第109話 セレナVSアークス ① 恐怖


軍神アークスがこっちに近づいてきているのが解る。


ここでやったら、周りに迷惑が掛かるよね。


セレスお父さんに聞いた話だとバトル狂で周りが見えなくなるそうだから……うん、他にいこう。


「ドラゴンウィング」


僕は竜の羽を出し空へ飛び立った。


「「「セレナーー」」」


「セレナ様?」


「皆、大丈夫だって! ちょっと行って来る!」


出来るだけ遠くへ......


この辺りでよいだろう。魔族領の近くの島まできた。


荒れ地で周りに生命反応はない。


ここでなら存分に戦える。


来たな……


「来たな! マモン!」


「マモン……がははははっ、懐かしいな! 今の俺はマモンじゃない! 軍神アークスだ!」


周りから『強い』って聞いていたけど……余り恐怖を感じない。


どうしてだろう?


「軍神って強いの?」


「がはははははっ、戦ってみればわかる! どれ、ハンデだ! 先に一発受けてやる! 思いっきり殴ってみろ!」


「いいの?」


「ああっ、何処からでも来いーーっ」


地脈から力を吸いながら、この世界、その物の力を拳に集める。


「なんだ、それは……」


僕は女神の息子でこの世界の管理をしているのはイシュタスママ。


だから、この世界の力を借りる。


そして……腕だけを人間の体から竜の強靭な腕へ変えた。


竜の力を振るい……この世界の力を借りる。


「いくよーーっ! スーパーゴッドドラゴンパーーンチ!」


大人って辛いよね。


約束があるからか、実力があるからか……しっかり受けてくれている。


ドガがガガガガガガガッガガガガガッ!


かなり遠くまですっ飛んでいき、山に激突していた。


だが、すぐに起き上がり此方へ飛んできた。


「ハァハァ、なかなかヤルじゃないか? 良いパンチだ!」


「これで無傷なんだ……凄いね、アークス」


「これでも軍神......」


「なっ……」


一瞬で後ろに回り込まれ、裏拳が僕を襲う。


避けられない。


「だからなーーっ!」


「うわぁぁぁぁーーっ」


今度は僕がふっ飛ばされた。


「ドラゴーーン」


このまま直撃を受けたら『痛い』だから、僕はすぐさま竜の姿に変った。


「ほう、竜化したか?」


「流石、セレスお父さんが強いって言うだけあるね! だけど、この姿になったからは……」


「竜になったからってなんだ! 俺には関係ない!」


「ならば、この爪で引き裂いてあげるよ!」


「無駄だ! 軍神の俺にそんな物は効かない……なっ」


僕の爪を避けたアークスは石に躓きそのまま盛大に転んだ。


「爪はよけられたけど? 転んで怪我したら意味無いじゃん?」


「クソッ、俺とした事が足をとられるなんて……」


「ただ、足をとられたんじゃないよ? 僕のせいで転んだんだ」


「何をいって……」


「ドラゴンブレスーーッ」


岩をも溶かす強力なドラゴンブレスを放った。


「……これは少し熱かったぞ!」


まさか、ドラゴンブレスを浴びながら平然と歩いてくるなんて……


「確かに強いのかも知れぬな……だが、若い……若すぎる」


ヤバい。


頭を掴まれた。


「離せーーっ」


ぐちゃっ…..


僕の頭が掴まれ潰された。


「これで終わりだ」


意識が薄れてきた。


僕……死んじゃうのかな…….


『パーフェクトヒール』


まだ、終わらないよ。


僕は無詠唱でパーフェクトヒールを唱えた。


「まだ、死なないよ! よくもやってくれたなーーっ」


僕はすぐ傍にいた。アークスの腕に噛みついた。


「はははっ、お前の親セレスに指を食い千切られた。だがな、それはマモンの時だ。今の俺には……なっ」


「どやごんブレフ」


アークスの腕に噛みつきながらドラゴンブレスを吐いた。


自分の舌や歯が熱を持ち……熱い。


「熱いな。離せこのガキがーーっ」


ドガドガドガ。


アークスが僕の頭を容赦なく殴る。


駄目だ。


このまま殴られ続けたら僕は気絶するかも知れない。


噛むのをやめ距離をとった。


「今のは少し熱かったぞ! 今度は此方から行くぞ」


ドラゴンブレスでも……『熱かった』それだけ?


体が震える。


もしかして……怖がっているのか?


竜と女神を親に持つ僕が……











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