第38話 落札と勇者一族


オークション会場に来た。


てっきり、沢山の人間が会場に来ている…そう思っていたが、そうではないようだ。


「可笑しいですわね…目玉商品が破格値で出されているオークションなのに、閑散としていますわ」


「ロザリアが銅貨5枚、和名奴隷が銀貨1枚から、話題性から客が居ないのも可笑しいな」


「それにオークマン一族が居ないのも本当に可笑しいですわね」


「フルールは、オークマン一族が居ないかどうかどうして解かるの?」


「オークマン一族は皆背が高く恰幅が良いので一発で解りますわ…まぁ熊の様な…そういう方達ですわね」


「ん、見れば一発で解るよ」


確かにそういう人物は居ないな。


だが、気になる様な存在は数人居る。


オークションよりも会場を気にして見ている。


まぁ、相当弱いから気にする必要は無さそうだけど…


「これからオークションが始まります! 本会場は『訳あり』な奴隷も多く居ますがその分、ご納得頂ければ掘り出し物の奴隷も多数居ます…是非ご入札お願いします」


いよいよオークションが始まる。


しかし…僕は普通に恋愛が出来ないのかな?


フルールもエルザも奴隷だし…


セレスお父さんやゼクトお兄さんも僕に『普通に恋愛した方が良いぞ』そう言っていたけど…『それじゃ普通ってなぁに?』そう聞いたら誰も答えられなかったんだよね。


静子お母さんも他のお母さんママ達も…答えられないし…


正直言えば『全く解らない』まぁ…誰も『普通』が解らないんだから仕方ないよね。


「セレナ様、始まりましたわ」


「あたいが言えた義理じゃないが碌なのいないな」


「確かに…」


う~ん、只のおじさんばかりだ、入札すらされないで終わる事迄ある。


「セレナ様、そろそろですわ」


「どっち?」


「多分、ロザリアの方ですわ」


「多少順番はズレるけど、基本は安い方からだよ…貴族令嬢とかエルフは後半だから…」


だけどロザリアは貴族令嬢じゃ無かったのかな…


僕の勝手な勘違いかな。


その後もおじさんの奴隷ばかりオークションが続いていたけど…


「さぁ、皆さんお待ちかねの『悪役令嬢ロザリア』だーーっ!だれかこの恐ろしい女を殺したい奴はいるか? 勇者一族に嫌われた女だから、殺しても誰も文句言わない奴隷の原則『命の保証は要らないよ、生命保証無し』で銅貨5枚からだ」


『なんだ、あれ化け物か』


『あれは駄目だ…幾ら銅貨5枚でも…要らない』


『なんて物を見せるんだ』


「フルール、あれは本物?」


「見た感じ…本物ですわ」


「酷い…酷すぎるぞ」


体型はスレンダーだから僕の好みじゃない。


髪ごと焼かれた半分の顔…だけど残った半分の顔は凄く綺麗だ。


フルールと年齢は変らない筈なのに10以上下の年齢に見える。


両足はある物の両手が肘から先が無い…そして右胸も陥没している…恐らくえぐりとられたのだろう?


無かった。


「勇者一族ってなに?」


ゼクトお兄ちゃんは多少可笑しな所があるが…良い人だよ…


「昔の勇者パーティーの血を引いていると言われていますわ」


違うよ…ゼクトお兄ちゃん、リダお姉ちゃん、マリアお姉ちゃん…メルもこんな酷い事しないよ…例え相手が悪人でも…


「勇者一族…勇者はこんな事しない…正義感があって優しくて」


「セレナ…それは違う…あたいだって…なぁ」


まぁ今は良いや…


「エルザ、詳しくはあとで聞くよ…銀貨1枚!」


「おっ!ロザリアに恨みがあるのかな? 銀貨1枚出ました…銀貨1枚! 銀貨1枚」


「入札したのか…」


「あれを良く買う気になったな…」


「はい…銀貨1枚でロザリア落札」


奴隷の引き渡しはオークションが終わってかららしい…


『勇者』の名前が出た以上…僕が関わらない訳にいかない。


そのあと、真理という和名の奴隷のオークションも見てみたが…此方はごく普通のお婆ちゃんだった。


しかも髪は赤毛だったから…ただ和名で名前がついているだけの普通の人なのかも知れない。


ちゃんと入札されていたのでそのままスルーした。


勇者一族…ロザリアを引き取ったら…皆に詳しく聞いてみないと…


ゼクトお兄ちゃん達が『酷い事』しているみたいで腹が立つからね…








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