第42話 取り敢えず逃げた

「あら? そこに居るのはフルールさんとエルザさんじゃないですか? どうかしましたの?」


「ロザリアさん、セレナ様を離しなさいですわ」


「ロザリア、セレナ様を離せ!」


「あらっ?!なんで離さないといけないんですの? 私は身も心もセレナ様に捧げていますの…何も無い暗黒の世界から助けて頂きましたから当たり前ですね! ねぇセレナ様そうですよね?」


ロザリアは2人に見せつける様に僕にしだれかかっている。


僕に好意があるのは解るが…明らかにこれは揶揄っているみたいだ。


「ロザリアは頭が可笑しいのですわ…セレナ様の一番は私に決まっていますわ」


「フルール?頭可笑しいんじゃないか? セレナ様が好きなのはあたいに決まっているだろう?そうだよな、セレナ様?」


「あら?!焼きもちはみっともなくってよ!どう考えてもセレナ様が困っているじゃない? 好きな人を困らせるなんて駄目な方ですね!焼きもちはみっとも無いですよ!」


「まぁそうですわね…みっとも無いですわね」


「ロザリアーーっフルールーーっ、だから悪役令嬢といか嫌いなんだよ! なぁセレナ様!二人とも物凄ぉぉぉぉーーく性悪が悪いよな? そう思うよな?」


「「セレナ様ぁ」」


「うっ」


不味い…こちらを睨みながらにじり寄ってきた。


これは凄いピンチなんだよな。


この状況…セレスお父さんでも、どうする事も出来ない奴だ。


『仲裁は凄く難しいんだ…もしそういう場面になったら出来たら逃げた方が良いぞ』


そう言っていた。


英雄とまで言われたセレスお父さんは『ごめんね~』といつも空飛んで逃げていたよな…困った。


ゼクトお兄ちゃんは片方を怒らせて良く顔に引っかき傷を作っていたよ…。


あれっ解決法が無いじゃないか。


どうすれば良いんだよ…


「僕にはフルールもエルザもロザリアも凄く綺麗な美人にしか見えないよ…悪役令嬢とか野蛮とか関係ない! そこが凄く魅力的なんだよ…正直いってドストライクで困る位なんだ…」


そう言えばドストライクって何なんだろう?


セレスお父さんが良く、自分の理想そのまんまの女性…そう言っていたけど…良く解らない。


「そうなんですの? セレナ様、凄く嬉しいですわ」


「流石に面と向かって言われると恥ずかしいな」


「ええっロザリアは解ってますよ」


良かった。


これで『危機は去った』


さぁ…


「セレナ様は私達を好きなのは良く解ったのですわ…ですが」


「ああっあたい達が凄く好きなのは解ったよ…だけど」


「良く解りました…それで」


「「「一番は誰(ですの)(なんだ)(ですか)」」」


「それは…」


「「「それはーー」」」


「え~と」


「「「え~と」」」


部屋のドアまで大体3メートル。


流石のエルザでも本気で逃げる僕には追い付けないよな…


「なっ…」


「うふふっセレナ様、逃げようとしているのは解りますわ」


「そうだな…丸わかりだ」


「セレナ様、顔に逃げる…そう出ていますよ?」


ドアの前に立たれてしまった。


仕方ない…


「それじゃ…此処からじゃぁーーねーー」


僕は窓から飛び出して屋根沿いに取り敢えず逃げた。


「セレナ様ぁぁぁ私ですわよねーー」


「あたいだよなぁぁぁーー」


「私ですよねぇぇぇーー」


うん…取り敢えず、今は逃げよう。

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