第120話 基礎を学び気がついた。


アークスと戦ってから僕は悔しさという物を知った気がする。


『強い』なんてただの自惚れだったな。


「セレナくん」


「はい」


「魔法の発動に必要な事は?」


「魔法なんて、ただ思うだけで発動……」


「いえ、違います! 魔力と呪文、あとはイメージです」


え~とそうなのかな?


「だけど、先生……僕は、ほらこんな風に思うだけで発動するんですが」


指の上に小さな炎を出してみた。


「それは無詠唱ですね……流石は教皇様の血筋です! それは、生まれながらに魔法のイメージがしっかりある者が詠唱や過程を省略できるのです。ですが、しっかりとした呪文やイメージをした物にはおよばないのですよ」


「そうなのですか……」


本当にそうなのかな?


「はい、ミスターセレナも一度しっかりイメージして詠唱をしてみると良いかも知れませんね」


「はい」


キーンコーンカンコーン


「はい、今日の授業は此処までです。では皆さん……」


詠唱とイメージか……


僕でもそうなのかな?


試してみようかな?


◆◆◆


どんなイメージや詠唱をすれば良いのか……


一応、図書室から『ゴブリンでも解る魔法大全』という本を借りてきた。


良く考えたら僕は、こう言う勉強とかした事無かった。


これで少しでも魔法の威力が上がるなら恩の字だね。


火は危ないし、土もまずそうな気がする。


そう考えたら、風か水が良いかな。


水でもやってみようかな……


「え~と、水よ、わが敵を切り刻めウオーターカッター」


あれれ……どうした?


水で出来た刃が随分と大きくなった気がする。


その出来た刃をそのまま空の方に放ってみた。


うん……これ凄いね。


多分、普段の倍近い威力が出ている気がする。


だけど、呪文とイメージなら……更にイメージを固めて……オリジナルの呪文を唱えたらどうなるのかな?


水……水……強大な水竜をイメージして……強大な水竜。


そうバウワーおじさんを水竜にしたような大きな、大きな竜をイメージ。


そして、その水竜をイメージした刃に変える。


「水竜の刃よ! 僕の前の立ち塞がる敵を斬り刻め! ハイドラブレードーーォ!」


凄い……凄いよこれ!


だって目の前に水で出来た刃を纏った水竜が出来上がっていた。


それをそのまま空に向かって放った。


ウオーターカッターとは比べ物にならない、強大な水で出来た竜が何処までも高く空に舞い上がっていく。


それから暫くすると一瞬、光が揺れたような気がした。


空を見上げると……嘘だ……


太陽が少し揺らいでいた。


『基本て、本当に大切なんだね、沢山、本当に僕には沢山の学ぶことがあったんだ』


詠唱をして魔法を使ってみて解ったんだ。



女神の子の僕にはこの世界は凄く優しい。


『クスクス……ようやくお話しが出来たね』


『半神なのに……今迄気がつかなかったなんてね』


『鈍感なんだから』


こんなにも近くに沢山の仲間が居たのに気がつかなったなんて。



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