第212話 女神の焼きもち


静子達には後で相談するとして、今はこちらで話を纏めて置く必要がある。


此処には丁度当事者が揃っているから丁度良い。


今は飛竜艇で移動中。


時間はたっぷりとある。


「さっき話した通りなんだが、どうしたら良いと思う?」


「そうですわね、流石に妹が式はあげるのでしたら、第一王女としての面子もありますので私も挙げない訳には行きませんわ」


「そうだな、王国の王女が式を挙げているのに私が式を挙げないのはちょっとまずいかもね」


「私もそうです…元聖女のマリアが挙げるのに、私が挙げないと教会に何か言われそうですね、尤もセレス様に文句なんて言う存在、この世に居ないと思います。私の方で、教会にどう言う形式が正しいのか聞いてみましょうか?」


「「「形式?」」」


どう言う事だ?


「いえ、教会での結婚式の通常の最大の栄誉はロマリス教皇が執り行う物ですが、セレスは最早神なのですから、果たして今迄のやり方で良いのかどうか難しいと思います。ゼクト様の式もそうです…本来はこの世界で一番の貴人であるロマリス教皇が行えば良いのですが、セレス様のご友人となるとセレス様が行った方が格式高い物になります」


結構、大変そうだな。



「確かにそうですわね…この世で一番偉い存在の結婚式、どう行えば宜しいのでしょうか?」


「ただ宣言するだけで良く無いか?」


「フレイ…確かにその通りなのですが…それじゃ絶対に周りが納得しませんよ。大体王族の結婚式でも2週間位はお祭り騒ぎするのですから、それ以下にする事は出来ないんじゃないでしょうか?」


「そうですわね、それに招待客も大変ですわ。世界中の王族、教皇様達は当たり前ですが、セレス様は大魔王を兼ねていますから魔族の実力者…そして竜族…セシリアこれ教会式で大丈夫なのでしょうか?」


「魔族は教会式は不味いかも知れませんね…これはロマリス教皇を通して魔族と話し合いをしないと不味いかも知れません…場合によっては女神イシュタス様に神託を仰ぐ必要があるかも知れません…それに竜族にはイシュタス様より偉大な存在もいますし…どうしたら良いのか」


バウワー様にお伺いをたてる必要があるかも知れないな。


「それじゃ教会関係はセシリアが、王族関係はマリアーヌとフレイに話して貰う…そして俺が竜関係と話し合いをする…そう言う事で良いか?」


「それで良いと思いますわ」


「それしか無さそうだ」


「それが良いと思います…ただ、そこから纏めるには結構な時間が掛かると思いますよ」


「セシリア、結構な時間ってどの位掛かるんだ」


「普通に考えると、王族の婚姻の準備には年という単位で準備します、そう考えたらそれ以上の期間が必要だと思います」


確かにそうだな。


だが、そんなに待たせたらゼクトやリダ達が可愛そうだ。


普通に村で過ごしていたら、とっくに結婚して生活していたんだからな。


『どうする?』


それにこのチャンスを逃して、折角決意したゼクトの気持ちがまた揺らいでも困るしな。


どうすれば良いのか?


俺の前世だと『無宗教』で挙げるという方法があったが、この世界じゃ難しいよな。


そんな事を考えていると…急に頭の中がブラックアウトした。


◆◆◆


「久しいな黄竜セレス」


「お久しぶりですね、セレス様」


またいきなりだ…目の前に居るのは冥界竜バウワー様に…女神イシュタス…様。


「あの、今回は急にどうかされたのですか?」


「いや、今回は私でなくイシュタスがようがあると言うのでな…その…すまぬ」


何故かいつも神々しいバウワー様が何故か弱弱しく見える。


ついでだから、バウワー様に聞いておくか。


「竜族の結婚は…」


「竜は結婚はしない…無限に生きる我々が永遠を誓うなんて凄い苦痛だろう…種族的に無理だな…まぁ気まぐれで多種族と結婚なんて話は聞くが、たかが100年程度、あれは只の戯れだ…好きにして構わない…問題はあっちだ」


女神イシュタス様か。


「本当に酷いですね!500年後とはいえ私は婚約者ですよ!天界から覗いてみたら、あんな事やそんな事、実に羨ま…いえ随分と自由な事をしていますね」


覗かれていたのか…恥ずかしいな。


「なんだかすいません」


「コホン、それは良いのですが! 私の婚約者でもあるセレス様の愛の誓いを私にするのは、そのなんだかムカムカします…それでですね…私決めましたの」


決めましたの?


なぜバウワー様が俺と目を併せない。


そして何故俯くんだ…


「決めましたの?って何をですか?」


「はい、500年繰り上げます、貴方の妻になる頃をです」


「ちょっと待って下さい…せめて100年待って貰えませんか?」


「いえ、こう言う事は善は急げと申すじゃないですか? だからもう神託を降ろしました」


「神託?」


「はい、教会に正式にセレス様を私の夫にするという神託ですよ! 勿論、他の方たちとの婚姻も認めて祝福する旨も伝えて置きましたよ」


「そんな、なんで待ってくれなかったのですか」


「だってイチャつく姿を見て腹がたったんだもん」


『だもん』


これはもう腹を括るしか無いな。


ゼクトも腹を括ったんだ、俺も…


「それでね、勇者との合同結婚式には私もセレス様の花嫁として参列しますので…その不束者ですが宜しくお願い致します」


「え~と」


「私を見ても無駄だぞ…」


「はい」


500年待ってくれると言っていたのに…


バウワー様で無理なら…もう受け入れるしかないな。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る