第131話 セレナ アークスの交流会 ②


と言う訳で近くの湖に来ました。


あらかじめ作ってきた釣り竿。


仕掛けも糸もセッティング済みだ。


後はエサをつけてただ糸を垂らすだけだ。


「アークス、はい」


僕はアークスに竿を渡した。


「どうすれば良いんだ?」


「この虫をつけて、そのまま水に投げ入れて魚が釣れるのを待てばいいんだよ」


「そうか……」


此処からが面倒くさいんだよね。


地道に魚が釣れるまで待たないとならないんだ......


「セレナ……なかなか魚が釣れないな」


「そうだね、魚釣りは精神修養だってリダお姉ちゃんが言っていたんだ……釣れなくても糸を垂らして辛抱強く待つんだ……そうやって待っていれば……ほらね! 釣れた」


30cm位の魚が釣れた。


魚の種類は、う~んマスみたいな感じだ。


「セレナ、俺のも掛かったみたいだぞ」


「そお~っとゆっくりと力に逆らわずに手前に持ってくるんだよ……うまい、うまい……」


「こうか?」


「その調子……そこで持ち上げて……ほら釣れた」


「ああっ、釣れたな」


気のせいかアークスも楽しそうだ。


結局、そのまま釣りを続けて僕が5匹、アークスが4匹魚を釣った。


◆◆◆


「それじゃ、焼き魚にしようか?」


「セレナ……待て! 焼き魚位なら俺でも出来るぞ!」


「え~嘘だぁ~」


どう見ても筋肉達磨だし、不器用そうなんだけど。


「セレナ、お前は俺を舐め過ぎだ……俺は一人で行動していたんだぞ! 焼き魚位出来る!」


「へぇ~そうなんだ! それならやってみて」


アークスは魚を元から焚いていた焚火にそのまま突っ込んだ。


「あ~あっ……まるでマリアお姉ちゃんみたいだ! それじゃ駄目だよ!」


「焼き魚だろう? 焼いて食えば良いだけじゃないか?」


「それじゃ、僕が調理するから見てて。まず、ナイフの背でガリガリと鱗を取っていきます。 そして腹を裂いて腸をとってタップリと塩を振ります。このままで20分」


「なんで、そんなに時間を置くんだ?」


「こうすると塩が染み込んで美味しいんだよ」


「そうなのか?」


此処まで、全部の魚に塩を振った。


「まぁね」


◆◆◆


「充分待ったから、此処から串打ちをして十字に切れ目を入れて、ヒレと頭にさら化粧塩を振ってから、焚火の周りに刺していく……後は焼けるのを待つだけだよ!」


「随分と手間暇かけるんだな」


「その方が美味しいしね! 美味しい物を作れば食べる人は喜ぶでしょう? その笑顔が僕は嬉しいんだ」


「成程な! 何となくセレナがモテるのが解る気がした……」


「どうして? かな?」


「なんとなくだ……」


「へぇ~! あっ、アークスこの辺り焼けたよ……はい」


「ありがとうよ! おっ! これは確かに美味いな……全然違う!」


「そうでしょう? 何でも一手間かけると美味しくなるんだよね!」


「確かにそうだなっ! だが、面倒くさく無いな?」


「アークス……人を好きになるとね、その人の為ならその面倒くさい事をしてあげたくなるんだよっ! 子供だから良く解らないけどね。多分それが恋とか愛なのかも知れないね」


お嫁さんや恋人だと、笑顔が見たくて苦にならないんだよね。


どうしてかは美味く伝えられないけど……


「そういう物なのか?」


「多分ね。それでアークスは誰か好きな人は居ないの?」


「俺か? 居ないな! 今迄の俺は自他共に認める戦闘狂だからな」


アークスは何を言っているんだろう。


「それなら、一緒に戦闘を楽しめる相手を探せば良いんじゃないかな?」


「そんな奴いねーだろうがっ! 戦闘は男の仕事だ!」


アークスは甘いな。


「いや違うよ! 僕の妻にヘラさんと言う女神が居るんだけど、その娘のアテナさんはアークスと同じ軍神らしいよ? それに僕の妻のうちの二人はアークスには勿論勝てないけど、恐らくマモンの時に戦ったなら勝てたかも知れない……その位の実力はあるよ?」


「本当なのか?」


「うん……それにアークスは勘違いしているけど、僕の世界にもセレスお父さんや僕より強い人はいるからね」


「いや……あそこ迄セレナに負けた今、よく考えたら『強さ』に拘る必要はないな」


「そう? それじゃアークスはどんな娘が好みなのかな? 年上? 年下? あっ、これも焼けているから……はい、僕はこっちを食べるから」


「俺の好みか……俺はがたいが良いから背が高くてがっしりした美人が好みかな」


ミサキお母さんみたいなタイプかな。


「探せば結構居るんじゃないかな? 周りには居ないの?」


「ああっ、俺のいる神界に軍神は俺しか居ないから、周りに居ないな」


「神に限らず、人間でも良いんじゃない? はい、これも焼けているよ」


「ありがとうよ……ハフハフっ人間か? 確かに未熟だが人間の方が俺の好みが居そうだな」


「それじゃ、次はアークスの恋人探しだね」


「セレナ……つきあってくれるのか?」


「暇だから良いよ……折角だからゼクトお兄ちゃんにも相談してみようかな?」


「ゼクトって……ああっ勇者か?」


「そう……俺はモテるって言っていたからアドバイスをくれるかもね」


「そうか、頼んだ」


「頼まれたよ」


アークスだって軍神。


すぐに相手が見つかるよね。


うん、大丈夫......



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