第213話 冥界竜と女神

浮き浮き顔でイシュタス様は消えていった。


流石の俺でも、ほぼ一神教の世界でその女神に逆らう気は全くない。


しかし、女神って気のせいか意外に残念な気がするのは何故だろうか?


だが、この話、もう少し裏がある気がする。


常識人? いや常識竜のバウワー様がこんな理不尽な話を通すとは思えない。


絶対に何か裏がある気がする。


その証拠に、バウワー様はまだ残っている。


考えるんだ…きっと何かある筈だ。



「良かったな、黄竜セレス…これで問題が片付いたぞ…」


今迄の話で、何か良かった事があるのか?


今一解らない。


「なにか、片付いた事がありましたか?」


「ああっ…喜べセレス、これで一番のお前の夢が叶うぞ」


「夢ですか?」


「前に話したであろうが、奥方の寿命の話だ」


◆◆回想◆◆


『多分俺は500年先でもきっと皆を愛していると思います』


『セレス…お前に言っておくが彼女達は500年後は恐らくセレスを愛していない』


そんな訳ないだろう…きっと皆も俺の事を愛してくれている筈だ。


『そんなことは無い…絶対に無い』


『セレス良く聞け…人間は輪廻転生する。未来永劫死なない我々とは違う。近い将来死に、この冥界に来て…そして生まれ変わる。幾ら愛し合っていても来世に記憶は持ち越せない。幾ら私の眷属でも彼女達に干渉出来るのは死んで冥界に居る間だけなんだ…すまないがそれがこの世界の真理だ』


◆◆◆


あれか?


「もしかして、皆の死と輪廻転生の話ですか?」


「そうだ、その解消方法があった…そして解決した」


「どう言う事ですか?」


竜と神の不老不死の構造は違っていて、神の不老不死の多くは神界で暮らしている事に依存しているらしい。


簡単に言うなら『神界では生物にとって時間が物凄くゆっくり進む』…それこそ時が止まっている位ゆるやかな時間が進むそうだ。


「という訳で、我ら竜とは違い神の寿命は正確には『不死に近い位長い』という訳で本当に不死ではなく『不死に思える位永く生きられている』それが正しい」


「成程、それで…どう言う事でしょうか?」



「いいか、セレス…お前の血を飲ませれば、奥方を若返らせる事が出来る、まぁ限界はあるが、そこで若返った奥方と一緒にイシュタスが暮し、持っている神界に移り暮す…それで解決だ…死なない訳じゃないが、ほぼ神達と同じ数千億年の寿命が得られる…どうだこれでほぼ解決だ」


何故…ほぼなんだ。


「それで何処が『ほぼ』なのでしょうか?」


「お前は『本物の不老不死』相手は『不老不死に近い位長生き』いつかは別れが来る…だからほぼだ!」


「成程…」


「しかし竜である私には解らぬな…数百年待てば独り占めできるものを生涯複数で暮す事になるのに…神とはいえ竜ではない…随分愚かな事だ…」


「はははっ、そうですね」


女神イシュタス様は慈悲深い女神として知られている。


案外、こうなるのを知っていて…行った気がする。


「それでな…『偽りの不老不死』にするのは奥方だけだからな」


「当たり前じゃないですか…」


「そうか、それなら良い…お前はお人よしだからな勇者も幼馴染もとか言い出しそうで怖いわ…くれぐれも奥方まで、詳しい話は当事者以外には口外しない等、努々忘れる事無きよう…」


俺は再び世界に戻された。




◆◆◆


私は何時も1人だった。


恐ろしく永い時間1人だった。


だけど、500年待てば、傍にいて貰える旦那さんが現れた。


『嬉しい』


だから、いつも神の権限でいつもセレスを見ていた。


セレスは幾ら見ていても飽きない。


それに永年1人身の私が顔が赤面する位に過激な事をして…


うふふっ500年後を期待して、神力を注いでセクシーな下着やバスルームも制作したわ。


だけど…虚しい。


まだ、500年も待たないといけないの…


それにセレスは、あの子達を本当に愛しているのも解ったわ。


あの子達を失ったセレスは笑顔でいられるのか…


きっと悲しくて、今の優しい笑顔を失うかも知れません。


良く考えたのですが、あの関係…凄く楽しそうですね。


だったら…


『セレスを私が貰う』のではなく『セレスに私を貰って貰って』あの輪に私が加われば良いのです。


私の神界が随分賑やかになりそうですが…1人より絶対楽しそうですね。


しかし…バウワーは本当に狸ですね…


恐らく私の真意を知っていながらあの態度。


本当は全てお見通しの癖に…


竜とは良く解らないものですね。



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