第41話 バウワーおじさんと脳みそ


「バウワーおじさーーーん」


「なんじゃセレナか…しかし、いつも何処から入ってくるんじゃ」


「う~ん僕も解らない」


此処は冥界じゃ。


儂が許可しなければ竜公ですら勝手に入れない…此処に自由に入って来れるのは、その特性からスカルキングだけじゃ。


なんで入って来れるんじゃろう?


まぁ、儂にとって孫みたいだから良いんじゃが。


「それで、今日はどうしたのじゃ?」


「実は脳味噌が無い状態で生きている子がいるんだけど…その魂や脳味噌はどうなっているのか?教えて貰いたくて」


父親と同じで変な事に巻き込まれておるな…


まぁ、女神と竜公の混ざった子じゃから、心配する必要は無いな。


儂も含んで、セレナの知り合いの数人が手を貸せば…世界が滅びるし…まぁ単独でも国相手に戦える位の力はありそうじゃ。


充分じゃな。


「脳味噌が無い…それなら…肉体的には生きておるが、魂は死んだ状態じゃな…多分、こちらに来ていると思うが…脳味噌だけで来た奴は少ないから、探せばすぐ見つかるはずじゃ…」


「ありがとう、探してみます」


「いや、その話じゃ最近の事じゃろう? なら宛があるから居場所を教えてやろう」


バウワーおじさんにロザリアの魂?の場所を聞いて僕はそこへ向かった。


◆◆◆


これは酷い…体が生きていて脳だけが死ぬとこうなるのか…


脳味噌だけで、まるで虫の様に這いずっている。


ズル…ズル…ズル…


体が無く脳味噌だけが動いていた。


脳味噌だけで生きている。


恐らくこれは地獄なんて比べ物にならないんじゃないか?


目が無ければ鼻も口も無い…手足も無い。


何も見えず、何も臭わず、何も口にしない…そんな状態での生活なんて僕には考えられない。


可哀そうだ…


「ロザリア…君には何も聞こえないかも知れないけど…帰ろう」


「…」


聞こえている訳ないよな。


『体にちゃんと帰してあげるから…安心して』


「…」


ズルズルと這いまわっている。


そうだ…念話なら意思の疎通が出来るかも...


『ロザリア…苦しかっただろう? 僕が助けてあげる…だから帰ろう』


『貴方は誰なのかしら…私は拷問の末…ずうっと何も無いこの世界にいます』


『僕の名前はセレナ…君は体が今無い状態なんだ…脳だけの状態だ』


『そうなのですか…死後の世界かと思っていました』


『確かにそうだけど、体があればしっかりと見えるからね』


『何も無い世界…それが死後の世界じゃ無いのですね…貴方がこの世界から連れ出してくれるのですか?』


『約束する』


『助けて…下さるのですね…ううっありがとうございます』


『助ける、安心して』


『ううっ、ありがとう…本当にありがとうございます…セレナ』


ロザリオの脳味噌はプルプル震えていた。


僕は優しく両手でロザリアの脳味噌を救いあげた。


バウワーおじさんにお礼を言って僕は冥界を後にした。


◆◆◆


冥界から戻ってきたら、深夜だった。


フルールもエルザも寝ている。


ロザリアの体は…まるで人形の様に立ちながら…


「あうあうわぁーー」と片言の言葉を発していた。


隣の部屋にロザリアの体を連れていき竜の爪を出し、ロザリアの眉から上を切断した。


脳が無いせいか…痛くないようだ。


そこに冥界から連れ帰ったロザリアの脳味噌を入れ、蓋をする様に切断した眉から上をピッタリ合わせる。


血だらけなのは気にしない…


寸分狂いなく合わさった状態で…


「パーフェクトヒール」を唱えた。


「あうあうあわぁぁぁーー…あっ見える、見えるわ…ううっあはははっ凄い!見えるし…臭いもある…貴方がセレナ様ですね…ロザリアと申します! 助けて下さってありがとうございます! この御恩は生涯忘れません、身も心も全て捧げて尽くさせて頂きます…ありがとう…ありがとうございます」


そう言いながらロザリアは僕に抱き着いてきた。


僕が抱きしめ返すとより強く抱きしめ返してきた。


「ロザリア」


「「なにやっているのですか?(んだ?)」」


何故だかフルールとエルザが冷たい目で僕とロザリアを睨んでいた。

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