第14話 フルールSIDE 夢②
目の前に居るのは笑顔が凄く可愛らしい男の子です。
私が思っていたのと全く逆の存在…
この子が天使だと言われても…『そうなのですね』と納得してしまいそうな存在ですわ。
私の前で手早くパンケーキを作り上げ、紅茶を勧めてきましたわ。
お菓子は兎も角、私は紅茶には少し拘りがあります。
「ありがとうございます…これ凄く美味しいですわね」
本当に美味しいですわ…うちに居たベテラン執事を超える位美味しいですわ。
「父さんから教わったんだ、まだまだ父さんには及ばないけど料理も得意だから期待しててね」
セレナ様のお父様は料理人なのでしょうか?
そんな訳ありませんわね、パーフェクトヒールが使えて、それを隠すと言う事は何か訳ありなのでしょう…
それよりも気になるのは…まさか私の食事をセレナ様が作ると言う事なのでしょうか?
私…奴隷ですわよ。
「え~と私ではなくセレナ様が作るのですか?」
「うん、僕は家事が好きだからね」
何だか可笑しすぎますわ…やはりこれは夢なのかも知れませんわ。
夢だと言うなら、それを楽しんだ方が良いですわね。
目が覚めたら…きっと辛い現実が待っています。
「良かったですわ、私料理が凄く苦手でして」
素直にそう伝えましたわ。
「そうなんだ!家事は僕得意だから任せて!だけど、 フルールさんの得意な事とか、好きな事ってなにかな?教えて!」
やはり都合が良すぎます…こんな現実ある訳がありませんわ。
「嘘でなく本当の事を言いますわ! 趣味は拷問 特技も拷問 好きな事は尋問 ですわ! 黒薔薇でしたので…驚かれました?」
「別に驚かないけど、凄いね…所で黒薔薇って何?」
ほらね、拷問好きの私を受ける…これが夢の証拠ですわ。
「黒薔薇って言うのは…代々とある国で『裏をとり仕切っていた存在』なのですわ…だから幼少の時から、ひたすら、拷問や裏での立ち振る舞いを覚えさせられますの、ついていけなければ、場合によっては首チョンパですわね…黒薔薇というのはその国での裏側の地位も現していますの、公爵より上で王族以外、処刑する権限を持っていますわ。ちなみにフルールの名前は歴代の黒薔薇の中で『一番咲き誇った』という方の名前から頂きましたの」
「フルールさんの名前を名乗っていた方が他にも居た…そう言う事ですか?」
「そうですわ! ですが名乗った方は少なく歴史の中でも5人も居なかったと聞いていますわね」
余りにも都合が良すぎます。
「あの…凄く聞きにくい事なんだけど…」
「私が何故廃棄奴隷になっていたかですわね…政略結婚で私コハネの王族に嫁ぎましたのよ…」
夢なのですから、素直に全てを話しましたわ…
「酷い話ですね…」
「貴族に生まれれば、家の為、国の為この位は当たり前ですわ…ですが嫁いだ相手が悪かったのですわ…勇者、英雄の国でしたので」
「僕はフルールさんにこんな事をした相手を許せそうもありません…」
会ったばかりの奴隷の為に怒る美少年…
「セレナ様が怒るような相手ではありませんわ、私の血が入りながら教えてなかったとはいえ、自分の手を汚す事も自ら拷問も出来ないクズですから…それに身の危険を感じましたから、拷問室に連れていかれる前に、屋敷の飲み水全部に毒をいれておきましたの、夫も息子も今頃死んでいますわ…黒薔薇特製、無味無臭の毒で鑑定でも見破られませんから絶対ですわ」
「それじゃ、もう決着がついていますね」
「あら、驚きませんの?」
普通の男の子がこれを聞いて怖くならない訳がありません。
「僕の身内は普段優しい人ばかりなのですが…怒らせると物凄く怖いので…それ位じゃ驚きませんよ…寧ろその位の人じゃないと多分上手くやれません」
「あら…凄く安心しましたわ」
まるで夢の様な時間。
私の全てを受け入れてくれて何処までも優しい少年…
黒薔薇の本能すべてが否定しています。
『こんな現実など無い』
とやはり、これは死にかけた私の夢…恐らく目を覚ましたら辛い現実が待っていて死ぬのですわ。
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