第89話 お見合い3人目 ヘラ


3つ目の扉を開けるとそこに居たのは…


なんて綺麗な人なんだろう…


世界って凄い...僕は女神と竜の血を引いているからか、その人間の本来の姿が見える。


カーミラは蝙蝠、妲己は狐が見えていたんだけど、ヘラさんは綺麗な女性にしか見えない。


それに、この世に此処迄美しい存在が居るの…そう思える程に桁違いな美貌だ。


美貌だけならイシュタスママに勝てる存在なんて居ないと思っていたのに、ヘラさんの方が…綺麗に見える。


「どうかされましたか? 私を見つめて!」


「あの、ヘラさん、いやヘラ様はもしかして美の女神だったりしますか?」


「いいえ、美の女神ではありませんよ!うふふっ美の女神と戦の女神と美しさを競った事はありますが、まぁそれも昔の事です」


「道理で綺麗だと思いました、僕はヘラ様みたいに美しい人は見た事がありません」


「ふふふっ、ありがとう」


「いえ…」


「そう言えばセレナさんは神の血を引いているのに12歳なんですね、珍しいわ」


「はい、まだまだ子供です」


「(じゅるっ)本当に若いですね!」


「若いですか?」


「そうですよ!12歳の神なんてそうそう居ません…大体の神は容姿こそ子供の神も居ますが皆、中身は高齢…人間で言うならお爺ちゃんみたいな物です、新鮮というか、なんと言ってよいか…」


「若いとやっぱりヘラ様の好みじゃないでしょうか?」


「あの…ですね…私が司っているものに『母性』があります! だから、なんといって良いのか…正直好みですね」


「そうですか?良かったです!」


「と言う事は気に入って頂けた!そうとって宜しいのでしょうか?」


「はい、ですが、今現在僕には婚約者が既に5人居ます、それは問題になりませんか?」


「本来、私は、婚姻と貞節の女神でもあります。一夫一妻を好みますが、一夫多妻を望むならまぁ、色々経験しましたから、この際良しとしましょう…ですがハーレムを持つ男には、資格は必要だと私は思います」


「資格ですか?」


「そうです、新しい妻を娶っても、昔からの妻も蔑ろにしない事ですね。若い妻や新しい妻を迎えると殆どの男は古い妻を蔑ろにします…それが私は許せません!場合によっては嫉妬に心を燃やし大変な事をしでかします! だから、ハーレムを持つ男の資格は決して新しい妻を迎えても、古くからの妻を蔑ろにせず、新しい妻と同じ、いえそれ以上に大切に出来る人間のみ許される物だと思います」


「心に刻んでおきます」


「それを貴方が守れるなら、私は貴方にとって理想の妻で居られると思います…ですが守れなかった時は、きっと貴方は後悔することになりますよ?それでも私を妻に迎える気がありますか?」


「勿論です」


「そうですか!それは良かったです!今回のお見合いに望む為に実は私は離婚してきました…拒まれたらどうしようかと思っていたのです!受け入れてくれてありがとうございます…」


「僕こそ、貴方の様な美しい女神様に来て頂いて嬉しいです!ありがとうございます!」


イシュタスママと同じ女神様のせいか、気高く美しいそれが感じられるし、それだけじゃない。傍に居るだけで守られているような安心感に包まれる。


こんな経験は今迄なかった。


まるで…母さんみたいだ。


「それでは、これで婚約は成立と言う事で宜しいですか?」


「はい」


「それでは、将来の妻として苦言を言わせて頂いても?」


僕は悪い事をしたのかな?


「何でも言って下さい」


「では、貴方は自分が子供であっても『神』である事を忘れてはいけません」


どう言う事なのかな?


「どう言う事なのですか?」


「神や竜は永遠の時を生き続けます! セレナが私の先に婚約した2人の、まぁ魔物も永遠とはいきませんが、永い時を生きられるのです」


「はい…」


「それに比べて人間は、永い時を生きられません! 先に婚約した、フルールやロザリア、エルザは生きて100年…人間としての美しさは今がピークです」


「ああっ」


「気がつかれましたか?一緒に居るのは楽しいでしょう?ですがその楽しい日々を過ごせば過ごす程彼女達は老いていきます…貴方のお父様はそれを危惧したからこそ、そうそうに時が止まる天界に妻を連れて行かれたのではないですか?」


「そうですね…迂闊でした…ではどうすれば良いのでしょうか?」


確かに、永遠の命を持っている僕と普通の人間は違う…


「セレナは12歳、この世界の成人は15歳です! フルール、ロザリア、エルザの3人は早目に天界に行かせた方が良いかも知れません。勿論、不公平を無くす為に私も一緒にこの世界の天界で過ごします。15歳の成人までセレナはカーミラと妲己と過ごし、色々な経験をし、15歳で私を含む妻達と正式に結婚をする…こんな感じで如何ですか?」


「ヘラ様はそれで良いのですか?」


「女神や神にとっての数年等、人間の数日みたいな物です! 本当は一緒に過ごしたいのですが、これでも高位の女神ですから、ただ私が傍にいるだけで試練は何も起きないでしょう…それではセレナの為にはなりませんから、天界で15歳になるのを楽しみに待とうと思います。尤も皆さんと話をしてからですが…」


「解りました…あの、お見合いは成立という事で良いのでしょうか?」


「勿論ですよ」


やはり、異国の女神様って凄い…


まるでママやお母さんと話しているみたいだ。


◆◆◆


ふふっ、凄いわ…12歳の神の子!


大体の神は詐欺ばかり。


見た目は少年でも実際の年齢は爺なんですから…何も感じなくなりましたわ。


人間を侍らせれば良い、なんて女神もいるけど…すぐに死んでしまう。


寵愛するだけ、死んだら悲しくなりますよ。


それじゃ、人間にネクタルを与えて神にすれば…


なんて方法もありましたが、大体の人間は神にすり寄る愚かで卑しい者ばかり。


そこに12歳の少年の神との縁談。


『母性』の神である私が受けないわけ無いじゃないですか…


大体のオリンポスの神は…ロリ、ショタ好きが多い。


自分の物にしてあんな事やこんな事…なんて思いましたが…


これでも母性を司る女神。


セレナの成長を促すべきです…


その為にはもう少し学ばせる必要があります。


それに、如何に私でも12歳に手を出すのは、ちょっと…


3年経って15歳になれば、そこからは…コホン!


まぁ、人間の婚約者3人に神の妻たる教育をしセレナが住みよい天界にしながら待つのも、永く生きる女神としての務め。







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