第24話 空竜SIDE 畏怖
さっきからやたらと煩い。
俺が眠っている場所には誰にも来てほしくないから、周りにワイバーンを住まわせた。
魔物すら恐れて来ない岩場に俺は座して眠っている。
それなのに…今日はワイバーンがざわついている。
『煩いぞ…静かにしろーーー!』
これで…
静まらない。
何があったんだ…
1羽のワイバーンがこちらに向かってきた。
いつもなら同じ竜種とはいえ雑魚の此奴らが俺の前に来るのは珍しい。
『どうかしたのか! 我は眠いのだ黙れーーーっ』
『お許し下さい…ですが…やんごとなきお方が貴方様の力を欲しております』
『やんごとなき方? 一体誰が来たと言うのだ?』
バウワー様は冥界から動かない。
そう考えたら竜公か?
『それが解らないのです…ただ物凄く優しいのに…怒らせたら殺される…そういう殺気を持っています』
そんな存在を俺は知らない。
俺が会った事無い高位の竜。
恐らく…竜公の誰かに違いない。
俺が竜公の中で会った事があるのは黒竜様と青竜様に数百年前に会っただけだ。
それより…ヤバい。
『それで、お前の言う…やんごとなき方は何と言っておるのだ』
『それが…竜笛で我らを集めまして…人と自分の2人を背に乗せて欲しい...そうで我らでは無理なので空竜様をご紹介しました』
どう考えても可笑しい。
竜公であれば、本来の姿は山並みに大きく、人間の形態でもドラゴンウィングで高速飛行が出来る筈だ。
何がなんだか解らぬ。
しかし、相手が竜公である以上、行かないという選択は無い。
俺は大きく羽を羽ばたかせ空に舞い上がった。
◆◆◆
しかし、どういう事だ?
竜公が何故、空を飛ぶのに誰かの手を借りる?
しかも…人間も背に乗せるだと!
同じ竜であれば、それが如何に特別な事か解る筈だ。
如何に竜公とて…
なんだ、あれは人間のガキに女の2人の人間。
ワイバーンが『やんごとなき方』などというから…急いできたのだが…
たかが人間…人間?
いや、違う…あれは人間じゃない。
俺が竜だからこそ解る…あれには逆らってはならないと。
例え逆鱗に触られようがあれに逆らったら確実に死ぬ。
俺は失礼の無いように首を垂れた。
竜公なのか?
違うかも知れないが…それに匹敵する存在だ。
それもそうだが…それ以外にも俺より強い『竜?』の様な存在の気配も感じる。
「あっ来たよ! 背中に乗せてくれるって、ほら乗ろう」
「くくく空竜?! 大丈夫なのですか?」
『どうぞ私の背中にお乗りください』
傍に居れば解かる…この方は、俺が束になっても敵わない存在なのだと。
「うん、この竜、凄く良い竜で乗せてくれるって…ほら乗ろう?」
思わず、目が合ってしまった…この目、この見た瞬間全てを見透かすような目…凄く優しいようでいて荒々しい。
バウワー様や竜公を思い出す。
竜の支配者の目だ…恐怖と尊敬。
それが一瞬で俺の体を支配する。
「はい…本当に大丈夫ですの?」
「保証するから乗って」
「はい」
俺は『やんごとなき方』に恥をかかせぬように、高速でそれでいて、搭乗者に負担を掛けぬように飛んだ。
竜に生まれて数百年…これ程光栄で…恐怖を感じた事は無い。
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