第74話 勇者一族の最期

「それでは明日また迎えに来ます、今日は帝国ホテルにこのままお泊り下さい! 明日は、コハネで楽しんで貰います、空竜艇での空の旅は圧巻ですよ…では」


あの後、オーケストラの演奏や、新しい劇等、随分と楽しませて貰った。


まぁ、楽しんでいたのは三人で僕は、身内の話を突っ込んじゃいけない…そう思いながら見ていただけだけどね。


「今日はありがとう、明日もまた楽しみにしているよ」


「セレナ様の為ですから」


なんだか不思議なデートだったけど、王族や貴族はこう言うデートをするらしい。


それなら仕方ないよね。


僕はこういう面は子供だから良く解らないけど3人が楽しんでくれていたなら、良いや。


「ちょっと先に部屋に行ってて」


「どうかされたのですか?」


「フルール大した事無いよ? ちょっと夜風にあたってくる」


「「「セレナ様」」」


「すぐ戻るからね」


かなり離れた所からだけど、殺気がする。


様子位見て来た方が良いだろう。


人気のない所でドラゴンウィングを出して僕は飛び立った。


◆◆◆


あれはエドガーおじさん!


誰かと戦っている…あの二人からだ、僕に対する憎しみというか殺気が向けられている。


僕は少し離れた場所で羽をしまい、三人の所へ向かった。


「エドガーおじさん? 大丈夫?」


「セレナ様、来てはいけません! このエドガーがこの二人を…」


そうは言っても満身創痍に見えるよ。


片腕が既に無いじゃん。


「大丈夫、その二人が悪いんだよね? パーフェクトヒールっと…これで治ったよ? 痛い所は無いよね?」


手も生えてきたし傷も無くなったから大丈夫だよね。


「ありがとうございます! セレナ様」


「それで、一体どうしたって言うの?」


「その二人が勇者一族です! セレナ様や婚約者を襲う計画を知り斬り捨てに来たのですが遅れをとりました…すみません」


「ねぇ?なんで僕を憎むの? 僕、貴方達に何かした?」


「煩い、俺達はお前のせいでコハネを追われたんだ!」


「今迄、勇者と崇められていたのに…お前が全部悪い…」


訳が解らない…勇者? 崇める?


見てみるしか無いな…『神眼』


これで過去に何をしたか見る事が出来る。


「僕は未熟者だ…だけど、君たちは『勇者』に見えないよ…貴方達人を殺しているよね? それも罪もないどころか立派な人を、女神イシュタスを信仰する者を殺すなんてこと『勇者』はしないよ」


「ふざけるな! 彼奴は彼奴らは、一の勇者の俺をこんな顔にし、マーティンの顔を傷つけ光を奪った、死んで良い相手だ」


「そう、それなら簡単だよ! パーフェクトヒール!」


「嘘だろう…俺の顔が治ってる、凄いやはり…えっ」


「見える、見えるよ、俺の目が治っている、こんな呪文を使える貴方は…2の勇者が認める…えっ」


「その怪我が原因で人を殺したんでしょう? だったら治してあげたんだから、死んで良いよね!」


僕は軽く2人の首の骨を折った。


しかし、エドガーおじさんもそうだけど、何処となくゼクトお兄ちゃんに似ているんだよな…なんだか忍びないから、もう少しつきあおうかな…


「エドガーおじさん、ちょっと付き合ってくれる?」


「ハッ、セレナ様の為なら地獄にだってつきあいますよ」


「良かった、これから行くのは冥界だから…それじゃ行こう」


「冥界?」


「そう、冥界?」


僕は2人の体を収納袋に入れて歩き出した。


◆◆◆


「バウワーおじさん」


「なんだ!セレナでは無いか? 相変わらず、良く此処迄入ってこられるな…なっ人間まで連れておる…なんで出来るんじゃ?」


「う~ん、解らないや…それより今、死に立ての魂2つ飛んで来なかったかな」


「セレナ…此処は冥界だから無数の魂が飛んでくるから、解らん」


「体、持ってきたんだけど、どうにかならないかな…う~ん」


「それなら、体を出せば…魂から寄ってくる筈だ」


「うん、やってみる…エドガーおじさん、手伝って…あれっ気絶しちゃっている…まぁ良いや」


2人の死体を収納袋から出して放り出した。


すると、魂が寄ってきて…うん入ったみたいだ。


「う~ん此処は…あっあっあああーーーっ」


「…」


「なんで気絶しちゃうんだろう?」


「セレナ、これが普通じゃ…儂はこれでも冥界竜バウワーなのだからな」


「バウワーおじちゃんカッコ良いのに」


「そうか? まぁ良い…その者達はゼクトの子孫じゃな、此処に置いていても迷惑になるから、特別に許すからゼクトの所へ連れて行って良いぞ」


「ありがとう、バウワーおじちゃん」


「よいよい、早くいくが良い」


「ありがとう」


僕が言っても駄目そうだから、直接ゼクトお兄ちゃんからお説教させた方が良いよね。



◆◆◆


「セレナ様此処は何処でしょう?」


「エドガーおじさん、言ったでしょう?冥界だよ!」


「冥界…死んだ後に行く、あの冥界ですか?」


「うん…あっ二人も起きた」


「此処は…」


「真っ暗だ」


「起きたみたいだね! ごめんね、あれ程沢山の人を殺しちゃったら、もう僕じゃどうする事も出来ないから、此処に連れてきたんだよ…」


「此処は何処でしょう?」


「あなた様は…その何者なのですか?」


「それは内緒! だけど多分僕が言っても2人は納得しないと思うし、反省をきっとしないから、お説教して貰おうと思ってね」


「「誰にです」」


「勇者ゼクトお兄ちゃん達にね、その方が早いでしょう?」


「「「勇者ゼクト」」」


「エドガーは大丈夫だからね」


「セレナ、また来たのか? 暇だから…誰そいつ?」


「セレナ、何して遊ぼうか? 僕と釣りに行く? それ誰?」


「ゼクトお兄ちゃんの子孫だよ? エドガーはまだ良いんだけど?問題は後の二人なんだ、沢山の人を殺しちゃっているから、どうしたら良いのかな?」


「「「最後の勇者ゼクト様」」」


「うん、正解、そして僕はリダだよ…マリアは残念まだ寝ているから今回は来ていないね」


「「「最後の剣聖リダ様」」」


「うん、正解」



「それで、セレナはどうして此奴らを此処に連れてきたんだ?」


「エドガーは良いんだけど、あとの二人は沢山の人を殺しちゃっているんだ…そのままでも良いんだけど、ゼクトお兄ちゃんに似ているから、なんか捨てきれなくて…それで相談」


「俺はそんなブサイクじゃねーぞ」


「う~ん、言われてみれば少し似ているよ…セレナが気にする気持ちが僕良くわかるよ」


「そうか~? まぁ良いや? まずはそいつ等がどうしたいかだな! どうしたいんだ?」


「私は悪人だったと思います、これから罪を償おうと思います!ゼクト様やセレナ様の言い渡す処分の通りに致します」


「私もそうです! これでもゼクト様の血を引いた者、ゼクト様やセレナ様の言い渡す処分であれば甘んじて受けます」


「結構、反省しているみたいじゃねーか?」


「僕もそう思うけど?」


「それは解るけど、どうやってこう言う場合は償うの? イシュタスママの信者も沢山殺しちゃったみたいだし…どう償わせれば良いのかな…それが解らないんだ」


「なかなか重い罪だな! 俺も随分馬鹿やったが、お前等はそれ以上だ! 俺はな、馬鹿やったから、人生の後半は償いの人生を送るようにしたんだ!親友のセレスに近づく為にな! だが、お前等のした事はもう取り返しがつかない! 素直に罰を受けるしか無いだろうな」


「僕もそう思うよ? もう死んでしまっているからね、罰を受け来世は真面目に生きる、それしか無いよ」


「「解りました」」


やっぱり、それしか無いよね。


◆◆◆


「それでバウワーおじちゃん、2人をお願いします」


「…解った…うむ」


「「どのような罰でもお受けします」」


「お前等2人を殺したのはセレナだ、本来はあり得ない話だが、今後どうしたいか選択させてやろう…選ぶが良い」


1. すぐに罪を償う

2. 一旦元の世界に戻り、残りの人生を生きて死んだ時に再び裁きを受ける


「どちらでも、好きな方を選ぶが良い」


「そうですか、ならば私は1でお願いする」


「親友が選ぶなら仕方ない1で」


「生き返らないで良いのか?」


「構いません、私はこれでもゼクト様の血を引いています!自分の罪から逃げる事はしません」


「私もです、セレナ様最後にゼクト様に会わせて頂きありがとう…自分の罪に向き合い、贖罪の道を選びます」


「そうか、ならばこのまま道を進むが良い、罪を償えば、その時、転生が出来る…」


「はい、エドガー、俺達は此処でお別れだ、セレナ様をしっかり守るんだぞ!」


「俺達は駄目は奴だった、頼んだぞ」


「ローラン、マーティン…」


2人は此方に手を振ると闇に消えていった。


「エドガーおじちゃん、帰ろうか…バウワーおじちゃんありがとう…」


「ああっ、またなセレナ」


自分達で選んだんだ…仕方ないよね。








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