第91話 母性を司る女神
「こほん、最早三人も『人じゃない』とは思いませんでしたが、ですがこの計画はセレナに必要なのは確かです! どうでしょうか?」
「どうでしょうって言われても、離れたくないですわ…ねぇ」
「私もそうですね」
「あたい、だって嫌だよ」
「気持ちは解りますよ! 寿命が600年あると言いますが、たかが600年で良いんですか? 私やそこの二人は寿命なんてなくほぼ永遠に生きられますが…」
「ですが、3年の問題ですわよね?」
「それなら、僅かな話じゃないですか?」
「あたいもそう思うけど…」
これは大きな誤算ですね。
600年…さぁどうしますかね…穏便に話を進めるつもりでしたが、仕方ないですね。
「良いですか?セレナの妻であるなら、夫の居場所を作るのは当たり前の事だと思いますよ? 暫くしたら天界で暮らす事になります。セレナの母親は女神イシュタスや、過去の世界の有名人です…何も許可を受けていない、挨拶も無しで同棲してて問題にならないのでしょうか?」
「それはセレナ様が…」
「女神様になんて会えないじゃないですか?」
「天界になんて行く方法が無いんだから」
礼儀がなってない。
相手は神なのに何をいっているのでしょう…これが私の世界なら、ブサイクと結婚をさせられたり、獣にされたりするのに…
「それは言い訳になりません! 行く方法ならセレナに聞けば良かった筈です!貴方達は神じゃ無いでしょうが、それなりに地位のある家の息女だったのでしょう? 親の許可も取らずに同棲など許されるのでしょうか?」
「あの…ですわ」
「え~とどうなのでしょう?」
「不味いのかな?」
この世界の女神イシュタスも父であるセレスも割と放任主義なので文句も言わないでしょうが…この際、利用させて頂きます。
「今回、私と一緒に行くのであれば、私が間に入りますよ。同じ女神ですから、色々ととりなししてあげますけど? 戻らないというのであれば、私は間にはいりませんけど、どうします? 女神相手に上手く話せる自信はおありですか」
「ないですわね、ですが聞いていると私達とセレナ様を引きはがそうとしている様に思えますわ」
「そう思えますね…酷いですね」
「どう考えても可笑しいだろう? なぜ、こんな事いうんだ」
「この際だから言わせて貰いますが…今の環境セレナには最悪です!今の周りはセレナに逆らうような人間は何処にもいない! それは神の子として誰もが扱う為です。私が住んでいたオリンポスでは周りが神ですから同等に扱ってくれる存在がいますが、それが無い!これでは何も成長できません!どう考えても良くない事は解る筈です」
「それなら、私がこれからは頑張りますわ」
「私だって」
「あたいも」
「それなら、冥界竜のバウワー様や魔王ルシファード、スカルキングに『あまり甘やかして欲しくない』と言えますか?それに天界に行ったら姑は女神イシュタスですよ?勿論、時には意見位言えますよね? 私は言えますがどうなんですか?」
「バウワー様…無理ですわ」
「イシュタス様…」
「魔王…スカルキング…」
「難しいでしょう? よいですか?セレナと結婚すると言う事は姑は女神イシュタスになると言う事です! 神との婚姻は人間のように100年程度じゃないのですよ、永遠に続くのです! 勿論嫁姑関係もです…私もこちらの天界については詳しくありません、せめて一緒に暮らす神殿位は別にしたいものです、私達がセレナの妻になる以上今後の生活について女神イシュタスやセレスと話す必要があります…今回の一番の貧乏くじは誰が見ても私のはずです! カーミラと妲己はこれから3年セレナと暮らせる。貴方達は今迄暮らせてきました…まだ不服がおありですか?」
「そう言われてしまえば、文句も言えませんわ…ですが何故私達じゃ無くて、そちらの二人なのですか?」
「その理由を教えて下さい」
「あたいもな」
「セレナは本来、学生として学園に通う筈だった筈ですよね…それを1回馬鹿やって無くしてしまった。私はセレナの成人までの3年間、学び成長の為に学生として過ごさせたいと思っているのです。幸い、カーミラは吸血鬼、妲己は狐、12歳の姿になるなんて造作もない事です。三人にはそれは出来ないでしょう?3年間私と一緒に天界で待ちませんか?」
「そう言う事なら仕方ないですわ」
「3年、寂しいけど仕方ないですね」
「解ったよ、あんたが貧乏くじなのは解るから文句言わないよ…だけど良く、自分から損な方を選んだね」
「私は嫉妬深いですが、これでも『母性を司る女神』ヘラなのです!そして神々の母でもあるのです! その私が少年の成長の手助けをしない訳ありませんよ」
母性…久々にこんな感情が沸きましたわ。
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