第97話 メルSIDE それ可笑しいからね①


少し常識を知って貰う為に森にきました。


「セレナくんに質問です!森を歩いていると空に空竜が居ます!この場合はどうしますか?」


「う~ん、呼んで仲良くする! こんな感じに! ピィィィッ」


セレナくんが何やら音を出すと大きな空竜が嬉しそうに飛んできます。


「ドラゴンですね…大丈夫なのですか?」


「竜じゃな…」


どう見ても20メートル近い空竜が嬉しそうに頭を下げています。


「うん、可愛い可愛いいい子~」


「セレナくん! それ違うからね! その子1体で普通の冒険者パーティは全滅するから…学園の生徒なら10人居ても敵わないから!」


「え~竜は皆、可愛いよ…ほら、頭撫でてあげると喜ぶんだよ」


「それは、セレナくんだけだから」


「違うよ!バウワーお爺ちゃんにもセレスお父さんも出来るから、僕だけじゃ無いよ?」


「うっ…だけど、一般人には絶対出来ないし、人によっては気絶しちゃおうから止めて…ほら、その子返してあげて…」


「そう?こんな可愛いのに…」


可愛い顔してムッとしても駄目だからね…


しかし、セレスは私達の中で一番の常識人だったのに…


まさか、子育ては苦手だったわけ!


なんで、地上に送るまでに、もう少し常識を教えておかないのよ!


「可愛くても竜だから…一般人は怖がるから…呼ぶのも人前で可愛がるのも駄目…」


「カーミラ、妲己、この子怖い?」


「別に怖くありませんわ」


「わらわもその位なら大丈夫じゃ!」


「ほら、怖くないみたいじゃん? メルって怖がりやさんなだから…」


「私だって怖くないわ! あくまで一般的な話よ!」


「え~っ、だけどこの位の竜ならスカルおじちゃんもルシファードおじちゃんもゼクトお兄さんも怖がらないよ!」


「だーかーら…それ全員一般人じゃないからね!全員…ハァハァ普通じゃ無いから」


「それじゃ、一般人ってどんな感じなの?」


「ドラゴニュートになる前のフルールやロザリア、エルザ…後はエドガー、あの辺りで普通は一流中の一流だからね」


「メル、それ、冗談だよね!」


「本当よ!」


周りが回りだから可笑しくなるのも解るけど、あまりに酷い。


「ううん、本当よ!学生の多くはオーガあたりに勝てたら良い方でオークにすら負けるような子ばかりよ…本当に手加減を覚えてね…はっきり言うと…既にセレナくんは学校の教師、ううん、私より強いんだから、本当に手加減を覚えてね…」


「え~とメルより強いと不味いの? 手加減ってリダお姉ちゃんやマリアお姉ちゃん位にすれば良いのか?」


「セレナくん、リダもマリアも、勇者パーティだから!あれでも人類最強の一端だったんだから…」


尤も、すぐにパワーバランスが崩れたのよね。


何処が『最強』かもう解らない。


「もっと弱い振りしないといけないの?」


「そうね…エドガーより弱い…まずはそこを目指そうか?」


「セレナ様…頑張って下さい!バンパイアの歴史は隠ぺいの歴史でもあるんです! もし、失敗して不味くなったらこのカーミラが解らないように処分するからご安心ください」


「まぁ、わらわは狐ゆえ、騙すのは得意じゃ、失敗したら誤魔化してやるから安心して良いぞ!」


ああっ、この二人もバンパイアの始祖と大妖だったわ。


「だから…失敗して誤魔化すんじゃなくて…最初からバレない様にしよう…ねぇ」


「うん…解った!メル、安心して」


絶対に解ってないわ…本当に胃が痛いわ…


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