第88話 お見合い2人目 妲己
二つ目の扉を開け、僕は中に入った。
ルシファードおじちゃんが勧めるだけの事はある。
静子お母さんと同じ黒髪、黒目…絶世の美女というのはこう言う人の事を言うのかも知れない。
「あの…セレナと申します」
「妲己じゃ!」
この人の気配は何処かで感じた事がある。
あっそうか、あの時に、隠れてこっちを見ていたのが彼女だ…
しかし…
「あの、僕なにかしました?」
「別に何もされていないのじゃ…だが、わらわはこのお見合い乗り気じゃないのじゃ!」
「そうですか…嫌われちゃいましたか…」
「何故、その様な目をするのじゃ…大体、その気になれば、お主ならわらわが、昔にした酒池肉林でも簡単じゃ。美女が欲しいのなら『この世界の美女を全て差し出せーー、さもなくば世界など滅ぼしてくれるー』と言えば、世界中の美女が全部お主の物になるであろう? それがなぜ、この戯言のような見合い等するのじゃ…わらわが欲しければ『俺の物にならねば殺す』そう言えば、わらわは死ぬかお主の物になるしかないのじゃ…このお見合いに意味はあるのか?」
え~と何を言っているのか解らない。
「あの…僕は子供だから良く解りません。ですが、それ楽しいですか?」
「楽しいに決まっておろう?国が世界がお主のものじゃ…出来ない事等、なにもない、まさにこの世の天国じゃ」
「そうでしょうか? そうですね…僕は子供だから、説明が下手です、許して下さい」
「何が言いたいのじゃ!」
「確かに僕なら妲己さんを脅して傍に居て貰う事も世界中の美女を集めて侍らす事も可能ですね…ですが、その傍に居る妲己さんは何時も悲しそうにして笑顔じゃありません。他の美女もきっと笑ってはくれません…そんな物手に入れても何も楽しくない無いじゃないですか?」
「笑わなければ殺す…と無理やり笑わせれば良いのじゃ!」
「それ、嘘笑いじゃないですか?そんな物僕は欲しくありません」
「ううっ、だったら、なんなのじゃ!お主はわらわを嫁にしたらどうするつもりなのじゃ!」
「そうですね…まずは気持ち良くしますね」
「ふん、エロガキが色気づきおって、結局は凡夫じゃな…わらわは経験豊富じゃ、わらわを抱きたい…そう言うことじゃな…」
濡れないように上着を脱いだだけなんだけどな。
「僕は、これでも女神と竜の子なんです…真実を見抜く目も持っているし、本来の姿に戻す事も出来るんですよ! 狐さん…えぃっ」
妲己さんを狐の姿に戻した。
「な、何をするのじゃーーーっ」
「何って? お義父さんから、教わった良い事ですよ?凄く気持ち良いですよ?」
「なんじゃ、そのわきゃわきゃした手は…何をするのじゃ…やめるのじゃ…」
「せめて一回味わって貰います」
「まさか…お主、獣姦の趣味でもあるのか…嫌じゃ…嫌じゃ…」
お父さんはこれでお母さんと仲良くなったって言っていた。
仲良くなれると良いな…
◆◆◆
「ふぃー、凄く気持ち良かったのじゃ…お主なかなかのテクニシャンじゃな」
「気に入って貰えて良かったです」
「しかし、このシャンプーやリンス、凄い…わらわの毛並みが凄く良くなった気がするのじゃ」
「お父さん直伝なんです…お父さんがお母さん達にしているのを見て覚えたんです、これやってあげると皆、喜ぶんです」
「わらわは人間じゃないから全身じゃ…全く恥ずかしい所迄洗いおって…こんな事をしたいが為に嫁さんが欲しいのか?」
「それだけじゃ無いですよ? 一緒に美味しい物を食べて、飲んで楽しく暮らせれば良いな…なんて思っています」
「そうか…だが、それは難しい事じゃ、わらわはかって酒池肉林を味わい、血肉を貪った女狐じゃ、満足などさせる事は無理なのじゃ!」
「僕、こんな物作ってきたんです!」
「瓢箪じゃな…それがどうかしたのか?」
「何でもお父さんが居た国には養老の滝といって、最高のお酒が湯水のように湧く滝の昔話があると聞いたんです! 僕の力で似たような事出来ないかな…そう思って無限にお酒が湧いてくる瓢箪を作ってみました」
「お酒が湧いてくる…瓢箪…どんなお酒が…これは、美味いのじゃ! こんなお酒は飲んだ事ないのじゃ!なんだこの味は、わらわの体が溶けるような、一口飲んだだけで、まるで此処が天国の様じゃ」
「異界にはソーマというお酒の神様がいるそうなんで、真似てお酒に僕の加護が染み込むようにしたんです…あとこれとこれ…」
「なんじゃ、この袋と飴は…」
「その袋には沢山の肉が入っています、その収納袋は僕の手製だからその中の時間は止まっています。何時でも新鮮なお肉が食べられますよ!ルシファードのおじちゃんから許可を得て魔国の反乱分子を討伐して貴重な魔物のお肉を手にしました。竜でも1年位は持つ位の食料が入っています」
「なっ、なっ、なんじゃと」
「あと、その飴は僕の血から作ったブラッドジュエルキャンディーです…プレゼントします…このお見合いは失敗ですよね…僕怖いですか? 大丈夫です僕から断っておきますから…」
怖い…そういう気持ちが何となく伝わってくる。
「待つのじゃ…確かに怖いが、これは返さないで良いのか?」
「はい、プレゼントした物ですから!」
「お主は本当にお人よしじゃな…仕方あるまい! 悪魔にでも嫁いだつもりで嫁になってやろうぞ!」
「本当ですか?」
「くどいのじゃ、何回も言わせると気が変わるかもしれぬぞ! 嫁になってやるのじゃ!」
「ありがとう」
「それじゃ、これからは旦那さんじゃな…ほれ次があるんじゃろう、行くが良い」
「はい」
怖がっていたのに…良く解らないや。
◆◆◆
本当に子供で純真なのじゃ…
力づくでも、あの神器と引き換えにでも簡単にわらわと婚姻など出来たろうに…
でもせなんだ…
はぁ~あれで断るなどわらわでも出来ぬよ…
欲しい物全部並べて、無料でくれるなど言いおって…
まったく、仕方が無いのじゃ、わらわは乞食じゃないのじゃからな。
恵まれたくは無いのじゃ…あれ程の物、引き換えに出せる物は、わらわ自身しか無いのじゃ。
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