第63話 教会に行ったら


デート…って何をすれば良いんだろう?


う~ん困ったな。


僕はデートなんてした事が無い。


大体、僕はこの世界に来るまで家族としか過ごした事が無いんだ。


どうしようか?


相談をしに近くの教会に来た。


困った時の『イシュタスママ』頼みだ。


「貴方様はセレナ様なのではないですか?」


「確かに僕はセレナですが…それよりお祈りをさせて頂いても構いませんか?」


「勿論、構いません! セレナ様、それでですが、お祈りが終わった後で構いません…少しで良いんでお時間を頂いても宜しいでしょうか?」


「別に構いませんが…どうかしたの?」


「いえ、ととと取り敢えず、ゆっくりとお祈り下さいませ」


なんで僕の顔を見て緊張しているんだ…


まぁ、敵意が無く、寧ろ好意を感じるから、まぁ良いか。


◆◆◆


僕が祈るとすぐに女神像を通してイシュタスママから神託が降りて来た。


「セレナ、久しぶりですね…何か困りごとですか? 私は母ですが、女神なのです!相談は控える様に…」


「あの、デートってどうすれば良いのでしょうか?」


「デートですって…そんなのは解りません!」


イシュタスママは女神だから、何でも知っている筈なのに…


何故だ…


「あの、イシュタスママは女神で…」


「セレナは息子なのですから、もう少し私の事を知るべきです! 私は処女神です! その為、恥ずかしい話ですが貴方の父であるセレスとしかお付き合いは無く、婚姻を結んではいますが、少し事情が違います…」


「それじゃ、他のママやお母さん達は…」


「セレナ、残念ですが…マリアーヌ達は王族なので自由は少なく、静子達もセレスとは再婚で皆さん特殊です…自由にデート等で楽しんだのは婚姻後ですから…聞いても参考にならないと思いますよ!」


「そうですか…」


「セレスに聞いても、恐らくは今の貴方とそう変わらないと思いますよ…」


そうか…そうだよな。


静子母さんもハルカ母さんとも子供の頃からの知り合いだもんな。


「…」


「セレナ、良く聞きなさい! 相手が好きなら、真心を込めて、相手を楽しませる事を考えて行動すれば良いのです!楽しく過ごせる日常…そこに答えがあると思いますよ」


「そうだね、頑張ってみるよ」


「そうね…頑張りなさい」


確かに、ママ達もお母さん達も、こう言う相談は苦手そうだな。


そう言えばゼクトお兄ちゃんはモテそうな気がするけど…相談しようかな…


◆◆◆


『やはり、勇者様じゃないのか? 女神像と話している様に見える』


『私にはそうは見えませんが』


『目を瞑り、あんな長い時間祈っている、あれは会話をしている状態、恐らくセレナ様に神託が降りている筈だ。』


『ああっ、祈っている姿ですら、神々しい…やはりセレナ様は勇者だ』


私はこの瞬間に立ち会えた事を女神イシュタス様に感謝した。



◆◆◆


「お祈りは済みましたかな?」


なんで聖職者がこんな沢山いるんだ?


しかも、このおじさんの着ている服、凄く豪華に見える。


「あの、おじさんは誰ですか?」


「ほっほっほっ、私はロマーニと申します!それで、老い先短いジジイの頼みですじゃ…その『光の翼』を見せてくれんかの?」


「「「「「「「「「「私達にも光の翼を!」」」」」」」」」」


凄い形相で笑いながら言って来る。


「まぁ、別に減るもんじゃ無いし、構わないけど…」


「「「「「「「「「「ありがたや、ありがとうございます」」」」」」」」」」」


そのまま、教会の裏にお爺さん達に案内された。


「さぁ、此処で思う存分、光の翼を見せて下さい!」


しかし、このロマーニというお爺さん元気だな。


なんでこの技人気があるんだろう?


まぁ良いや。


「それじゃやるけど、多分壁とか壊れるよ」


「構いません」


「そう…それじゃ行くよ!これが勇者のみが使える奥義! 光の翼だぁぁぁぁーーー!」


光の鳥が剣先から現れ…壁に飛んでいく。


かなり手加減してうったが、それでも壁もその先の建物も粉砕していた。


「ヤバっ」


これ怒られないよな…


「「「「「「「「「「「勇者様!」」」」」」」」」」」


「いや、僕…勇者じゃないから」


「何故嘘をつくのですか?『これが勇者のみが使える奥義』と言ったじゃないですか?」


まずった…ついゼクトお兄ちゃんの口真似が染みついちゃった。


「それ、只の口癖だから…気にしないで欲しいな」


「嘘です! 光の翼は勇者しか出来ません!」


「ううっ、だけど…本当に、勇者じゃないんだ!」



「なら、何故、光の翼が放てるのですか…」


「それは…」


「皆の者、いい加減にしないか! セレナ様を困らせるでないわーーーっ!」


「「「「「「「「「「ヒィ」」」」」」」」」」


「セレナ様、ご迷惑をおかけいたしました! 引き留めて申し訳ございませんでした! この通り、この教皇ロマーニ頭を下げさせて頂きます! この者達にはきつく言っておきます! ですが、もし宜しければ少しお話でもさせて頂けませんか?」


「あの…僕、急いでいるんで」


「それは申し訳なかった…さぁどうぞ!」


「行って良いんだよね」


「はい、教会はセレナ様の味方です! 困った事があったら何時でも教会までお越しください!勿論、セレナ様の意思は一番に考えます…どうぞ」


「ありがとう」


僕はお礼を言って教会を立ち去った。




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