第211話 バカンスの終わり

流石に遊びすぎだろう。


そう思う反面、もうやることはほぼ、何も無い。


世界は平和だし、コハネの政治は代官が全部やってくれている。


今迄苦労した分、これからはゆっくりしたい。


そう思っていたが…このゆっくりは違う。


『どう違う』そう聞かれても正直困る。


お金は幾らでもあるし権力もある。


誰もが俺を見て幸せそうと言うだろうが…


俺にとっての幸せは違う。


此処迄お金も権力も要らない。


畑でも耕して…大好きな嫁さんと子供でも作って普通に暮らす。


ジムナ村での夫婦の暮らし。


あれが理想だ。


だが、今更それを思っても仕方ない。


過去は変えられないのだから…


流石にゆっくりしすぎていた気がする。


そろそろ帰らないといい加減不味いな。


帰ったあとの静子達の顔が般若になってないと良いんだけどな。


まぁ、諦めが肝心だ。


◆◆◆


ホテルの受付に手紙が幾つか届いていた。


通信水晶を使わないで手紙と言うのは、まぁ気を使っての事だろう。


1通は魔王ルシファードからで、ゼクトを四天王にスカウトしたそうだ。


だが…なんでコハネに魔王が居るんだ?


俺が大魔王を引き受ける時に、魔国に帰る約束したはずだが…なんでいるんだ?


魔王とは言え一国の王が国から離れていて良いのかよ。


尤も魔王は強いし、勇者や教会も魔族と戦ってない世界。


世の中が平和だから…問題は無いのか。


ゼクトからは手紙が2通届いていた。


内容は、まぁ彼奴らしい。


『コハネに来たから酒を飲もう』


もう一通は…


『責任を取って嫁さんに貰う事になった』


そういう内容だった。


リダ達幼馴染3人にマリン王女…そして俺の知らない1人ルナと言う少女、合計5人…全員娶るのか。


本来あるべき姿に納まった。


そう言う事だな。


もし、ゼクトが魔王を倒した場合は。


正室としてマリン王女を娶り、側室にリダ、マリア、メルを迎えるのが一般的だから元鞘に納まっただけだ。


そこにルナという少女が加わった、そういう事だ。


彼奴も腹を括ったんだな。


良い事だ。


元々、あの三人はゼクトの恋人だったし、ほぼ肉体関係があった。


勿論、勇者だから最後の一線は越えてないが…あれが純潔とは言えない気がする。


簡単に言うなら『最後の一線』以外はかなり過激な事をしていた。


しかも、ゼクトは女癖が悪く、俺にマウント取りたいから見せつけてきた。


なにしろ、ドアを開けた状態で裸の三人を侍らせながら、近くを通過している俺と目が合うとVサインをしてきたんだぜ。


他の二人は兎も角、リダは俺の親友だ。


男女の関係でなく親友。


魚釣りやカブトムシを取るのが好きな『少年』の様な少女、それが性的な事をしている…凄く気まずかった。


正直言えば、ゼクトが三人を置いて出て行った時、俺は困っていた。


幼馴染、義理の娘としか思えないし…どうして良いか…


正直言わして貰えればこの三人は『ゼクトが貰わない』と落ち着き先が無い。


ゼクトとイチャついているのは、あちこちで知られている。


流石に、この状態では良い縁談は無い可能性が高いよな。


最悪、俺の義理の娘として、生涯手元に置いて行くつもりでいた。


『良かった、本当に良かった…』


心からそう思った。


静子が代表して纏めて手紙にしてきていた。


内容はほぼ、ゼクトと被っている。


ゼクトがしっかりと結婚するなら、俺もしっかりとけじめをつけるべきだ。


一応、俺はギルド婚として結婚をしているが、教会を通した結婚はしていない。


ゼクトは勇者だしマリアは聖女。


教会で式を挙げないという選択は無い。


それにマリアーヌは第一王女、マリンは第二王女。


第二王女が式を挙げるのに第一王女のマリアーヌが式を挙げないのは可笑しい。


『俺達も式を挙げるかどうか…早急に皆で話し合わないと…』


◆◆◆


「皆、今日一日思いっきり楽しんだら、明日には此処を出ようと思う」


俺は皆に事情について話した。










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