第102話 セレナくん...頼むから経済を壊さないで


校庭に出て来た。


「さぁ、ミスターセレナ、メル様も認めるというその魔法の凄さを見せて下さい!」


メルから言われたんだよな…手加減しなくちゃいけないって…


魔法は使えるけど、蘇生以外は余り使った事は無いんだけど、どうしよう…


「…」


「威力なら気にしないで大丈夫ですよ?メル様を中心に8重の結界が施されていますから、どんな呪文でも大丈夫です!」


それなら大丈夫かな…なにか簡単な呪文を…


とは言え、攻撃系は不味いな…どうしよう?


そうだ…


僕は落ちている拳2つ分位の石を拾った。


多分、これなら大丈夫だ。


「ミスターセレナ、石を持ってどうかしたのですか?」


「そうだね…危ないのは問題だから、錬金なんてどうかな?」


「錬金ですか? できるのですか?」


『錬金って本当にあるの?』


『錬金って薬品や道具を使うんじゃ無かった』


『まぁ大賢者メル様の弟子なのですから出来ても可笑しくありませんわ』


メルの弟子なら出来ても可笑しくない。


それなら大丈夫だよね?


「それじゃ、やるよ…錬金」


石は光り輝き、黄金色に輝き始めた。


そして…これで金になった筈だ。


僕のお父さんは黄竜セレス、だからこの手の魔法には自信がある。


「ミスターセレナ…それは?」


「錬金術だから、金だけど?」


「ごゴールドですか…まさか、呪文一つで金をつくりだせるのですか?」


「他にも作れるよ? そうだな…此処に綺麗な薔薇があるよね…錬金!」


さっきは金だったから、今度はダイヤモンドにしてみた。


薔薇の形の赤いダイヤモンド、なかなかの造形だよね。


「これはルル王女にプレゼントしますね…」


「私に…ですか?」


この国の王女って事はマリアーヌママの遠い親類、ゼクトお兄ちゃんの奥さんのマリンとも親類、これ位あげても良いよね。



「はい…美しいルル王女にプレゼントします」


「あら、まぁ! 素敵なガラス細工をありがとうございます!」


「それガラスじゃ無いよ? ダイヤモンドだよ!」


「ダイヤモンド? ふふっセレナ様は冗談がお好きなのですね、赤いダイヤなんて私しりませんわ」


「ルル王女、それ私に見せてくれませんか?」


「貴方は、宝石商の娘のマーガレット…宜しいですわ」


「では…こ、これは、幻のレッドダイヤモンド、これはお父様の宝石商にもありません…小さい頃に小さな石を見せて貰った事があります…世界に数個しかない物です」


「その価値は幾らですの?」


「値段がつけられません…こんな大きなレッドダイヤモンドなんて、普通は存在しません…もしこれに価値をつけるなら、あの秘薬エリクサール以上かと」


「エリクサール…あの死んでなければ全ての怪我や病を治し、その価値は王城を超えるというあの…」


「はい、そのエリクサールです」


「あの…セレナ様、これを本当に私にくれると言うのですか?」


魔法で作れるものだから、そんなに感動してもね。


「ルル王女と僕は遠縁みたいですからプレゼントします」


「あ…ありがとうございます…あの良かったら」


「セレナ様、私にもこの素晴らしいダイヤモンドを一つ頂けませんか?」


まぁ、ルル王女の友人みたいだし、良いか?


「それじゃ、此処の木の枝を錬金…はいどうぞ」


「ここ、これはブルーダイヤですか? 凄い…」


『嘘、簡単に錬金で、ダイヤや金を作れるの…凄い』


『セレナ様をうちの婿に出来たら...もう我が領地は安泰です』


『借金なんて無くなるわ』


『糞、なんで僕は女じゃないんだ』



「今度は私の番ですわ…あの他の宝石も出来ますか?」


「出来るよ」


「それじゃ、凄く珍しい、伝説の赤いエメラルドとかも出来ますか?出来たら、獅子の指輪に組み込んで」


「ちょっと難しいけど…はい」


「それじゃ、私は…」


「ちょっと待って、次は私の番ですわ…」


「何を言うの!私は公爵家の娘、たかが子爵の娘が割り込まないで」


「そんなの関係ないわ」


『トレジャーデストラクション』


「ああっ、そんな宝石が…ああっ」


「私のブルーダイヤが、いやぁぁぁーー」


「あれっ…メル?どうしたの…」


「セレナくん、どうしたの?じゃないよ? そんな錬金で作った偽物をあげちゃ駄目でしょう?」


「メル、僕、偽物なんて作ってないよ」


「確かに、普通の鑑定じゃ見分けはつかない…」


「だから、本物だって」


「セレナくん…黙って…」


「はい」


「皆は知らないだろうけど、錬金で作れるのは98パーセントまで、あと2パーセントは偽物なのよ!鑑定を使っても解らない、上位鑑定じゃなくちゃ真偽は解らないわ、だけど偽物は偽物、王族や貴族、それに連なる者なら持ってはいけない…矜持があるならしないわよね?」


「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」


僕は偽物なんて作ってないのに…メル酷いよ。


◆◆◆


僕は学園長室に呼び出された。


「メル、偽物なんて酷いよ…」


「セレナくん…私自重してって言ったよね?」


「だから危なくない様に錬金で…」


はぁ~胃が痛いわ。


「あのね、セレナくん…あれ、多分世界の経済が狂うから…もうやめてね…」


「あれ、全部本物だよ」


「だから不味いのよ! あれ私が壊さなければ大変な事になったの…あれ一つでね…下手したらお城が買えるのよ」


「そう…」


「だから、セレナくん…頼むから錬金はもうやめてね…」


「解った」


絶対に解ってないよね…私、死なないのに、はぁ~胃がシクシクするのはなんでだろう。





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