第110話 セレナVSアークス② 何かが起こる


「そら、そらそらーーっ! それで終わりかーーっ!」


ただ、殴られているだけで痛みが走る。


高位の竜である僕は、こんな痛みなんて感じた事は無かったな。


殴られると痛いんだね。


『痛い』


「ハハハッ、殴られると……痛いんだ……」


「話す暇があるなら、かかって来い!」


そうだね……うん……


僕は後ろに下がり反撃を考える。


アークスは遊んでいるのだろう……


そうじゃ無ければ追撃がくるはずだ。


クソッ……


「クリエイト、ソードーー! 行くよーーっこれが勇者のみが使える奥義――っ! 光の翼だぁぁぁぁぁーー」


剣を魔法で作った。


ゼクトお兄さんから教わった勇者の奥義。


僕は初めて、全部の力を注ぎこみ、この技を放った。


大きな竜の体で、竜の力をこめた、恐らくゼクトお兄さんの技を遥かに凌ぐはずだ。


ズガガガガガガガガッドガッ


「がはははっ確かに威力はあるな……だが、それは昔に食らった事がある! そんな物は通用しない! がっかりだ。ただ強いだけの子供。それだけか……俺を楽しませろ……」


「ならば、斬鉄!」


がガガガッ


「マモンの時ですら、ミスリルよりこの硬い体だ。軍神になった今、オリハルコンですら効かぬわ」


これはどうすれば良いんだ。


何をして良いか解らない。


僕は学ばなかった。


強さにかまけて何も学ばなかった。


だから、僕は勝てない。


誰もが出来ない事……


僕にしか出来ない事……


それは何だろう。


僕は、竜……そして神……


僕にしか出来ない事……駄目だ! 思いつかない。


「戦いのときに考え事なんてするな! 馬鹿者がぁぁぁぁーー」


ドガッドガッドガッ


大きな竜の体の僕が吹き飛ばされる。


「うわぁぁぁぁーー」


「必殺技なんかに溺れる者は弱者だ……真に強い者には必要が無いのだ!」


「うぐっ、ハァハァ。僕は……僕は……」


ドガッ


「お前の親父は凄かったぞ! 命を懸けて戦いを挑んできた……いつも知恵を絞り全力で挑んできた! だが、お前は……なんだ! 純粋な戦う心が無い! 今まで戦った者の中で一番心が弱い!」


「僕は……」


「もう良い。ただのガキ……俺が戦う価値もない。がっかりだ。死ね!」


アークスが僕の頭を掴み引っ張った。


ブチッ……


「うわぁぁぁぁぁぁーー」


「死ぬがよい」


ブチブチブチッ


「ぎゃぁぁぁぁぁーーっ」


アークスが僕の首を掴かみ、そのまま引き千切るように引っ張った。


首と体の裂け目が広がっていく。


多分、死ぬんだ。


何も考えられない。


そうか……僕は努力しなかった。


生まれながら強いから……それを怠った。


だから、死ぬのか……


「いや、まだだ! パーフェクトヒ……ぎゃぁぁぁぁーー」


「そんな呪文を唱える間も無く破壊してくれる」


繋がるより早く、僕の頭が引き千切られて行く。


完全に頭と胴体が離れた気がする。


今の僕はもう……終わりだ。


「……」


「死んだか! つまらない奴だ」


「……」


「ハァ~とんだ勘違い…つまらぬ……なっ、なぜ、生きている」


まだだ。


◆◆◆


ここからだ。


ここからまた始めれば良い。


「アークス! 勝負だ! マンティスアックス!」


僕は両方の腕をカマキリに似た腕に変えた。


武器を精製するのではなく、自分の肉体を変える。


僕の体は元は竜。


人の体になるのではなく、強靭な竜の体を人間の大きさに縮小して強化してカマキリの力を使う。


これだ……


ズバッ


「なっ、俺の体を傷つけるだと!」


「少しは満足させる事はできるかもね」


「お前、なにをした! さっきまでとは別人じゃないか?」


「それじゃ今度は僕の番だね……その体切り刻んであげるよ…そらそらそらーーっ!」


これじゃ駄目か。


体の表面は斬れるが肉は斬れない……


「がっははははは……そんな物じゃ俺は斬れぬ」


「これでも届かないのか……だが、まだだ! 斬って、斬って、斬りまくる……ハァハァ、ハァハァ」


斬って斬って斬りまくる。


「わはははっ、そんな物じゃ俺は斬れぬ斬れぬ斬れぬ斬れぬーーーっ」


これでも届かないのか……ならば……


「ワスプソード!」


今度はスズメバチの針に見立てた剣に僕の腕を変えた。


「なんだ、その腕は」


「鎌が無理なら剣……そう思っただけだよ!」


「ぐわっはははは! 剣に変えても無駄だ! 無駄無駄無駄……うっぎゃぁぁぁぁーー」


この腕の剣のモチーフはこの世界でも凶暴なスズメバチの針。


当然、毒がある。


「ようやく、初めて痛がりましたね……此処から」


「さっきまでとは別人のような動き! 馬鹿にして悪かった! 貴様を戦士と認め……本気で殺してやろう!」


「えっ……」


アークスが大きく拳を振り上げ……ただ落とした。


バガッバギッ


それだけで、僕の頭は潰された。


「ぎゃぁぁぁぁぁーー……」


物凄い痛みが走り僕は意識を手放した。


「これで終わりだ……お前の親父には及ばぬが久々に堪能した。ではさらばだ」


「……」


まだだ、まだ終われない。


◆◆◆


アークスが僕に背を向けている。


「必殺! 光の翼ぁぁぁぁーークロスーーッ」


両手に剣を持ち、二つの光の翼を放つ。


ドガガガガガガガガッ


「なっ、お前……また顔つきが変わった」


「アークス、ここからが勝負だ」


三度、僕はアークスに戦いを挑んだ


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