出鱈目ですわね』


『神とはそういう物じゃょ』


その威力に畏怖する者。


『あはははっ あれが神の戦い、少しは出来るなんておこがましいですね。 ああっ、神の戦いとはあんなに美しいのですね。このアリエスが生涯を捧げるのにふさわしいお方ですわ』


『ああっ、あそこ迄強いなんて、ルルはルルは心からお慕い申し上げます』


軍神の通常の奥義とセレナが編み出した勇者の奥義を超える奥義が激突する。


「ウオォォォォォォ――――ッ!」


「ハアッ、ハァッハァァァァァァ――!」


威力に勝るアークスの『シャイニングゴッドパンチ』により次々と光の不死鳥は撃ち落されていく。


だが、セレナは攻撃を止めない。


撃ち落されていく数より多くの不死鳥が現れアークスに襲い掛かる。


「ヤバいぞ! セレナ……流石にもう捌けないぞ! 俺は受ける事も避ける事も出来る……だが、俺がそれをしたら、後ろの観客が死ぬぞ! もう止めてくれ!」


「ああっ、そうだね! 止めないと……うん、止めたよ!」


だけど、このままじゃアークスが持たないかも……


アークスも律儀だよね。


もっと力を解放しても良いのに。


「はぁはぁ……駄目だ……」


「アークス、少しだけ耐えて……竜化ぁぁぁぁーー」


僕はアークスの傍に大きな竜となり並び、残りの光の翼を受けた。


「痛い……」


うん、凄く痛い......


「うわっはははっ! 痛いで済むからセレナは凄いな」


「ふぅ~ 凄く痛いんだよ! 全くもう…… パーフェクトヒール……これでいいや」


「まぁ模擬戦だし、この辺りでお開きで良いんじゃないか?」


「そうだね、こんなもんで終わりで良いよね? と言う訳でこれではいおしまい!」


「セーレーナーくーん! 沢山の人を巻き込んで何をしているのかな? リムチと話していたんだけどね……どう考えても私に依頼する内容じゃ無かったのよ……なんでかなぁ~」


嘘だよね?


恐い形相で仁王立ちのメルが......何で居るの。


「メル……あの、その……これは……」


「別に良いじゃねーか? ただの模擬戦だぜ!」


「アークス……かってマモンは人類最大の脅威だったのよ? それより強い軍神との戦い……それの何処が模擬戦なのかな? 私に教えてくれる?」


僕はエドガーの方を見た。


エドガーは任せてくれと言わんばかりに笑顔でこちらにウインクをしてきた。


そうだよね?


ちゃんとメルに怒られないようにしてくれるんだよね……


僕、信じているからね。


エドガーの後ろからローマーニ教皇が現れた。


「その件ならセレナ様を責めないであげて下さい……この教皇ロマーニが許可した事なのですから」


うん、そうだよね。


「嫌われるわよ……」


「一体誰に嫌われると言うのですか? この教皇ロマーニ誰に嫌われようと構いません! 私が許可したのですから、それで良いじゃないですか?」


「そう……女神イシュタス様と神竜セレスに嫌われても良いのね! 私はお二人にセレナくんのお世話をする様に頼まれたのよ? 仕方ないなぁ~ この事はイシュタス様とセレスに言うわ……良いのね?」


「それは……セレナ様……ゴメンなさい、この度の事はお力になれません」


「ロマーニ―教皇、嘘だよね! ロマーニ……まさか嘘だよね」


そんな……


「うっ……大丈夫ですよセレナ様、このロマーニにお任せを! エドガー……信者の皆さん……さぁ」


嘘だよね……ロマーニ教皇、エドガー……そこ迄しなくて良いから。


ロマーニ教皇にエドガー、ルル王女……この場に居る全員がメルの前で土下座をし始めた。


「そこ迄しなくて良いよ! メル僕が悪かったんだっ! 皆、頭をあげてメル……ごめんなさい」


「セレナ様が謝らないで下さい! 私どもの不始末で神の息子の貴方に頭を下げさせるなど、このロマーニ末代までの恥……メル様、お許し下さい! もしこれで足りないなら私の命……」


「やめてよ……これじゃ私が悪人みたいじゃない! セレスくん、アークス! 反省文書いて終わりで良いからね……もう、皆も頭をあげて……早く……」


「メルありがとう」


「今回は迷惑をかけて済まぬな」


「良いのよ……ハァ~」


メルの眉が吊り上がっている。


あとで、謝りにいかないとまずいよね。


◆◆◆


学園長室。


メルは溜息をついていた。


神の息子って本当に大変だなぁ~


何をするのも大事になって、しかも周りが味方するからもうどうしようも無いわね。


大体、大賢者って言っても、私は『人間』なのよ……


ああっ、また胃がシクシクしてきた。


私は健康な筈なのにセレナくんが絡むとこれなのよ。


トントントン


「どうぞ~セレナくん? まさか、あの後も問題起こしたの? 」


「メル……違うよ! メルに黙ってこんな事してごめんなさい!」


「そう……悪い事したとは思っているのね?」


悪気が本当に無いから逆に質が悪いのよね。


「うん……もういいわ! 今度から気をつけなさいね」


「うん……ごめんなさい」


セレナくんはズルいなぁ。


セレスの子で、静子さんの血が入っているからか、セレスとゼクトの良い所した顔立ちなのよね。


私が愛した男二人の面影があるんだもん。


散々セレスに迷惑かけたから……強くも言えないわ。


セレナくんに謝られると、セレスに謝らせているみたいでどうしても強くいえなくなるの。


本当にズルい。


「もういいわよ……次から気をつけなさいね」


「うん……それでね! お詫びも兼ねて、こんなネックレス作ったんだ! 本当にごめんね……あと、これ胃薬……今度から僕気を付けるから」


「セレナくん……本当に良いから」


「ごめんね」


最後にセレナくんは謝り部屋を出て行った。


このネックレス……昔、セレスが私にくれた物に似ているわね。


親子って似る物なのね……


この胃薬……うん、セレナくんは優しい……


『随分嬉しそうですね』


「げっ、息コン女神!」


『息コン!? 女神の私に……今回は迷惑をかけたから詫びようと思ったのですが……息コン!?  それじゃ神罰ですね……今日一日のうち貴方は10回箪笥の角に足の親指をぶつけます......そう呪いをかけました……ハァ~此処まで降りてきて損しました』


「待って下さい! イシュタス様……そんな、あっ痛たたたたたっ! 酷い」


本当に箪笥の角に足の親指をぶつけたわ。


あの息コン女神……こんな事する暇があるならちゃんとセレナくんの教育しなさいよ……





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