第81話 カーミラSIDE 血の対価
本当にめんどくさいわ。
ハァ~異世界の魔王の紹介だかなんだか知らないけど、この私に見合いをしろなんて、私がなんでそんな事しないといけないのよ!
ベアードに言われたから義理位は通さないといけないわね。
一応、彼奴はこの世界の魔物を統べる長と言われているし…
大体、私はこれでも吸血鬼の真祖の一柱なのよ!
元から好きなのは『処女の血』男の血じゃない。
男が欲しければ魅了でどんな男でも私の物に出来る。
そんな私に見合い?
しかも12歳の子供?
ベアードもそろそろ耄碌したのかしらね…
まぁ良いわ。
私が見合いするに値する相手か値踏みさせて貰いましょう。
値する相手なら見合いという名のテーブルに着くのも良いわ。
だけど、値しない相手なら…殺してしまえば良いだけです。
私はベアードに頼んで、異世界に一度送って貰う事にしたのよ。
「これでも私は吸血鬼の真祖、相手にも格は必要です! 私のお見合い相手というのなら、そのテーブルに着く前に、その技量を見させて頂きます!」
「仕方が無い、送ってやろう…だが」
「私がお見合いのテーブルに着く価値が無い…そう思ったら、殺しますよ…良いですわね!」
ベアードは異世界だろうが異空間だろうが自由に行ける。
これが魔の王たる由来ですね。
悔しいですが異世界なんていける存在は、ベアードを除いていませんわ。
「私もどんな人物かは解らぬ!だが私の知己である魔王ルシファードが持ってきた話だ、それなりの人物だと思われる…だが目に叶わぬというのであれば好きにするが良い! 送ってやるから自分の目でしっかり見極めるのだな!」
「言われなくてもそのつもりです!さぁ送って下さい!」
「うむ…今回は3時間…3時間だけ異世界で過ごせるようにしようではないか? 良いねミス、カーミラ!」
「そうね…それで充分ですわ!」
真祖の私に釣り合う男…そんな者がいる訳無いでしょうが…
◆◆◆
ベアードに送って貰った異世界。
随分と昔の街並みな気がします…
町並みはなんだか懐かしい感じがしますね。
こんな世界なら過ごしやすいかも知れないわ。
科学が進み、監視カメラがあちこちある、あの世界よりはこの世界の方が人は襲いやすそうですわね。
私程の美貌では目立ちますから、近づくのに化けた方が無難です。
老婆にでも化けますか…
ベアードは近くに送ってくれた筈なので、この近くにいる筈ですね。
あらかじめ貰った似顔絵を元に探してみました…
なかなかの美少年で目立つタイプだから直ぐに見つかりました。
どう見ても恋人に見える女性が3人も居るじゃない。
この状態でなんで追加が必要なのか解りませんね。
この真祖、カーミラをまさかハーレム要員に入れる。
そう言う事ですの?
『随分と舐められたものね、残酷に殺してあげるわ』
私はセレナという少年が3人と別れ1人になるのを待ちました。
少しした道で3人とは別れ別行動に…しかもどんどんと人気(ひとけ)が無い場所に向かっています。
これなら…簡単に襲えそうです。
「あのさぁ、お婆ちゃん、なんで僕の事つけているの?」
なかなか感が鋭いですね。
気がついていたのね。
さてどう答えるか?
見た感じ、随分と隙だらけ。
殺すのは何時でも出来そうです。
ですが…凄く香ばしい匂いが彼からしてきます。
汗からですか…なら…
「すいませぬ! 儂は血友病という病に掛っておりまして、定期的に血を欲するのですじゃ、貴方様から凄く良い匂いがしたので、僅かで構いませぬ、血を分けて頂けますまいか」
血を味見してからで良いでしょう。
「血友病ってなに?」
「血が飲みたくなる病ですじゃ」
「病なんだ、それじゃ仕方が無いね…う~んとね? はいこれで良いのかな?」
セレナは人差し指をナイフで傷つけ私の前に差し出した。
ハァハァ、この豊潤な香りは…なに…匂いだけで興奮が止まらなくなる。
「ハァハァ、頂きます、あむ、うんぐうんうんハァハァ、ごくり」
なんという味の血を飲ませるのですか!
この血はまるで麻薬…
「ハァハァうんぐうううんっううんあむっごくり」
濃厚で豊潤。
人間でいうなら2つと無い味。ワインで言うなら1億円出しても買えない程の高級な味わい…これに比べたら今迄最高に美味しく感じた処女の生き血ですら、そこら辺で売られるハウスワインにしか思えないわ。
口に含み飲むだけで幸せを感じる。
『これが欲しい』
これが手に入るなら、私は何でもする…
人間でいう麻薬ですら生ぬるい程の依存性。
バンパイヤであるからこそ逆らえない欲求。
これ以上の血は恐らく存在しない。
そう思える。
『極上の血』
「あの、そろそろ…」
「済みませぬ…あと少し…もう少しだけハァハァ下さい」
駄目だ、止められない。
◆◆◆
「血…ハァハァ…あれ」
「ミスカーミラ…時間でこちらに戻って来たのだよ!どうだね…」
「最高の相手でしたわ…ハァハァこの話進めて下さい」
この血を味わってしまったらおしまいです。
この血を対価に出されたら、きっと私はどんな命令でも断れない。
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