第8話 奴隷商とメルとの出会い


下界にきました。


此処から僕の冒険がはじまるみたいです。


暫くはメルお姉ちゃんの所でお世話になるみたいです。


ですが、その前に僕には行きたい場所があります。


それは憧れの奴隷商。


此処に静子母さんが売られていてセレス父さんが買ったそうです。


静子母さんみたいな美人が売られているなら…見なくちゃね。


◆◆◆


「いらっしゃいませ…何だガキか…ガキが何のようだ」


確かに僕はガキかも知れない。


だけど、お金は持っている。


問題はない筈だよね。


「おじさん…確かに僕はガキだけどお金はちゃんと持っています…ほら…」


特大の収納袋に皆がお金をくれたから…お金は持っています。


全部は見せてはいけないし、無駄使いは駄目だって言われたから、金貨20枚だけ見せました。


「あははっ坊ちゃん、お金持ちだったんですね…奴隷は女、男どんなのをお探しで」


「美人を探しています…」


「ああっ、愛人、愛玩タイプですね…それだとこの辺りですね…どうです美人揃いでしょう」


耳が長いナインペタンしか居ません。


外見で差別はしちゃいけないと思いますが…ママや母さんみたいに綺麗だと思える人はいませんでした。


「子供の僕が言うのは可笑しいかも知れませんが…こういう子供じゃなく、もう少し大人っぽくて美人は居ませんか?」


「え~と…此処に居るのでもかなり年上が居るんだけどな…もしかして25歳よりおばさんが良いんですか? 家事奴隷が欲しいのか…居るけど…」


駄目でした。


お母さん達みたいな美人は誰も居ません。


そりゃそうですね…


そんな簡単に見つかるなら泣きながら送り出すわけありません。


「ありがとうございます…また来ます」


「奴隷は1か月位すれば結構入れ替わるからまた見に来て下さいね」


「はい」


今日はもう遅いから、また違う奴隷商を見て回りますか。


余り遅くなるとメルお姉ちゃんが心配しますから…


◆◆◆


これから、子供がうちに来るのよね。


お母さんの子だから、私の弟になる…流石に数百年離れているのに弟って言われてもね母子どころじゃない位歳が離れているじゃない。


ひ孫より歳の差があるわよ。


ハァ~憂鬱だわ。


1人の方が気ままよ…


大体、ゼクトが死んでから…数百年…幾ら見た目も若く固定してくれても中身はBBAだから枯れているわよ。


そんなBBAに子供の面倒。


孫を愛でる様にしろっていうのかしら。


進路についても相談に乗って欲しいって言うけど…特技も解らない、あった事も無い子をどうしろって言うのよ…


まさか、この私の弟子にでもしろって言うの…


「メルお姉ちゃん、今日からお世話になります…セレナです」


「貴方がセレナくん、私が貴方の姉の大賢者メルです!宜しくね!」


ハァハァ…凄く可愛い…私はゼクトが死んでから『恋』なんてしなかった。


どんな男を見ても心がときめかなかったの…


だけど、これは反則だわ…


ずるい…私が好きだった二人に何処となく似ている。


よく考えたら静子さんの血が入っているならゼクトに似ていても可笑しくはない。


セレスとゼクトを足して、更に気高くするとセレナになる。


しかも12歳だから凄く可愛い。


私は見た目が15歳だから…うん問題ないわ。


絶対にお似合いよ。


「宜しくお願い致します、メルお姉ちゃん」


「いやだな…メルで良いわよ、そうだ今日はセレナくんが来た記念にごちそうを食べに行こうか?」


「メルお姉ちゃん」


「メル…」


「メル、余り無駄使いしちゃ駄目だよ」


「あはははっ大丈夫、私お金持ちだから」


正直言えば、腐る程お金はあるわ。


「そう…だけど、記念って言うなら僕がメルお姉…メルにご飯作ってあげるよ」


「偉いわね…つくれるんだ」


「うん、少しだけだけど」


「あはははっ、私は少しは出来る様になったけど…下手なのよ…それじゃ魔道冷蔵庫にある物自由に使って良いから、何か作ってくれる」


「うん、解った」


そう言えば、外食か下手な自炊ばかりで誰かに食事を作って貰うのは久々だわ。


家政婦とか雇うかどうか考えたんだけど…結局やめたのよね。


なに作ってくれるのかな…


「メル…出来たよ…お口にあうと良いな」


「へぇ~オムライス…あははっハートマーク…うん頂きます…美味しい」


「良かった」


これ…ずるいよ。


「美味しい…凄く美味しいよ…セレナくん…おいしい…」


「メル…なんで泣くの」


「あははっ、これが凄く美味しいからかな」


これはどんなご馳走より私には美味しい…


当たり前だよ…これ『セレスのオムライス』だもん。


「メル…泣かれると困る」


「うん…泣かない…うっうっ」


なんで、そんな所迄同じなの…困ると鼻を掻くしぐさ…まるでゼクトやセレスみたい…二人とも困ると鼻を掻くんだから…


「大丈夫?」


「大丈夫だよ…うん、凄く美味しい…これお代わりお願いしても良いかな」


「うん、材料はあるから大丈夫だよ」


「ありがとう」


目の前に現れた理想の男の子…もうどうして良いか解らないわ。







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