第106話 ヘラSIDE 必要な試練
私、ヘラは妻であり女神でもありますから、未来の夫セレナの様子を遠見の鏡で見ていました。
神としては凄いのですが、全く常識を知らないし、覚えようとしていない気がします。
神としてのタイプは『全知全能』なんでも一人で出来るタイプ。
これが一番困ります。
注意しようがなく、誰しもに愛されるタイプ。
なんでも出来るのですから、誰もどうしようもない存在。
私の元夫のゼウスがそうだったように、このタイプに失敗を認めさせるのは凄く困難なのです。
人間の三人には荷が重い。
そう思って、カーミラと妲己に入れ替えたのですが、思った程改善されなかったような気がします。
神の子ですから、面白おかしく自分達が過ごすのは問題はありません。
ですが、その膨大な神の力を無造作に使うのは結構な問題です。
「お義母様、お義父様……貴方達は一体どういう教育をしているのですか?」
取り敢えず、女神であるイシュタス義母様と竜公であるセレスお義父様に聞いてみる事にしました。
「私は言ったのよ? 神の子を作るのは人間の子と違って大変だってね。だけど皆がどうしても子供が欲しいって言うからね。一人だけ皆で作る事にしたのよ」
「それがセレナ様ですね。それは知っていますが、今迄、どう言う教育をなさっていたのか知りたいのです。どう考えても、おかしすぎると思いますが」
「教育? そんな物神に必要なわけないじゃない? 神は世界の支配者なのよ! 人間なら親が死んだら一人で生きていかなくちゃならない。だけど、神は死なないのよ! 私もセレスも死なない存在! 未来永劫生きているわ! だから、未来永劫セレナは私の息子なのよ。気にする必要はないと思うけど? 他の世界の神は違うのですか?」
つい忘れていましたが、この世界は一神教。
この世界だけなら、他の神は介入してきません。
「私の世界では違います。神でも仕事をし節度をある程度守って生活しています。それでセレスお義父様もこれで良いと思っているのですか?」
「俺は……良くないと思っている。セレナには可哀そうな話だが、本当の意味の友達はいないと思う。神の子でなんでも出来るから横に並ぶ存在がいない。恋でも同じだ。神の子として生まれてきたから、それが嘘ではないだろうが、ドキドキしたときめきなんてきっと感じた事はないだろう。俺はセレナには、神の子だとしても、せめて数年はそういう人間みたいな楽しさを味わって欲しい。そう思っている」
「それなら、もう少し色々考えた方が良いかも知れません。このまま、挫折や敗北も知らないのも良くありませんよ」
「それは俺でも分かるけど。あのセレナに敗北感を味あわせる相手なんて、そうそういないと思う」
「私の世界から、アレスかヘラクレス、アトラス当たりに来て貰うのもありですが、それを余りするとハーデスが嫌な顔をしそうです。そこで考えたのですが、この神界を調べた所、近くの世界に手頃な方がいましたよ」
「そんな人いました?」
「近くにいるって、ああっ竜公の誰か?」
「竜公だと、手加減しそうだし甘やかしそうなので駄目ですね」
「それじゃ一体だれなんですか?」
「俺も思いつかないな」
この世界の近くの世界にいて、イシュタスお義母様もセレスお義父様も干渉できない人物。
「軍神アークス様です」
「「アークス……あっ!?マモン」」
「はい、物凄く強い存在が生まれたと話したら、すぐに会いに来て下さるそうです。きっとあの方なら、セレナ様にも挫折を教えてくださるはずです」
「確かにそうですが……やりすぎです」
「アークスなら確かにセレナじゃ敵わないと思うが、流石に心配だ」
「セレナ様は死なないのですから大丈夫です!」
私は婚約者でもありますが、母性を司る女神でもあるのです。
成長させる為の試練。
それを心を鬼にして与えます。
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