第57話【閑話】ある司祭の死~死の先にある世界~

とある教会での出来事。


「ハハハッ、俺達勇者に逆らうからこうなるんだぜ!」


「そうだな、この俺の顔の傷を治すのにエリクサールが必要だからこうして頼んだのに逆らうからだな…」


「我々は悪魔には屈しない…確かに我々ではお前には敵わないようだ…」


私の家族も、敬虔なシスターも殺されてしまった。


私の目に映るだけでも30人ではきかない死体がある。


我々は聖職者、女神に仕える存在だ。


我々の女神イシュタス様の教えでは、死後の世界もあり、転生もある。


恐れる事は無い。


死は次の人生の始まりだ。


「ならばエリクサールを渡すのだな…そうすればお前の命は助けてやろう」


「解りました」


私はエリクサールを宝物庫から取り出した。


「さぁ、渡せ」


私はエリクサールを…自分の体へ振りかけた。


「なっ…」


「お前等は勇者等ではない、只の殺戮者だ! 人類の秘宝エリクサールなど渡せるか! 妻や息子、教会や私を信じた者は死に殉じた。私一人おめおめと生き残ってなんになる…ゆくぞ!」


「この勇者の血を引く、俺達に勝てると思うか?」


「確かに勝てないな! だが、今のこの身なりで侮ったなローラン…」


私は素早くローランへと走る。


私のジョブは聖職者の中では変わり種だ。


私は数少ない修道士(モンク)だ。


武器を持たない戦闘、素早さには自信がある。


「貴様…ローランに指一つ触れさせなどはしない」



やはり、マーティンが間に入って来たか。


私は右手で三本の指を立てて中指を鼻に沿うように滑り込ませる。


腐っても勇者を名乗るだけの事はある。


速い。


マーティンの剣が私の腹を斬り内臓がこぼれ落ちた。


「はははっ勇者の剣より速くなど…えっ うがぁぁぁぁぁーーーっ」


「マーティン」


「ハァハァエリクサールを被った分、私の死期は遅れたようだな…家族や仲間の仇だ…お前の目を貰っていくぞ」


私の指はマーティンの眼球を捕らえ抉り取った。


「ははははっ、これでお前は暗い世界で…苦しみながら生きるしかない」


「死ね」


「はははっ、只では死なぬ…」


私は最後の気力で瓶を投げた。


「こんな物…ぎゅぁぁぁぁぁーー」


「ハァハァ塩酸はお好きかな?」


流石に…もう終わりだ。


「貴様、貴様、貴様、貴様ぁぁぁぁぁーーー」


ローランが剣で私を何回も突き刺している。


「はははっ、一人は盲目、一人は酸で顔が焼けている…ハァハァお前等化け物に相応しい姿だ…」


「煩い黙れーーーっ」


「ははははっ」


「黙れーーっ」


「ははははっ、我々は死など恐れぬ…死はハァハァ女神様やその仲間に会い転生する…ハァハァその時間なだけだ…..」


「貴様ぁぁぁぁーーー」


「…」


そう、我々は死の先がある事を知っている。


だから、死など怖くない。







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