第53話 エドガーの暴走


「セレナ様、何でもこのエドガーに申しつけ下さい! 何でもしますからね!」


「セレナ様これは一体どういうことですの?」


「3の勇者エドガーがなんで跪いているんだ!」


「あら?何が起きたっていうんです?」


そりゃ驚くよな…この手のひら返し。


なにか裏があるのか疑ったが、しっかりと心を読み取っても本気のようだ。


心から言っている。


困るな…まぁ取り敢えず…


「エドガーおじさん、この三人は僕の婚約者だから、手を出しちゃ駄目だからね!」


「あはははっ、私がセレナ様の婚約者に手を出す訳ないじゃないですか? 我が主の妻になる方、私が仕えるべき人なのですから...あとおじさんは不要です! エドガーと呼びつけ下さい」


「そう…ですか」


「「「???」」」


まるで別人にしか思えない。


『勇者一族』についても聞いてみたが…


「勇者なんて笑っちまいますよね! 自分も含んで馬鹿ばかり『真の勇者』のセレナ様が居るのに…大体勇者ゼクトの血を引いているなんて言っても、もう何代たっているんだよって感じですね、それに勇者に血筋なんて関係ないのに…アレはアホです!ローランもマーティンも只のアホですな」


そこ迄言うのか…これで嘘が無いんだから…ハァ~


「そうですね…」


もう、何を言って良いのか解らない。


僕の婚約者の迫害に直接関わってなさそうだから、このまま放置する事にした。


「あれ、凄いですわね…悪役令嬢、悪女と言い続けた私にフルール様だなんて」


「あたいもエルザ様なんだ、本当にこそばゆいよ」


「ロザリア様と呼ばれるのも気持ちわるいですね」


「まぁ、本心からみたいだから、放って置こう」


「「「そう(ですわ)(だな)(ね)」」」


しかし、どうしようか?


まさか他の勇者一族もエドガーみたいな奴ばかりじゃないよな?


ちなみにエドガーと呼びつけているのに、凄く喜んでいるし...


◆◆◆


「あのセレナ様、光の翼…あの美しい光の翼を見せてくれませんか?」


「まぁ別に良いけど?」


減るもんじゃ無いし…もう1度見せた後だから、まぁ良いや。


エドガーに請われて最近は良く光の翼を披露している。


「これが勇者のみが使える奥義…光の翼だぁぁぁぁーー」


別にこの掛け声は本当は必要ない。


だけどゼクトお兄ちゃんが、そう叫んでいたから真似ているだけだ。


「いつ見ても素晴らしい…これが見られるなんて、これを見る度に私は自分の思い上がりを感じるのです」


そう言っていつもポロポロと涙を流す。


エドガーを見ていると少しだけゼクトお兄ちゃんに雰囲気が似ている。


まぁ、もう僕たちに悪い事しなさそうだし…良いや。


◆◆◆


「ロマリス教皇様…言った通りでしょう? セレナ様こそが真の勇者です! 我々が何時か会いたいそう焦がれた存在に間違いありません!」


「エドガー、よくぞ知らせてくれました! あの光の翼は『勇者』しか使えず、更にあのゼクト様が好んだ技です!私が見る事が出来るなんて、思いませんでした。私は折角教皇になれたのに、勇者様には会えない!悲しい運命の下に生まれたそう思っていました!だからこそ、勇者ゼクト様の血筋の人間を優遇していたのです! ですが、生まれていたのですね!この時代にもひっそりと『勇者様』が」


「私も見た瞬間目を疑いました! しかもセレナ様は聖女様の中の選ばれた存在しか使えない『パーフェクトヒール』まで使えるのです」


「素晴らしい、あの方こそが私達が真に仕える存在なのです! エドガー、すいませんが本物が現れた以上、勇者一族への特権は取り消させて頂きます!」


「当たり前です!他の人間は解りませんが、私も勇者絶対主義者の端くれ、本物に出会えたのですから解っております! それで例の件は…」


「当たり前じゃないですか! コハネ国は英雄セレス様が過ごしやすい様にと教会がお渡しした土地…そして、天界に行かれるときに親友の勇者ゼクト様に譲ったものです。『勇者の国』そう言われているのですよ!例えゼクト様の血を引いていても『本物の勇者様』が現れたなら返すべき国なのです! 聖教国ガンダルが奪還に手を貸します…揉める事があったら何時でも言って下さね! 戦争も辞しませんから!」


「ありがとうございます」


私は今本物の仕える存在を見つけたのだ。


我が主の為に『コハネ』を…


エドガーの暴走が今始まろうとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る