第67話 ドレス
あれっ、確か僕が約束したのは、三人相手に一対一のデートをする約束だったよな…だけど、教会が恐らく提案してくれるのは全員とのデートの様な気がする。
先に謝って置いた方が良いよな。
「お帰りなさいませ、セレナ様」
「お帰りなさい」
「セレナ様、それでデートの順番とかどうする?」
やはり、この話だよな。
「それなんだけど、取り敢えず全員一緒にデートしようと思うんだ。取り敢えず、明日は全員でデート。その後で、一対一のデートを後日しようと思うんだけど…どうかな?」
「後日一対一のデートをして頂けるなら構いませんわ」
「そうですね、それで手を打ちますよ」
「うんうん、それで、何処へ連れていってくれるんだ?」
何だか振り出しに戻っただけの様な気がする。
弱ったな。
よく考えたら教会任せだから、どんなデートコースか解らないや。
「結構ゴージャスな感じかな、明日、迎えが来るから大丈夫だよ」
「迎えですか? 一体どなたが迎えに来るというのですか?」
「どんな催しですか?」
「もしかして馬車で遠出なのか?」
「…まぁ楽しみにして置いてよ!」
うん、僕にも解らない…
「「「…解った(わ)」」」
あれだけの人が考えてくれているんだから、大丈夫だよね。
◆◆◆
トントントン…
「はい」
「セレナ様、そしてご婚約者の皆さま、おはようございます! 今日は素晴らしく天気が良い日でございますね! 教皇様にコーディネートを依頼を受け参りました大司教をしております、グレゴールと申します! 聖教国1のデザイナー兼ブティックオーナーのバルマン氏を連れてきました…早速お召し物を御着替えください」
「え~と教会の人が来て、デートようの洋服を用意してくれた、そういう事?」
「左様でございます」
「なななっ、なんで大司教様が此処に…ああっ、最近平凡な日々を送っていて忘れていましたが、セレナ様は普通じゃない方でしたわ」
「バルマン氏と言えば、ドレスの予約が5年先まで埋まっている人気のデザイナーですよね…」
「凄いなぁ~流石はセレナ様だ」
「さぁさぁ、ご婚約者の着替えは私どもの店の者とシスターたちがこちらの部屋で行います、セレナ様は私が行いますのでこちらへどうぞ」
「ありがとう」
デートって結構大がかりなんだな。
服から着替えないといけないのか…やっぱり教会にお願いして良かったな。
「あのセレナ様、なんで大司教様とバルマン氏が此処に来ているのですか?可笑しいですわ、なにかされたのですか?」
「僕、デートとか解らないから、教会に相談したら…こうなった」
「セレナ様、誰にご相談されたのですか?」
「ロマーニっていうおじさん」
「教皇様…じゃないですか?」
「ロザリアはなんでそんなに驚くの? 普通のお爺ちゃんだって…」
「驚かない訳ないだろう! 教皇様だぞ、セレナ様…」
「あのぉ~着付けをしたいのですが宜しいでしょうか?」
「「「あっすいません」」」
「セレナ様もこちらへ」
「うん、色々ありがとう」
「いえ、教皇ロマーニ様よりセレナ様のお召し物の作成の依頼をお受けしました…生きて来て最高の誉でございます…私の最高傑作をご用意いたしました」
「本当にありがとうね」
「光栄でございます」
三人は隣の部屋に行き、僕はこの部屋で、教会が用意してくれたタキシードに着替えさせて貰った。
まさか、この場で寸法まで併せてくれるなんて…凄く親切だな。
◆◆◆
「此処暫く、普通に過ごしていましたから忘れていましたわ。セレナ様は『普通じゃ無かった』のですわ」
「フルール、私もあの無邪気な顔でつい忘れてしまいがちですが、死の国からあの恐ろしい番人に何も言わないで私を連れ戻せるような方でしたね」
「いや、それは解らなくもないが、あの歳でなんで聖教国の大司教を知っているんだ! グレゴール大司教と言えば八大大司教の1人だぞ」
「ハァ~、よく考えたらセレナ様は魔王ルシファードに不死の王スカルキング…そして大賢者メル様もお知り合いでしたわ…それに比べたら大した事あり得ませんわわわわ…何ですの、そのドレスは….」
「確かにとんでもない人物ですねねねねね…それ本物ですか?」
「あはははっ、セレナだったらまぁ…ああああああん? なんだそれは…」
セレナ様が普通でないのは解っていますが、このドレスは可笑しいのですわ。
あり得ませんわ。
「はい、フルール様は薔薇が良く似合うというお話でしたので聖教国の国宝の一つ『砂漠の薔薇』というダイヤを使ったペンダントを用意しました。ドレスは全て天然素材のシルクを使い、今回は同じく国宝の一つ『女神の涙』という真珠を潰して特殊な方法で散りばめました! どうです? 綺麗でしょう? ロザリア様は緑を好んで身に着けていたというお話でしたので聖教国の国宝の一つ『宇宙に煌めく星』というエメラルドのブローチ、お召し物はフルール様の物と同じ素材でお作りしました。そしてエルザ様はその武勇に相応しい『獅子の瞳』という国宝級のルビーのペンダントにお召し物は同じ素材ですが、裾が短めにした物でございます…如何でしょうか?」
「流石にそれは怖くて身に着けられませんわ、もし壊しでもしたらそれ、国王でも弁償出来ない品ですわね」
「流石に怖すぎるから無理ですね」
「私はガサツだから止めて置くよ」
「それは気になさる必要はありません。その宝石にドレスはセレナ様から教会を通したご婚約者様へのプレゼントでございます。すでに所有者は皆さまになっておりますので壊そうが売り払おうが問題はありません」
「あの…本当ですの?」
「信じられないわ…」
「うん、流石のあたいも驚いたよ」
「…セレナ様がお待ちですよ! 寸法の微調整を致しますので、すいませんが急ぎお願いします。
「「「解った(わ)」」」
セレナ様の凄さを…侮っていましたわ。
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