第206話 ゼクトSIDE 優しいだけじゃない駄目な人間もいる
「ううっ臭くて汚い、なんで僕がこんな事しなくちゃいけないんだよ」
「それはお前が逃げたからだ!逃げなければ今日は酒場の手伝いをするつもりだったんだよ」
此奴の良い所は『文句を言いながらも手を動かしている』事だ。
簡単に言うとブーたれながらも、仕事はしっかりしている。
尤も、このヤル気の無い態度でかなり損しているがな。
「だけど、これは無いよ? 僕はこれでも女の子なんだよ? なんでこんな仕事させるのさ」
「それは、お前が実に女らしくないからだ! マリアやメルもそうだが、女子力ゼロだろう…容姿という意味じゃ無くて家事一式まともに出来ないだろう?」
「ううっ、だけど仕方が無いじゃないか? 勇者パーティだったんだから」
それは過去の事だろう。
「あのよぉ、それは昔の事だろう! それに今はお前の傍に料理が得意なハルカさんがいるだろう?教われば良いじゃないか?」
「お母さんは駄目だよ!カズマ父さん程じゃ無いけど料理になると鬼になるから…」
「そうか? なら、俺の母さんやミサキさんやサヨさんから教わればよいだろう? 時間は幾らでもあるんだからな」
「でも…」
相変わらずヤル気が無いんだな。
「あのよ…確かに俺達は勇者パーティとして活動していたから『学ぶ時間』は無かったよな? だが今は幾らでも時間はある…それに俺の今の仲間のマリン王女やルナでも炊き出し用のスープ位作れるんだぜ! 何もした事無い王女や奴隷でも作れるようになったんだ。 リダが出来ない訳ないだろう?」
「あはははっ家事苦手だから…」
「それなら肉体労働一択だな! 数字や物書きが嫌いなお前にはそれしか無いだろう?」
「僕はこれでも女の子だよ!酷くない?!」
何を言っているんだ此奴。
家事や料理…女を捨てている癖に良く言うな。
「世の中は平和になっても俺に勇者のジョブがある様にリダには剣聖のジョブがある…お前はその辺りの筋肉だるまの親父より遥かに力があるし疲れない! 望むならどんな力仕事でも男以上に出来るだろう」
「ううっそうだね」
これでもう逃げ場はないだろう。
「それにやりたい事が無いなら、今から探せば良いんだ!セレスは暫く戻ってこないみたいだから、仕方が無いからお前の『やりたい事探し』付き合ってやるよ」
「それって、今日みたいに仕事に付き合ってくれるという事?」
「そう言う事だな」
「あはははっ自分で探すから良い…」
「探せなかったから、今の状態なんだろうが!お前に拒否権なんて無い」
「そんな横暴な話…酷いよ!横暴だよ!ゼクト」
「横暴で結構だよ! セレスが戻る迄付き合ってやるから頑張ろうぜ」
セレスは本当に優しい。
彼奴を追放した俺にすら優しいんだから筋金入りだ。
だが、それじゃ駄目な人間は沢山いる。
その一人がリダだ。
「えっ、良いよ」
「どうやらもうすぐ終わりそうだな…それじゃ明日、もう今日か?も迎えにいくから頑張ろうな」
「…良いよ…解ったよ」
死んだ様な目のリダを無視して俺は作業を続けた。
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