第54話 【閑話】動き出す聖教国


「とうとう我々の前に念願の本物の勇者様が現れたのです! さぁこれを見て下さい!」


私は記録水晶で録画した、セレナ様の凛々しき画像を映し出しました。


あの凛々しいお姿、昨日から今日まで寝不足になりながら見てしまいました。


あれこそがこの教皇ロマリスが仕える唯一の方なのです。


我々の心には女神イシュタス様、そしてその伴侶となられた神竜セレス様が居る。


そのお二人だけが心におります。


勇者様はその時代、その時代に現れます。


最後の勇者様はゼクト様ですが、それは我々の勇者様ではなく『あの時代を生きた者達の勇者様』なのです。


どれ程。待ち望んでも決して現れない筈の勇者様。


あの、偽勇者のエドガーに話を聞いた瞬間…驚きが隠せなかった。


『この世界に勇者様が居る』


そんな訳は無い。


女神イシュタス様が『この世にもう勇者は現れない』そう言われてから500年。


現れはしなかった。


全ての勇者絶対主義者にとって地獄の様な日々。


本物が現れないならと、その血筋を引いているからと偽物を崇拝する日々。


だが、それももう終わりだ。


「何ですか教皇様? また新たな勇者一族でも見つけたのですか?」


「まぁ、一人増やしても良いんじゃないですか?」


「馬鹿者めが!あんな偽物等もう要らぬ…見ろと言ったのだ!」


つい大きな声を出してしまった。


私としたことが…


「これを見なさい」




「「「「「「「「「「ひ、光の翼ぁぁぁぁあーー」」」」」」」」」」


流石の十大司教も驚いていおる。


そりゃそうだ…真の勇者様なのだからな。


「教皇様、これは勇者様の画像ですか? まさか、存在したのですか?」


「勇者様勇者様勇者様勇者様勇者様勇者様勇者様勇者様勇者様勇者様勇者様勇者様勇者様勇者様勇者様勇者様」


「本物の勇者様だ、私が生きている間に現れるとは生きてて良かった…」


「見ての通り、本物の勇者様が現れたのだ! コハネは『勇者様の国』これから私は、あの俗物からコハネを取返し、真の勇者セレナに捧げようと思うのだが如何かな?」


「当たり前です! 真の勇者様が生まれた今、あの俗物は不要!」


「こんな事もあろうかと『勇者一族』の不正を今迄記録していました…これを使えば…」


「ふっ、あの者達は偽物の癖に『勇者』の名前を使いやりたい放題。悪事の証拠など幾らでもある…コハネは元は英雄セレス様に我が国が捧げ、そして勇者ゼクト様にセレス様が下賜した国だ…本物が現れた以上、取り上げるべきだ」


「では、これからは勇者様はセレナ様1人、勇者一族は勇者保護法の対象外とし、一般人に落とす…それでよろしいですね」


「セレナ様…その方が我々が仕える勇者様なのですね」


「ええっ、そうですよ! 偶然にもあのセレス様と1文字違い、これは運命なのです!」


「「「「「「「「「「セレナ様こそが運命の勇者」」」」」」」」」」


今現在、聖教国は勇者が長年現れなかった影響からか『勇者絶対主義者』が多数を占めていた。


セレナの為に再び、聖教国が動き出した。








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