第52話 VSエドガー 真の勇者様


ヤバい…ヤバい、ヤバい、ヤバい、よりによって俺の利き腕が食い千切られるとは!


なんでこうなるんだ!


俺の腕はそのまま飲み込まれてしまった…これで俺は将来的に片腕決定だ。


可笑しい…この空竜は温厚で扱いやすかった。


一般人にはどうなのか解らないが、少なくとも俺にはそうだった。


何年も騎乗した竜がまさか牙を剥くなんて信じられない。


一体、何が起きたと言うんだ。


今、俺は空竜から逃げている。


「グルルルルルルーーッ」


あの空竜が唸る度に竜が増えている。


今はワイバーン6体に空竜が更に2体…地竜が2体増えた。


もう、終わりが近い。


勇者一族と名乗ってこそいるが、俺達は本当の勇者じゃない。


竜種相手に準備無くして戦う事など出来ない。


竜種10体相手…しかも空と地から攻められたら終わるしかない。


しかも、全ての竜が怒り狂って襲ってくる。


此処で戦っても死ぬしかない。


どうする?


帝都に逃げて擦り付けるか…無理だ。


此奴らは俺にロックオンしている。


「グワァァァァァーーーッ」


不味い、木々を上手く使い逃げてきたが、此処は木々が途切れている。


逃げても無駄だな…


見苦しい死に方はしたく無い。


この俺に惨めな死に方等あり得ない。


「お前が何故俺を裏切ったか解らない…だが、これでも俺は勇者と呼ばれた人間だ…もう逃げない行くぞ!」


残った片腕で剣を抜き…俺は竜達に戦いを挑んだ…


此処が俺の死に場所だ…


「グハッ…ハァハァ」


終わりだ。


「あはははっ、流石に竜には敵わなかったな…」


どうにか向かっていったものの只の地竜の一撃で体の骨はバラバラ…もう立てない。


その状態を見たからか空竜やワイバーンは飛び去っていった。


後は地竜に食われるだけだな。


「嫌だ…死にたくない…死ぬのは怖くないだが…こんな最後は嫌だぁぁぁぁーーーーっ」


「グワァァァーーっ!」


「光の翼ぁぁぁぁーーーーっ」


幻覚が聞こえてきた気がした。


俺を襲おうとした地竜と俺の間に光り輝く鳥が舞っていた。


光の翼は『本物の勇者』のみが使える技だ。


勿論、ローランも使えない。


「ゼクト様…」


死の瞬間、俺の目には子供の頃の勇者ゼクト様が映っていた。


そして俺は気を失った。


◆◆◆


不味いよね。


折角、勇者一族について聞けるチャンスなのに殺しちゃ不味い。


このままじゃ間に合わない。


ごめんよ…


「光の翼ぁぁぁぁーーーーっ」


地竜とエドガーというおじさんの間にゼクトおじさんから教わった光の翼を放った。


「ごめんね、僕の為に怒ってくれていたのに…ありがとう!」


僕が頭を撫でると地竜は嬉しそうに喉をゴロゴロ鳴らした。


「「グワグワ」」


「よしよし、今度何かお礼をするから、もう大丈夫だから」


僕がそう伝えると嬉しそうに首を振りながら去っていった。


問題はこのおじさんだ。


気絶しているし…このままじゃ死んじゃうよ。


ハァ…仕方ない。


「パーフェクトヒール」


千切れた手を含み体が再生されていく。


これでもう大丈夫だな。


「起きて!」


僕はおじさんを蹴飛ばした。


「ゼクト様?!」


「なに寝ぼけているの?」


「えっ、子供…ああっセレナという…あれっ俺はさっき死んだ筈」


「死にかけていたけど、僕が助けてあげたんだ!パーフェクトヒールで!」


「ぱぱぱぱパーフェクトヒール」


「そうだけど?!それが何?」


「あの…さっき光の翼は、もしかして君が放ったの!」


「だから、なに!」


だから、どうしたって言うんだよ、全く。


「あはははっ、セレナ様は『真の勇者様』だったのですね! このエドガー生涯の忠誠を誓います」


「待って…なんでそうなるんだよ!」


訳が解らない。


取り敢えず敵意は無さそうだから…まぁ良い詳しく話を聞こう。








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