第80話 ハーデスSIDE:纏めるしかない
「なかなかの美少年ですね! この少年が私を妻に望んでいる、そういう事ですか?」
「まだ、お見合いという段階だ、それにヘラ、お前以外にも他の女神にもこれから話をしに行くつもりだ」
ヘラは母性を司る女神だ。
相手は神と竜の血が入ったとは言え12歳の美少年。
完全にドストライクな筈だ。
「それでハーデス、他の女神とは一体誰に話を持っていくつもりなのですか?私に話を持って来たのに?」
「その少年の好みが年上の女性が好みだから、一番最初に話を持ってきただけだ! ただ、悪いがあちらの世界は一夫多妻が認められているのでヘラ1人が妻じゃない!こちらからも候補として他にもアフロディーテ、アテナ、アルテミスあたりにも声を掛けてみるつもりだ」
「あら、それなら声を掛ける必要は無いですね!私1人で充分な筈です」
「だが、そう言う訳にはいかないだろう? 俺がお前だけを選んだら、黄金のリンゴの時のように女神同士で争いが起きて先方に迷惑が掛かる、相手はかなりの実力者で別次元の神だ」
「問題ありません! 第一私以外の女神を紹介する方が大問題です!」
「何故、そうなるんだ?」
「良いですか? アテナとアルテミスは処女神ですよ?他の女性と犯っているのを許すでしょうか? 特にアテナは神殿で精子を垂らしてしまった少年を殺してしまうような潔癖症です。一夫多妻は無理です。アルテミスも似た様な面がありますから、無理。そう考えると私とアフロディーテの二択しか最初からないでしょう?」
確かに処女神を嫁にというのは難しい。
その二択になるのは当たり前の事かも知れないな。
「ならば、アフロディーテに話を持っていき二人を紹介すれば…」
「ハァ~冥界の王ともあろう方が、アフロディーテの本性を忘れていませんか? あの女神は男なら神すら夢中にさせる能力を持っています!自分のみならず他者に激しい愛と欲望の炎を抱かせ、沢山の男性が神を含み彼女に恋しています。そのアフロディーテを異世界に送ってしまったら絶対に男神に恨まれますよ!大丈夫ですかね?それに気が強く誇り高い上に、自身の美貌こそが1番と譲らない、そんな彼女を一夫多妻の中に入れたら、絶対に不味い事になりませんか?」
言われてみればその通りだ。
そう考えると、バウワーと話した通り『ヘラ一択』しかない。
だが一つ不安な事がある。
ヘラは我が弟ゼウスの妻だ。
「弟ゼウスの妻というのは問題は無いのか?」
「ゼウスの浮気癖はオリンポスで知らない者は居ないでしょう!当然、貴方も知っているわよね?そして私がその都度、その愛人に制裁を与えている事もご存じでしょう?」
「ああっ」
「私がオリンポスから居なくなればゼウスは若い女と遊び放題ですから、離婚に同意する筈です、問題は無いと思いますよ?」
「確かに…だが、まだこの話は見合いの段階の話だが…」
「年上が好きな条件で女神ヘラの愛を拒む存在が居ると思うのですか?」
「…話を進めよう」
駄目だ、もう結婚する気満々だ。
此処からもし破談にでもなったら、最悪冥界が大変な事になる。
「是非お願いしますね」
もう進めるしかないのか。
◆◆◆
「このような話があるのだが…」
「兄よ、その話、確実に纏めて欲しい! もし纏めてくれるなら、このゼウスの名の元に地上から1つ好きな物を冥界に渡しても良い」
「ヘラは妻ではないか?」
「確かに儂も悪いが、あれのせいで沢山の女が地獄に落ちる以上の苦しみを味わったのだ、儂や他の神が庇っても無駄だった。今も彼女を恐れる女神も多い、正直言って助かるのだ」
「いや…」
「この借りは大きい、儂は兄に生涯感謝をする! そうだ、兄が冥界に持って行く者でぺルセポネを選んでも良い! その条件でどうじゃ! しかも、今なら、エローズに頼んでぺルセポネが兄を愛するように矢をいって貰おうでは無いか?どうじゃこの条件なら引き受けてくれるよな?」
「それは本当か?嘘ではあるまいな」
俺が愛したぺルセポネ。
惚れて冥界に誘拐し妻にしたものの一緒に過ごせるのはザクロ4粒を食べた1年のうち4か月だけ。
「冥界の物を口にしたものは冥界に住まなければならない」という掟があるため、12粒あったザクロの実のうち、4粒を食べたペルセポネは1年のうち4カ月を冥界で過ごさなければならない。
掟だから仕方なく居る、それだけだ。
そこに俺への愛は無い。
愛して貰えてないどころか恨まれているのが良く解る。
そのペルセポネが本当に俺を愛してくれる。
この報酬で俺が動かない訳がない。
「弟ゼウスよ兄に任せよ!」
「ハーデス兄上頼みましたぞ」
あのプライドの高い弟ゼウスが兄上だと…
この縁談は絶対に纏めるしかない。
もし、失敗でもしたら、主神二人が敵になりかねない。
◆◆◆
次の日、ゼウスとヘラが正式に離婚し、ハーデスは胃が痛くなった。
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