第124話 二者二様


セレスお父さんかぁ~


メルにそう言われたど、僕暫く天界に帰れないんだよな。


どうしよう?


こういう困った時は……バウワーおじちゃんだよね。


◆◆◆


「バウワーおじちゃん」


「またセレナか……しかしよく冥界に自由に入ってこられるものだ。どうかしたのか?」


「折角、冥界で修行させて貰ったのに、結局僕負けちゃった。メルと話したら、セレスお父さんに鍛えて貰えっていうんだ。だけど、僕修行中だから、天界に帰れないし、何か良い方法ないかなって」


「まぁ、見ていたから知っておるよ。負けるのも良い経験だ。今すぐ強くなる必要も無い」


「……」


「まぁ、気持は解るが、修行期間の間に天界に帰るのも良くないな……そうじゃ、修行相手を変えたらどうじゃ」


「修行相手を変える?」


一体誰を相手に練習すればいいのかな。


「セレナはアークスに勝ちたいんだろう? それならアークスと戦えば良いんじゃないか?」


どう言う事かな?


「どう言う事?」


「よいか、セレナ、もし強くなりたいならお互いに切磋琢磨しあうライバルが必要だ……儂も見させて貰っていたが、あの戦いは天秤の傾きによってはセレナが勝っていても可笑しくは無かった」


「そうかな」


「そうじゃ……負けてもよいじゃないか。自分が納得するまでアークスと戦えば良い! 勝つまで、納得がいくまでやりあえば良い! 戦い続けた先にきっと答えがあるはずじゃ」


「そういうもんなのかな?」


「ただ、負けるだけじゃ意味はない。負けたらなぜ負けたか考え次はどうしたら勝てるか考えて行動する。そうすればいつかは勝てる様になる。まぁ、それでも勝つことが出来なかったら」


出来なかったらどうするんだろう。


「出来なかったら?」


「まぁ、諦めるしかない……取り敢えず今は、死に物狂いでアークスと戦ってみるのが良いんじゃないか?」


確かにそうかも知れない。


なんだ、簡単じゃないか。


アークスとがむしゃらに戦えば良かったんだ。


今度は僕がアークスに戦いを挑もう。


うん……それが良いのかも知れない。


◆◆◆


強くなると言う事は、孤独になるそう言う事なのか?


俺がマモンであった時もそうだった。


強いという事は何でも出来るし、手に入る。


戦う事が好きな俺は戦って戦って戦い抜いていたら……俺の右に出る者は居なくなった。


仲間の四天王は俺を恐れ、魔王様ですら俺には敬意を払った。


虚しい……どいつもこいつも俺を満足させない。


俺がマモンの時、唯一俺を満足させた男。


それがセレスだった。

彼奴と俺の戦いは一勝一敗。


マモンである俺は彼奴に殺され……そしてアークスとして俺は彼奴に勝った。


それが俺にとって唯一の楽しい思い出だ。


だが、更に強くなった俺にはきっとセレスですらもう真面に戦えないだろう。


そうおもった時だ……異世界の女神ヘラから、セレナの存在を聞いた。


俺の唯一の敗北の相手セレスの息子。


セレスですら今の俺には勝てぬ。


そう思っていたが僅かな期待に賭け……戦った。


思った以上の収穫だ。


彼奴は強かった。


流石は俺の好敵手セレスの息子だ。


彼奴ならきっと『本当の意味で俺を満足させてくれるかも知れない』な。






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