第115話 セレナVSアークス⑤ 心地よい痛み


アークスの体が光り輝き、アークスの手には光り輝く剣が握られ、その身には黄金に輝く鎧を纏っている。


あの剣。


悔しいけど僕が作れる剣を遥かに超えている。


あの鎧も僕じゃ作れない。


「神剣よ再び剣に……」


「そらよーーっ」


何とか、鎌を剣の状態に戻して受けたが……


「嘘だろう……僕の剣がぁぁぁぁーー」


「俺は此処より上位の世界の軍神だ! 同じ神剣でも出来が違う! 甘いわぁぁぁぁーー」


僕の剣はあっさりと折れてしまった。


だが、こんな危機的な状況なのに、僕の心は高揚していく。


『楽しい』


そう思えるようになってきた。


『僕に出来ない事は無い』


嘘だ……目の前の敵に苦戦していて、何回も殺され負けた。


『強い』


違う、目の前の敵に敵わない。

こんな悔しい思いは初めてだ。


だけど……それでも……僕は『楽しい』


負けるのも工夫をするのも楽しい。


「ドラゴンインセクトウィングーーッ!」


ただでさえ素早く飛べる竜の羽に昆虫の羽を合わせた。


最高速飛行形態。


「お前逃げる気か!」


「逃げない! 今迄の僕の力じゃ勝てないなら、更にその上の力で戦うだけだよ? 行くよーー」


空に舞い上がり、スピードをつけて猛進する。


スピードタイミングを整え、アークに突進する。


いわゆる、突きだ。


「ほう! 高速飛行からの突きか考えた物だな……良いぜ受けてやる」


竜の腕を先に強力な蜂特有の針をイメージして変化させ殴りかかる。


パンチじゃない。


針で突き刺すつもりでいく。


竜の力も加わってこれなら。


ドガァァァァ――ン


「そんな、まさか……」


「そんな物は効かないな」


ぶち当たった僕が弾け飛ばされ、僕の針をイメージした腕は折れていた。


「痛ぁぁぁぁぁーー」


アークスの鎧の前に僕の腕は折れて千切れた。


だが、僕は竜。


だから腕なんて一瞬で生やせる。


「お前も戦う事の楽しさが解かってきたようだな!」


「まっ、そんな事は……」


あるかも知れない。


「お前、腕を痛がっている割に顔は笑っているぜ」


うん、凄く楽しい。


「そうだね、だったらこれはどうだ!」


僕は自分の体にグリーンアントの力を宿らせた。


竜の力も強いがグリーンアントという蟻の一種は自分の重さの35倍の重さの物を持ち上げる。


それには元からの竜の力が加わり無双状態になる。


「ほう、それは……どういう事だ」


「この形態ならアークスとだって殴り……」


「ならば、この剣は要らぬな! 男なら拳で語りあおうぜ」


そう言うとアークスは剣を捨て殴りかかってきた。


お互いのパンチが頬にぶつかる。


その瞬間はじけ飛んだのは僕だ。


「これでもまだ届いてないのか……」


「ぐっ、久しぶりだぜ! 口の中を切ったのは……この血の味もまた心地よい……これで終わりじゃねーよな!」


「終わらないし! 終われない!」


大きく振りかぶり殴った。


アークはよけもせずそれを頬で受けた。


「ふん、なかなか、良い拳だ! 今度は俺の番だ!」


避けちゃいけない気がした。


グチャッバキ


頬に当たった拳は竜の僕の強靭な牙を折った。


すぐに生えるから良いけど地味に痛い。


「今度は、僕の番だね、そーれっ」


なんでか解らないけど、この痛みが妙に心地よく感じるようになった。






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