第103話 光の翼とエドガー
「ミスターセレナ、戻られましたか? 先程の錬金、素晴らしかったですね! 本物と違っていても、あの造形美、品質、貴方の魔法の凄さを物語っております…素晴らしい」
本物なのに…言っちゃ駄目なんだよね。
「ありがとうございます」
「それでですね…錬金が凄腕なのは解りましたが、ミスターセレナの今度は攻撃を見せて頂けませんか?」
「攻撃?」
「王立学園は文武両道を目指しております!なので攻撃魔法か攻撃技を見せてくれませんか?」
『流石に攻撃系は苦手な筈ですよね?』
『錬金が得意なら生産職の筈ですね、流石に攻撃は苦手な筈です』
『そうだよな~流石にあれだけの錬金が出来るんだ、魔法や攻撃の才能は無いよな』
『だけど…メル様の弟子…案外戦闘の才能もあるかも知れないよ』
なんだかなぁ~
だけど、手加減しないといけないんだよね。
「魔法剣とかでも大丈夫?」
「魔法剣? ああっ、剣に魔法をのせて使う技ですか? 大丈夫ですが…珍しいですね?」
「珍しいの?」
「あまり、見ませんが…話では聞いた事あります」
う~ん、あれ程、有名なのに…
斬鉄には、鉄の塊か剣が必要だし…
何も無しに出来そうなのは…
やっぱり、アレだよね!
「そう?」
「どんな物か見せて頂けますか?」
「それじゃ、行くよ~これが勇者のみが使える必殺技ぁぁぁ—光のツバサだぁぁぁぁぁーーーーー」
小さな鳥さんなら問題ないよね…
「「「「「「「「「「光のツバサぁぁぁーー」」」」」」」」」」
小鳥みたいな小さな光の鳥がセレナの剣から飛び出すように羽ばたき飛んだ。
『あれが光のツバサ…しょぼい』
『名前だけの偽物だよね』
『あれは無いわ』
『驚いて損した』
だが、小さくても『光の翼』
勇者しか使えないと言われた奥義。
ガラガラガラガラガッシャーーン。
8重の結界が粉々に壊し、あさっての方に飛んでいった。
「けけけ結界がこわれた…それに、その技は…」
「う~んとね、ゼクト…勇者ゼクトが使った技だよ! 僕は未熟だから小鳥さん1匹….」
「ですが、その技じたい『勇者』しか使えない技で、最後の使い手、最後の勇者ゼクト様を最後に失われた筈です」
「そうなの」
「ハァハァゼぃゼぃ…セレナく~ん…また中二病みたいな事しちゃ駄目よ! 光魔法を聖魔法に見せかけて、光球を鳥に見せかけて駄目じゃない」
「あの…メル様、ですが結界…」
「流石はセレナくん、わ.た.し譲りの見事な光球ね」
「メル…光の翼だけど、あんな弱い奴なら…」
「黙って! 偽物だよね…セレナくん」
「ええと…」
「エドガー! これは『光の翼』じゃないよね」
「あれっ、エドガーも学園に来たの?」
「はい、セレナ様、メル様に頼まれ講師になりました」
「そう、これからもよろしくね」
「こちらこそ、宜しくお願いしますね」
「あの…エドガー?」
「何をいうんですか! メル様、セレナ様ですよ!セレナ様が偽物など…」
「この馬鹿ぁぁぁーー! 勇者一族なのに、セレナくんの遊びに付き合うの?」
「ああっ」
「ああっ!じゃないわ!あのね、皆、賢者の使う魔法にはミラージュって言って、人を騙す魔法もあるの…それで光の翼に見せかけただけなのよ…騙されちゃ駄目よ…セレナくんには反省室で反省文を書いて貰います!エドガーさん、セレナくん行くわよ」
「メル様」
「メル~」
「行くわよほら…皆は、そのまま授業を続けてね」
これも駄目なのかな…
◆◆◆
「メル~酷いよ…僕、嘘なんてついて無いのに…」
「そうですよ?!セレナ様は本物…」
「あのね、セレナくんが馬鹿した時のフォローに貴方を雇ったのよ!それが認めてどうするのよ?」
「ですが…」
「僕、嘘なんて言わないよ」
「ハァ~光の翼って本来は勇者しか使えないの! この世界の最後の勇者はゼクト…セレナくんが使えたら不味いでしょう?」
「だけど、あんな小鳥みたいな光の翼だよ」
「ハァ~、威力が弱いと言う事は『勇者として弱い』だけ、出来ると言う事は『勇者』ではある…そう判断されるわ…セレナくんは可笑しいから出来るけどね、普通は出来ないのよ」
「そうだった」
「もう、忘れないでよ…という訳で『光の翼』は使っちゃ駄目」
「解った」
「エドガー、貴方の仕事はセレナくんのお目付け役…なの…頼んだわよ」
「畏まりました…このエドガーセレナ様に忠誠を…」
「貴方の仕事はお目付け役、間違えないでよね…」
私も大概だったけど…此処迄常識外れじゃなかったよね…
セレス、母さん…なにやっているのよ。
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