第20話 最悪この国が無くなるかも


王立学園は馬鹿なのでしょうか?


私はあそこの名前だけですが『名誉理事長』をしています。


その私が推薦した生徒を落としたわけです…


私の顔に泥を塗った事になります。


セレナくんが落とされるのだから、さぞかし優秀な生徒が居るんでしょうね…


久々にテストでもしますか…


私は転移の魔法を使って、王立学園の前にきました。


今頃は皆、授業をしている筈です。


「音声拡大呪文」


『あ~あっ、ご無沙汰しています、大賢者のメルです!私が見ない間にこの学園は随分とレベルが上がったようですね…嬉しい限りです。

私が推薦した生徒を落とすのですから、さぞかし、教師も生徒も優秀なのでしょう? そこで30分後に、この学園に向け大量破爆裂呪文を放ちます…皆さんは頑張って結界を張って下さい…これはあくまでテストです…私の推薦したセレナなら、この位はどうにかする筈です…出来なかった時には入学に不正があったと認めて頂きます」


セレナはセレスの血を引いていますから、この位は簡単に跳ね返す筈です。


それが出来なければ、この学園の生徒はセレナ以下…


完全に不正と扱っていい筈です。


幾ら推薦とはいえ『在籍する生徒より優秀な生徒を故意に落とした』のですから。


取り敢えず、捕まる前に、私は空に逃げますか。


◆◆◆

流石に信じたようですね。


随分と薄い結界ですね…一生懸命重ね掛けしていますが…確実に壊れるでしょう。


魔法を磨いて数百年。


ゼクトが昔、帝国の王城を半壊させましたが…今の私なら王城なんて20個くらい簡単に崩壊させますよ…20個位はーーっ


魔王城を引っ越す時には解体も私手伝いましたから。


そろそろ30分。


いきますか。


「ご都合主義大量破爆裂呪文、人は死なないですが全てが破壊されるバージョンーーー」


私程の魔法使いならこんな事も可能です。


流石にセレナくんの為とは言え『大量殺人』はしたく無いですからね。


◆◆◆


王立魔法学園の上空に巨大な魔方陣が無数に現れてきました。


「一体、我々が何をしたと言うのですかーーーーっ」


「死にたくない、死にたくないんだーーーーっ」


「大賢者様が、人類の守護者メル様が我々を殺そうとするなんて」


「女神イシュタス様…私を救って下さい」


不味いです…あの魔方陣は『大量破爆裂呪文』このままじゃこの学園の者は全員死んでしまう。


私は学園長…皆を守る必要がある。


「それでも学園の者ですか…全員で防御結界呪文を張るのです…これだけの魔法使いが居るのです…重ね掛けすれば…ああっ」


魔方陣から巨大な光の柱が降り注ぐように落ちてくる。


まるで、最後の審判が下されるようだ。


こんな物だれも防げない…


なんで…大賢者様はこんな事を…


ズガガガガガがガガガガ―――ン。


この学園の象徴である中央の塔が崩れ落ちました…その下敷きになり校舎が崩れていきます。


それだけじゃない光の柱はどんどん増えていき、建物という建物が崩れ消滅していく…


「何故じゃぁぁぁぁぁーーーー!」


もう、守る方法はない。


全ての者がこの学園と共に死ぬ。


建物は崩壊して壊れ…それだけで収まらないで光の粒子となり消えて行く。


とうとう人間も光で包まれてきた。


このまま粒子になり、人が形を無くし死んでいく…


すまぬ…何もできなかった。


◆◆◆


「きゃぁぁぁぁーーなんで裸なのよー」


「嘘、結婚するまで肌は誰にも見せない家系なのに…いやぁぁぁぁーー」


「女が全員裸になっているぞ眼福、眼福…」


生きている…生きているが…学園が…校舎が無い。


それ処か…服も何もかも無い。


儂は男で老人だから良い。


だが、此処は上流階級の子息子女…子息はまだしも子女は…


言わなくても解るだろう。


そして…


「うわぁぁぁぁスゲー若くて綺麗な女が真っ裸だぁぁぁ」


「ルル王女まで裸だぁぁぁすげー」


「いやぁぁぁぁーー誰か服、何か羽織る物をいやぁぁぁぁーー」


幾ら泣こうが無理だ。


此処には葉っぱ一つ無い。


全員が裸で街の人間の晒し物になった。


空から、何者かが降りてくる。


あれは…


「大賢者メル様?…久ぶり…なんでこの様な酷い事をするのですか? 幾らメル様でも…」


「学園長…それは貴方達が不正をしたからよ! 優れた才能を持ちながらこの学園への入学を許されなかった人物がいます」


「儂はそんな事は知りません…だからと言って」


「舐められた物ね! 私が保証人になっているのに無視?! 私はこの学園の名誉理事長ですよ…その私が保証人になる程の才能…そして彼の人脈は…まぁ、もうすぐ解ると思います…私はこれで特別に許してあげますが、他の2人の推薦人が何かしても助けませんからね(笑)」


「学園が無くなり…王族や大貴族の子女が恥をかく…これ以上酷い事が起きる訳ありません…メル様、なんで1人の生徒で此処までされるか解りません。私達には大賢者の貴方に対抗は出来ない…ですが…あんまりじゃないか!」


「あんた馬鹿なの? 私が保証人になって入学拒否されたセレナについて解ってないのね…誰が推薦人になっているかすぐに調べなさい」


「ですが…全て無くなっています」


「なら、その担当に聞きなさい…言っておきますが、その推薦状は本物ですからね」


「ハァ~解りました…早急に調べますが…一体なんなのですか?」


「急いだほうが良いですよ…大変な事になるから」


「これ以上、何が大変な事になると言うのです」


「う~ん、最悪この国が無くなるかも…私は間に入らないからね…それじゃ…」


まるで化け物じゃ。


気分一つで学園をこの世から無くすなんて…


だが、誰も対抗できないから…今回も泣き寝入りしかないのか。


ハァ~


取り敢えず王城に連絡して、その後はセレナという人物を担当した人物に話を聞くしかない…な。






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