第19話 偉くない知り合い そして帝国へ


「可笑しいですわね、王立学園は、ちゃんとした推薦状があればまず落ちる筈が無いのですわ…どうしてでしょうか?」


お父さんの知り合いだからって書いて貰ったけど、余り偉く無いのかな?


だけど『王』ってついているし…その側近だから問題はないと思ったんだけどな…


「もしかして、僕が思った程偉く無かったのかな?」


確かにセレス父さんに会うと跪いていたから、偉く無かったか。


失敗したな。


「それしか考えられませんわね…一体誰の推薦を貰ったんですか?」


「え~とね、ルシファードおじさんに、スカルキングのお爺ちゃん…一応『魔王』と『不死の王』とか言っていたし、我が推薦すれば一発だと言っていたんだけど…余り偉くないのかな…あとは保証人にメルの名前は書いたんだけど…お父さんとママ達の名前は書いちゃ駄目って言われたから書かなかったんだ…やっぱり名門校だから両親が居ないと駄目なのかも知れない…」


「魔王ルシファードに不死の王スカルキング…冗談ですわよね…」


「笑っちゃうよね、王様って言っても、お父さんに頭が上がらないみたいだから偉く無かったんだ、失敗しちゃったよ、大体メルも痛そうな感じだったから…そんなに偉く無いのかも」


「メルって…まさか大賢者メル様ですか…生きる伝説の…」


「違う、違う…ナインペタンのロリっ子お姉ちゃんだから別人だと思う、そんな凄い人じゃないと思うよ」


しかし、偉そうにしていたのに、そんなに偉く無かったのか。


本当はしたく無いけど、この世界で知っている人は、後はバウワーおじさん位だし…駄目だ。


推薦人が必要ならもう宛が無いから…王立学園は諦めるしかないな。


「そうですよね…大賢者メル様はかなり昔から行方不明になっている筈ですし…」


「これから僕は、一応メルや皆に報告してくるね…もう王国じゃ学校に行けないみたいだから、ガルバン帝国か聖教国ガンダルに行こうと思うんだけどどうかな?」


「それなら、帝国は実力主義みたいですから帝国が良いと思いますわ…試験に受かれば推薦とか関係ないですから」


「それじゃ、ちょっと出かけてくるね…夕方には帰るから」


「行ってらっしゃい」


しかし…落とされるなんて思わなかったな。


皆、がっかりするだろうな…


「ドラゴンウィング」


皆に報告する為に僕は飛び立った。


【魔国 ダークラシア】


「どうしたセレナ、学園は余が推薦したのだ受かっただろう」


「学園なら儂だけでも充分だ…合格の報告だろう…いや、しかしセレナはセレス様に似て凛々しいのう」


「すいません…駄目でした…ごめんなさい」


推薦してくれたのに『偉くないから落ちました』なんて言えないよな。


選んだのは僕、責めるのは逆恨みだ。


「セレナ…嘘だろう」


「セレナ」


「ご期待に沿えなくて、ごめんなさい」


僕はそのまま魔国を後にした。


【メルの館】


「久しぶり、セレナ、もう少し顔を出して、お姉ちゃん寂しいわ」


笑顔のメルに言いにくいな…


『大丈夫、大丈夫、推薦状なんて無くても、保証人に私の名前書けば落とされる事ないからね…何処の学園も白紙でも受かるから』


そう言っていたのに…『落ちました』とは言いにくいよ。


でも言わないと…


「あの…今日は王立学園の事なんだけど…」


「ああっ受かったからその報告かな?」


「ゴメン…不合格だって」


「不合格だって? 本当に?」


「うん…ごめんね…」


「セレナは悪くないわ、それでセレナはどうするの?」


「王国では入れそうな学園はもう無いから、帝国に行こうと思うんだ」

「そう…王立学園には未練はないのね?」


「落ちたんだから仕方がないよ…」


「そう…頑張ってね」


「うん」


メルだって喜んで保証人になってくれたんだ…責められないよな。


「それじゃ僕行くね、またね」


「うん、またね」


後は教会でイシュタスママにお祈りがてら報告すれば…問題ないよね。


◆◆◆


「おかえりなさい、セレナ様」


「フルール…もう此処でやる事は無いから帝国に行こうか?」


もっと早くに気が付いてあげるべきでしたわ。


幾ら、身なりが良くてお金があっても、この位の子が両親の元に居ないのは訳ありな筈ですわ。


伝手等、ある訳がありませんわよね…


恥をかかせてごめんなさい…ですわ。


「そうですね、何処へでもお供しますわ…それじゃ行きましょうか?」


帝国は実力主義…セレナ様にとってはきっと住みやすい場所ですわ。



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