第198話 ゼクトSIDE 俺はそんなに悪いのか?
母さんは行ってしまった。
マリンとルナは別室だ。
誰も居ないこの部屋で2時間待て。
そう言う事だよな。
ハァ~気が重い。
しかし、これでも最低限の温情はあるみたいだな。
その証拠に此処は一応客間みたいだし…
テーブルにはお茶が入ったポットがあった。
そして横にはクッキーがあった。
『美味いな』
大して豪華じゃない。
小麦粉とバターと卵と砂糖だけのクッキー。
田舎ならではの素朴な味。
母さんの味だな…尤もミサキさんもハルカさんもサヨさんも同じ物を作れるから正確には解らない。
村の味。
それが正しい。
普通に働いて。
偶に贅沢な物を仲間と食べる…
家は普通で良い。
それだけで本当に幸せなんだよな。
これを食べると思い出す。
『村での生活は幸せ』だった。
今、俺は家族とも言えるマリンとルナが居る。
今更、俺があの三人と会ってどうするんだよ?
俺が捨てた人間と拾った人間…
今更俺が来るべきじゃ無かったのか?
まぁ良い…罪は償わないとな。
『罪?』
俺は一体何をしたんだ?
竜と戦った時、負けたけど俺は不機嫌な態度をとったけど誰も責めてないよな。
『それでな…まだ、俺はパーティリーダーだ、俺がパーティリーダーであるうちに一つだけ命令を下す事にした…マリア、リダ、メル3人をこのパーティから近く追放する!この間の竜との戦いで思ったんだよ…お前達は女の子だったんだってな、小さい頃は泣き虫で俺やセレスが何時も助けてやっていたよな…この間、泣いていた三人の顔はその時と同じだった…もう戦うのを辞めた方が良い…村に帰っても良いし、セレスの元に行くのも良い』
そこから俺はセレスがしてくれた事を感じて三人を幸せにするために模索していた。
そして俺は教皇様にお願いをして、勇者を辞めて三職の解任も認めて貰った。
その代り、この世界の平和は『セレスに押し付けた』
此処迄は『セレスに悪い事をした』が俺は三人には『良い奴』だった筈だ。
『戦いたくない』その願いを叶える為に不器用ながら頑張った筈だ。
その結果、三職の解任も勝ち取った。
だが、セレスだけはパーティに残る形になり、そのまま責任を押し付けた形になったんだよな。
勇者パーティが無くなり…俺達4人は逃げるように村に向かった。
戦う事が嫌いになった三人と村で一からやり直そうとして…
S級冒険者の義務で騙されてマモンと戦い敗北…
そして、怪我を治す為にセシリア様と取り引きしセレスとくっける作戦の手伝い。
4人して義父さん呼ばわりしたな。
セレスは母さんの夫だから俺にとって『義父さん』と言うのは間違いない。
結局、その後色々あってセレスが俺達に必要…そう考えて4人で勧誘。
セレスは世界的に重要人物になりマリアーヌ様に怒られた。
そして困った俺は…セレスに話をして…
『あのさぁ、マモンからも俺は助けたよな? しかもゼクト達はもう勇者じゃない…これからは自由に暮らせるんだ…自由は良いぞ』
『俺はもう必要ないだろう? S級冒険者が4人も居るんだ、金なんて幾らでも稼げるし…魔王とは戦わないし、旅を続けないんだから…従者を雇えば良いだけじゃないか? それに大好きな者同士一緒に居られて幸せだろう』
『なぁ、ゼクト…お前は三人が好きなんだよな…なら責任もって養えば良いんだよ! オークマンを見ろよ10人近い妻を持ち、沢山のガキを養っているんだぞ、冒険者のクラスはお前より遥かに下だ』
一夫多妻はもうできない。
それを伝えたが…
『ゼクトそれは間違いだ、勉強しておけ『勇者パーティに1回でも所属すれば』だ、その証拠に前の勇者パーティで一時、荷物運びをしていたオークマンが多数の妻も持っているし、魔法戦士の俺も『英雄』になる前に静子さん達4人を妻にしている…だからゼクト大丈夫だ…もし駄目なら俺がどうにかしてやる』
『良かったじゃないか? ようやく一線を越えられるんだ、さっさと童貞を捨てて、オークマンみたいに子供を沢山作ってしまえ』
そういうセレスに…
『だからー-っ! セレスお前は勘違いしているが、俺は三人を愛して等いない…そうかセレスは戻らないし…此奴らは足で纏いだ』
『セレスが手に入らないなら此奴らは要らない…此処迄は『情』で手元に置いていたが、最早パーティメンバーでも無い…それじゃセレス…お前に任せた…此奴らは置いて』
そう逃げようとしたんだ。
だが逃げられずに捕まった。
『なぁ、セレス…三人が好きなのは俺じゃない、お前だ!』
『流石にゼクト引くぞ…そんな嘘をつくなよ! 言いたくは無いが俺を追い出してまで欲しかったハーレムだろうが…今なら4人で楽しく過ごせるんだぞ…いい加減にしろ!』
『本当だって! 嘘だと思うなら三人に聞いてみろよ!』
『三人ともゼクトはこう言っているが嘘だよな…』
三人は考えるように黙っていてその後に
『私に必要なのはセレスだ…本当は恋人になりたいが、お義父さんで構わない…傍に居させて貰えないだろうか?』
『私も恋人が良いけど、駄目ならパパで良いから傍に居させて…確か勇者の一夫多妻は近親OKな筈だから母娘でも良い筈よ』
『セレス…酷い事言ってゴメン…私も真実の愛に気がついたの…駄目かな』
そうだよ…ちゃんと三人は考えた末、俺よりセレスを選んだんだ。
そして、三人と母さん達が揉め始めた。
結局…
俺は母さんにビンタされ顔を腫らした。
『ハァハァゼクト…貴方は本当にセクトールそっくりだわ…安易に女の子の事考えて…自分の事ばかり、もう良い、本当に我が息子ながら情けないわね、貴方はもう自由に暮らしなさい! その代わりもう縁を切らせて貰います、これで良いわよね?』
『ああっ…それで良い、そんな足手纏いはもう要らない…これでも此処迄は俺なりに頑張ってきたんだ、ちゃんと面倒も見てきたんだ…もう許して欲しい』
『あんた、まだそんな事を…』
『ちょっと待って…リダ、あんたはそれで良いの?』
『私はもう戦いたくないよ…ゼクトがどうこうじゃなくて…もう嫌なんだ』
『マリア、貴方も良いの?』
『メル、貴方もそうなのね…』
『『…』』
『はぁ~もう良いわ、静子、悪いのはゼクトくんだけじゃないわ、うちのマリアも悪いのよ、縁切りはやめてあげて』
『そこ迄する必要は無いわ…結局はうちのメルと縁が無かったそれだけよ…それじゃ、今までありがとうねゼクトさん』
『皆がそれで良いっていうなら解ったわ…ゼクト、絶縁は取り消すわ…皆が良いって言うならもうこれで良い…自由にしなさい! ただ貴方が手放した者の大きさをいつか知る時がくるわ、その時貴方はきっと後悔する…さぁ出て行きなさい!』
『母さん…』
『ゼクト…』
『世話になったなセレス…じゃぁな』
『ゼクト…いつかまた酒でも飲もうぜ…』
そう俺の背中を見送ったセレスに…
俺はたしか、右手を挙げてヒラヒラして去った。
これで間違いは無い。
◆◆◆
これって俺…そんなに悪いのか?
確かにセレスには悪い事したよ?
沢山の面倒事を押し付けて尻を拭いて貰った。
だが…今考えて見ると…幼馴染3人に俺は何か悪い事をしたのか?
確かに『戦って敗北』した。
だが、よく考えて見たら…確かにセレスが手を打って置いてくれていたからだけど…俺リダやマリアやメルが戦わないで済むように頑張っていたよな。
まぁ俺が悪いのだけど、3人の心が折れて、その結果3人の心が俺から離れていた。
少なくとも母さんやセレスに会った時は…リダやマリアやメルは完全に俺から心は離れていた筈だ。
確かに俺はムキになって辛辣な事を言っていたし『言い方が悪かった』がそれだけだよな?
『俺から心が離れセレスを好きになった3人』を置いていっただけだ。
だが…今思えば言い方が辛辣だったから、それを伝えられなかっただけだ。
そう考えたら俺は『セレス以外』には酷い事してない気がするのは気のせいか?
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