第40話 勇者一族
少しやり過ぎだと思うけど…相手が『殺す』と言ってきたし、明らかに『悪意』を向けて来たから仕方ないよね。
恐らく、僕が気がつかなければ奇襲を仕掛けてきた可能性もあるし…弱ければ僕が殺された可能性が高い。
『逆らったら殺す』そう言うタイプの人間だもん。
そのルールで生きているなら、ルール通り負けたら死ねばいいんだよ。
悪意と明確な『殺す』という言葉。
もし、僕じゃない人間にそれを向ける可能性があるなら…後悔したくないから、僕には殺さないという選択は無いよ。
さてと戻ろうかな。
◆◆◆
宿に戻ってきた。
「あうあうあわぁぁぁああ」
「なぁ、これどうするんだ? なぁセレナなら何か手があるんだろう?」
「大丈夫なのですわ! セレナ様には究極の呪文回復呪文『パーフェクトヒール』があるのですわ」
「それなら大丈夫だな…凄いなセレナ様は」
「あうあうわぁぁぁぁーーあうっ」
流石にこのままじゃ可哀そうだ。
「パーフェクトヒール」
みるみるうちに、髪ごと焼けた顔が再生し、両腕が生えてきた。
陥没した胸も綺麗に修復され…スレンダーでささやかな胸、貧乳気味の凄い美女に戻った。
ピンクブロンドで背がやや低いが等身はそれでも8等身…
これはこれで美人だ…
「さぁロザリア…」
「あうあうわぁぁぁぁぁーーー」
嘘だろう、最強の回復呪文パーフェクトヒールでも治らないなんて。
何故だ…
「鑑定(極)」
こんな可笑しな事は無いから、通常の鑑定を超える『鑑定(極)』を使った。
これは女神であるマリアーヌママから教わった物だ。
名前:ロザリア
LV:0
種族:人間の器 ※脳味噌無し
HP:2
MP:0
状態:脳味噌の大半が無く、特殊な方法で体だけ生きている状態。
※アンデッドでは無く抜け殻に近い。
嘘だろう…
「なんで、治らないんですの…可笑しいですわ」
「死んでなければ何でも治せる、究極の呪文…聖女ですら覚える者は少ない人類最強の呪文の筈だ」
それで合っているけど…僕のはそれすら超える筈だ。
だが、それでも『脳味噌』が無いのはどうしようもない。
脳味噌を補えば…それは別人だ。
「脳味噌が無い…」
「脳味噌が無い…なんて事をしますの…私でもそんな事はしませんわ」
「勇者一族はそこ迄するのか…」
「勇者一族って何者なんだ!」
「勇者一族ってのはですね…」
フルールが話はじめた。
◆◆◆
この世が平和になり、その役目を終えた、神竜セレスとその妻達は女神イシュタスと共にこの世を去りました。
此処先は人間の世界だと…
そして、人間界は残ったコハネの王になった勇者ゼクトとその妻達がおさめました。
尤も、この世界はもう平和な世界…魔族も竜族ももう基本人間とは争わない。
知能の低い低級な魔物や亜竜を除いて…
魔族という敵を失い聖教国と教会の地位は以前より小さくなり、帝国、王国も『戦力』そういう意味での力はほぼ無くなった。
勇者ゼクトやその妻達が生きている頃は良かった。
平和で素晴らしい世界だった。
その次の代も多少は荒れたが、概ね大きな問題は起きなかった。
だが、その次の代からが…違った。
『王族であり勇者の血を引く彼等』は自分達こそが敬われる存在と主張し…その能力の高さから特権階級になった。
そして、コハネに残った者や離れた者がそれぞれの場所で…歪んだ正義の名の元に、その力を振るうようになった。
「こんな感じですわ…本当に頭の可笑しい集団ですわ…確かに私達黒薔薇は『拷問令嬢』として名をはしていましたわ、そこのロザリアさんも同じで『拷問令嬢』とか『悪役令嬢』として有名でしたわね…ですが、それは昔と違って職務に忠実なだけですわ。もし私に咎があるとすれば拷問ですが、それは家を守る為、だれかがしなくてはいけない役目なのです…もし咎があるなら、許可した家ごと罰するのが当たり前の事だと思いますわ、ですが家は全く責めずに私のみが責められ家にお咎めなしでしたわ。…まぁ我が家も『勇者一族』を恐れて私を見捨てましたが…」
「あたいは『勇者病』が元で家から売られたんだ…直接は勇者一族は関わって無いけど…この病の名前と制御こそ出来ないが、勇者一族を超える腕力が目障りになる、そう親が感じたからだよ…酷い話さぁ」
ゼクトお兄ちゃんやリダお姉ちゃんやマリアお姉ちゃんの血を引いている人たちが悪さしている…そういう事?
全く、メルは何をしていたのかな?
どう考えても、本物の賢者なんだから、叩きのめせば良いのに。
だけど、ゼクトお兄ちゃん達の子孫がそんな酷い事しているなら、僕も考えないとね。
「あうあうわぁぁぁぁーーー」
まずはこっちからどうにかしないとな…どうしようか?
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