第11話 ヒロインは悪役令嬢?!
「…」
僕は全速力で宿屋まで走った。
状態を見た宿屋の主人が驚いていた。
「面倒事は困るんだが…」
「奴隷として買ったので問題はありません…これ書類です」
「でも、もし死にでもしたら…」
マリアーヌママが言っていた。
大体の困りごとは『お金』でどうにかなると…幾らが妥当かな。
「すみません、迷惑賃です…これでどうか目を瞑って下さい」
そう言い金貨1枚をそっと差し出した。
「そう言う事なら…仕方ない、良いぜ」
本当にそうだった。
「ありがとう」
僕はお礼を言って、部屋に彼女を運んだ。
◆◆◆
ベッドに寝かして改めて見ると…かなり酷い。
だが、僕なら助けられる。
だけど…僕が彼女程の状態の人を治すには制約がついている。
『良い…貴方の能力はこの世の理すらひっくり返す。聖女ですら凌ぐからみだりに使ってはいけない…親友や本当に大切な人にしか使っちゃ駄目…そしてそれは極力秘密にしなさい…』
そう言われた…
彼女はパニクっているのか『助けて』しか通じてこない。
だから、こうするしかない。
「部分ヒール」
部分ヒールを使って、喉と耳だけ回復された。
「僕の名前はセレナ…本当はこんな事したく無いけど…静かに聞いてね」
僕がこう言うと彼女は頷いた。
「僕には君を救う手段がある…だが、これはおいそれとは使えない…こんな時に卑怯だと思うけど、僕は君が気に入った…結婚とか恋人とまでは言わないから付き合ってくれないかな」
流石に結婚しないと助けない…とは言いたく無い。
「貴方…私のこの姿を見て…結婚したい…そう言いますの」
「此処にきて一番の美人だと思う…」
「まぁ良いですわ…見えないから貴方がどんな人か解りませんわね…この状態の私を見て付き合いたいと言うのなら…そうですね…貴方がどんな化け物か…ハァハァ知りませんが…婚姻でも良いですわ…私は曖昧は嫌いですので」
「僕はまだ12歳だから…婚約で良いのかな」
「子供なのですね…まぁ良いですわ…こんな醜い私を何処を気に入ったのか知りませんが…その根性に免じて、命を助けてくれるなら…貴方が悪魔でも…妻になりますわ」
「ありがとう…そしてゴメンね…無茶言って…パーフェクトヒール」
焼けただれた顔がみるみる再生していき、目すら復活する。
そして体中に出来た傷が治っていき…手足がまるで生えていくように再生していく。
これこそが、聖女の中でも選ばれた者しか習得できない『人類最強の回復呪文』死んでさえいなければ、どんな状態でも治し切ると言われるパーフェクトヒールだ。
再生した彼女の姿は…
目はやや釣り目気味で体はまるで雪の様に美しい。
髪は金髪でマリアーヌママみたいだ…
まるで人形の様に整った顔は…見方によっては整いすぎていて冷たく見える。
スタイルは背が高くスラッとしていて、出る所は出ている。
「綺麗だ...」
どの母さんともママともタイプは違う。
だけど…凄く綺麗だ。
「初めまして…旦那様…私は黒薔薇のフルール、貴方様の恩義に応える為に薔薇として生涯の忠誠、愛を誓いますわ…えっ、まさか本当に子供だったの?」
「僕の名前はセレナ…フルールさんこれから宜しくね」
「嘘ですわ…悪魔に魂を売ったつもりが…まるで天使ですわね」
ようやく僕は…自分だけのヒロインを見つける事が出来た。
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