第98話 メルSIDE セレスの気持ちが解った気がする
これ一体、どうしろって言うのよ!
「あははっ、皆可愛いね、ほら舐めないで、体がビショビショになっちゃうよ!」
「ドラゴンがまるで犬みたいですわね…」
「あれと戦ったら、わらわでも手古摺るのじゃ…それが犬猫のようになついておる」
森で空竜と出会ってから、次々に竜種が現れた。
恐らく、あの空竜が『セレナ様が此処に居る~』とか言ったのかも知れない。
妲己さんほどの実力者が手古摺ると言うのも良く解る。
だって…此処には20体以上の竜がいるんだから…
「あの、セレナくん…今日は良いから次から、竜には余り会いに来ない様に言えるかな?」
「街には入って来ない様にしっかり言っているけど、駄目なの?」
「駄目に決まっているよ…これ普通じゃないからね」
こんなの、昔だったら勇者パーティ案件だよ…
ブラックウィング(メルを含むゼクトのパーティ)に招集が掛かっちゃうよ…
倒せるかどうかも微妙だよ。
「メル~僕って竜の序列で八大竜公の下で10番目位なんだって…だから、こうなっちゃうみたい…それに竜公と違って…」
え~と冥界竜バウワー様と竜公で9人…そのすぐ下って事じゃ無い?
ハァ~…こんな存在がなんで平和に、民衆に紛れて暮らしたいの。
生きて居る事がバグだわ。
マモンが大昔『魔王より強い魔族のバグ』って言われていたけど…
それ処じゃないわ。
これ…マモンが進化した軍神アークス並じゃ無いのかな?
「はいはい…優しそうだからこうなるのね…だけどね、セレナくん…普通の人間は、そこに居る竜達を一体も倒せないのよ! そこに居る一体を倒す為に大勢の人間が死ぬ気戦うのが普通なのよ…怖がられるから、困った時以外、呼んだり、仲良くしちゃ駄目」
「そうなんだ、仕方ないな…皆、人間が怖がるから…バイバイ!」
あれだけの数の大型の竜が、まるで捨てられた犬の様な目で去っていく…ハァ~どう考えても普通じゃない。
いっそうの事人間の方じゃなく魔国の学校に行けば良いんじゃないかな。
魔族は力が全てだと言うし…その方が…多分良い気がする。
「あの、魔族の学校に興味ない?」
「それ無理なんだって! 魔族は力が正義だし、僕の体は凄く価値があって、バンパイアやサキュバスが妻になりたいと押しかけてくるから、ルシファードおじちゃん曰く、2000人の妻を娶る覚悟じゃなくちゃ無理だって言われたんだ! しかも魔族は人族と違って敏感だから絶対にばれるって…」
確かに魔族はそうだわ…
ハァ~だけど、それなら学校なんて通わなくて良いんじゃないかな?
「セレナくん…本当に学校に行きたい」
「うん!」
「そう…私頑張るから…」
王立学園には、実習もあるのに…どうすりゃ良いのよ。
◆◆◆
うん、これで良い! これなら…約束は守った事になる。
私はイシュタス様の像に手を合わせて祈った。
『なにかセレナの事でしょうか?』
流石、ムスコン女神、セレナの事となると顕現しますね。
『パンパカパーン! おめでとうございます! セレナくん、無事王立学園卒業でございます!』
『…ふざけているのかしら?』
『いいえ、学力能力とも優秀なセレナくん『学園長権限』で無事卒業しました! 入学から卒業まで0日、最短記録ですね…いや優秀、優秀!』
『メル、貴方舐めているの? 女神を怒らせて…』
『あのですね…これは正当な評価です…全ての講師、いいえ、私より優秀なのですから『飛び級』は当たり前です…正当な評価…』
『メル…貴方…ちょっと…』
いきなりイシュタス様から他の女性に画像が変わったわ。
どうしたと言うの…
『お初にお目に掛かります!お姉さま…セレナの婚約者のヘラとお申します! 今回の学園通いは学力じゃありません!セレナに楽しい青春と人生経験を積ませる為の物です!そこに能力は関係ありません』
『ですが…』
『一応、校則を確認して見ましたが、飛び級は本人の意思による物ですよね?そんなの無効です』
『ですが、こんな能力者、どうやって…』
『そこはお姉さまにお任せします…ですが、こう言う事をするなら、私、家族でも容赦しませんよ?』
『一体、何をするって言うの? 幾らなんでも…』
『私も実は女神なんです!メルお姉さまがそう言う事するなら…これ使っちゃいますからね』
『それ…なんですか?』
『私の世界にある『不老不死』の実です。これを食べると何をしても死ななくなります』
『それが、何かあるのですか?』
『死なないから冥界に行けない、いえ、それを実行するならバウワー様を怒らせるから、もう受け入れてくれないでしょう…今、イシュタス母さまを怒らせたから天界にもこられない…未来永劫、一人で何処にもいけず、下界で1人ボッチ…辛く無いですか、そんな生活』
『そんな…』
『女神って残酷で、死ぬ自由さえ与えない事も出来ます? どうしますか?』
『セレナくんを…ちゃんと学生として扱います』
『良かったですわね! イシュタス母さま、メルお姉さまがしっかりセレナの面倒を見て下さる約束をしましたよ』
『良かったです! メルこれからもお願いしますね』
『解りました…』
全部押し付けて、酷いよ…
今、少しだけセレスの気持ちが解った気がする。
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