第107話 軍神アークスSIDE 再び
つまらん、ここが本当に上位世界なのか?
魔族最強と謳われた俺はセレスに殺されたあと、その魂が浄化され軍神になった。
あの世界はイシュタスの物だから、そこから弾かれ別世界。
上位世界の軍神だ。
セレスとの激闘。
あれは凄く楽しかった。
1度は俺が殺され2度目は彼奴を俺が殺した。
強敵と書いて「とも」と呼ぶ。
そう呼べる奴はセレスしか居なかった。
上位世界で軍神になった俺は、思う存分戦った。
最初ここで軍神になった時……俺は喚起した。
この世界は一神教ではない。
沢山の神がいる。
そして敵も神だった。
魔物も前の世界と違って強かった。
戦いに次ぐ戦いの日々。
思う存分、強者の魔物を狩り。
強い魔族を狩り……魔王と呼ばれる存在も狩った。
確かに力はあった。
だが、手ごわいと感じる事はなかった。
詰まらない。
なにが詰まらないか解らないが詰まらん。
この世界で最早俺に勝てる存在はいなくなった。
だが、この世界には続きがあった。
『神』がいる。
この世界は多神教。
俺は軍神になったとはいえ神としては新参者だ。
ならば、この神々の中で一番弱い筈だ。
剣神のゴードンが強いと聞き戦いを挑んだ。
『ほう、剣神の俺と戦いたいと言うのか? 向こう見ずだが気に入った好きなだけ相手してやろう!』
俺より大きな体で巨大な剣を持つ大男。
流石は神。
強かった。
『がはははっ、負けて当たり前だ! 新参者の神に俺が負けるわけがない』
俺の胴体が首から離れていた。
神だから死ぬことはない。
俺は歓喜した。
ここには俺の歯が立たない奴がいる。
更に後日戦いを挑んだ。
『懲りない奴め! だが俺は気にいった』
そう言い俺を剣神ゴードンはボコった。
この時の俺は両手、両足を切断され芋虫みたいだった。
それから戦いを挑み続けると……
『しつこいぞ! もういい加減にしろ!』
そう言い胴体を切断された。
だが、俺はまだ諦めなかった。
『ハァハァ、流石にしつこすぎるぞ、諦めろ』
何十回か解らない。
とうとう、実力が均衡し始めた。
そして……
『もう許してくれ……こんな毎日戦いの日々なんて嫌だ!』
『いや、俺の相手が出来るのはお前しかおらんのだ』
そう言って剣神ゴードンに殴りかかった。
そして気がつくと。
『こんな殺伐した生活は嫌だ。俺は旅に出る……探さないでくれ』
そう手紙を残し剣神ゴードンは消えてしまった。
仕方なく俺は矛先を変えて他に戦う相手を探した。
『ふっ、お前が新しい軍神か? この戦の女神アルテが貴様に相応しい戦場へ送ってやろう』
ありがたい。
女神アルテが戦争に参加させてくれるそうだ。
そう思って俺は戦に参加して戦っていたのだが……
相手は神だと言うから手加減なしで戦っていたら……
ものの半年で戦は終わってしまった。
相手側の言い分では
『頭のおかしい奴は相手出来ない……こちらの負けで良いから……勘弁して下さい』
仮にも神なのにこの体たらく。
だから、俺は戦の女神アルテに戦いを挑んだ。
その力は凄まじく、俺の頭は一瞬で爆ぜた。
『軍神の癖に 戦の女神に挑むとは愚か者め! 千年早いわ。あははははっ』
そう言ったので修行をしながら毎日戦いを挑んでいたら……
『もう嫌なの……私女神なのに目を潰されたり、顔が陥没したり、自慢の胸やお尻が引きちぎられるの……なんであんたは、そんな戦いたがるの! もう嫌ぁぁぁぁーーえぐっヒクッ』
これじゃただの女だ。
もう戦う気が失せた。
この女より強いのは『破壊神』らしいのだが……
『嫌だね! お前とは関わりたくない』
そう言って逃げられた。
もうこれしかない。
そう思い……そいつの恋人を人質にして無理やり戦ったら……
簡単にボコれてしまった。
子供のように情けなく恋人の前で泣きじゃくる破壊神を見たら。
戦う気が失せた。
こいつ等は駄目だ。
負けたら、実力をつけやり返せば良い。
神として生まれながらの強者だったからか、それが無い。
今ではこの神界ですら、俺と目を合わせる存在はいない。
セレス……俺が殺してしまった強敵(とも)
酒におぼれ、美女を抱いても俺の心には何も感動が無い。
詰まらない……
◆◆◆
どこぞの女神ヘラから手紙が来た。
どうせ、討伐かなにかか……つまらない話だろう。
そう思って読んだ。
嘘だろう……セレスが生きていきたのか。
そしてセレスには息子がいて、強い子に育っているが敗北を知らない。
だから、敗北を教えて欲しい。
そういう依頼だった。
「ふっはははははははっ」
笑いが止まらない! あのセレスの子と戦えるのか!
セレスと戦った、あの恐怖と快感がまた味わえるかもしれない。
軍神アークスの名の元に『敗北』を叩き込んでやろう。
俺はすぐに、懐かしいマモンとして生きた世界に旅立った。
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