第33話 謎の勇者病② なりそこない


あの後、二人と別れて僕は教会に来ている。


「女神様に1人で祈りたい…そう言う事ですか?」


「はい、色々と人生で考えたい事がありましてお願いできませんか?」


そう言いながら僕は金貨1枚寄進した。


僕はこれでも女神、イシュタスの子供だ。


もし本気で祈れば、神託位は貰える。


だから、他の人がいない方が良い。


それに、人生に困った時に1人一心不乱に祈る。


そういうやり方は女神教の中にあるから、特段可笑しな話ではない。


「それはご立派な考えですな、女神教のご神体はイシュタス様、そして、英雄から神になられた神竜セレス様、お二人とも慈悲深かった…子供からお金はとれません。ですからこれはお返しいたします」


「ありがとうございます」


お父さんもママも慕われているんだな…こうして僕は教会でお祈りをする事にした。


女神像とその横のお父さんの像に拝む事15分、イシュタスママが降臨してくれた。


「今の私は、貴方にしか見えませんし、言葉も周りには聞こえないから安心なさい…ですが母とは言え私は女神…甘やかす事はしませんよ」


「実は、どうしても解らない事があるのでイシュタスママに教えて欲しくて…」


「解らない事? それなりに皆から色々教わった筈ですが…その貴方が解らない事ですか?」


僕は勇者病についてイシュタスママに話した。


「成程、それは恐らく『なりそこない』ですね」


『なりそこない』僕はそんな事は聞いた事が無い。


何だろう。


「『なりそこない』とは何でしょうか?」


「今現在、その世界は凄く平和です。その為この世界に4職は必要ありません。その為、もうその世界には新たな四職(勇者、聖女、剣聖、賢者)は生まれません。しいていうならメルが最後の賢者です」


「それは知っています」


「ですが…ジョブこそ無くなりましたが、恐らく本来なら生まれない筈の有資格者が生まれてしまった。多分、そうだと思います」


「それではどうすれば良いのでしょうか?」


「恐らく、放って置いてもそんなに生まれる者でも無いし、正当なジョブが無いので、常人よりは強い位なので基本放置で構いません」


「ですが、それに該当する女性が僕の花嫁候補なんです…」


「あら、まぁ…そうなの?セレスに言われるから覗く…いえ見守る事が出来ませんでしたが、もしかして他にも居たりしますか」


イシュタスママには話した方が良いだろう。


「その2人です…」


「へぇ~そうね、セレナの思い人なら簡単だわ。貴方の血を飲ませてあげなさい。貴方のお父さんは黄竜セレスなのですから多少は薄まってもそれなりの加護があります。それで、ジョブの代わりには成る筈です。そうねもう一人の子にも分けてあげなさい。老化もある程度止まる筈です」


「ありがとうございます…あと服の問題なのですが、何か良い物は」


「うふふふっセレナ、貴方は竜公に連なる者ですよ、竜化してから鱗を何枚か落としてそれを加工すれば良いじゃないですか?ミスリルより遥かに固い自分の鱗を忘れたのですか?」


確かに言われてみればそうだ。


「確かにそうですね…お手数を掛けました」


「いえ、母として息子に会えるのは嬉しいわ…ですが私は貴方の母ですが女神なのです…今回は顕現しましたが…何時も現れるとは限りません…それでは頑張りなさい」


「イシュタスママ、ありがとう」


「それじゃ…名残惜しいですが、これで」


イシュタスママは光の中に消えて行った。


『なりそこない』か…対処法が解ったから後はやるだけだな。


装備も作らないと、やる事は多いな。

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