第197話 母子(おやこ)
「ゼクト、良く私の前に顔を出せたわね! 確かに温情で絶縁はしなかったけど?! なにかようなのかな? 無責任に全てをセレスくんに押し付けて逃げるように去っていったわよね?なんで来たのか…ちゃんと話してくれるかしら?」
母さんが怖い。
ハルカさんやミサキさん、サヨさんは追い出されている。
そして、俺の連れのマリンとルナも外に出された。
「母子の会話があるから席を外してくれないかしら?」
本気で怒った母さんの前では…誰もが静かに退場していった。
しまったな。
まさか、一番最初に母さん達に会うと思わなかった。
俺はセレスにあって今迄の事を詫び、力になれる事を聞き。それから三人の幼馴染に詫びを入れ…その結果を母さん達に報告…そういう手順を踏むつもりだった。
だが、完全に破綻した。
コハネに入って運悪く一番最初に会ったのが『母さん達』だった。
人払いをした母さん。
これが一番怖い。
母さんは結構古風で人をたてる人間だった…
尤も前回はそんな母さんが人前で怒り、絶縁とまで言った。
母さんの友達が俺を庇ってくれたから…絶縁には成らなかったが…
『皆がそれで良いっていうなら解ったわ…ゼクト、絶縁は取り消すわ…皆が良いって言うならもうこれで良い…自由にしなさい! ただ貴方が手放した者の大きさをいつか知る時がくるわ、その時貴方はきっと後悔する…さぁ出て行きなさい!』
これを聞き、俺は結局…逃げるようにして母さんに答えないで...
『世話になったなセレス…じゃぁな』
逃げるようにその場から立ち去った。
後悔はしていない。
だが、自分が如何に無責任な人間かに気がついて…悔い改めた。
すこしは真面な人間になった。
今の俺はそう言える。
だが、俺は…此処では今も最低な男だ。
ハーレム欲しさに親友をパーティから追い出し…その上で親友に恋人とも言える幼馴染を押し付けて逃げた。
『他で幾ら活躍しても…此処では俺はまだ最低な男だ』
「…母さん」
「一体、何しに来たのかしら? ゼクト! 此処には何もようは無いんじゃない? セレスくんは今は旅行で居ないけど! 何かようなのかしら? また問題を起こして助けて貰いに来たのかな?」
「…違う」
「そう…何が違うの? 此処に居る人間はもう、誰もゼクトに縁は無いわ!リダちゃんもマリアちゃんもメルちゃんを捨てて逃げた癖にマリン王女とは一緒に居るのね? しかももう一人可愛い女の子まで連れて…ねぇどんな気持ちかしら? 幼馴染全員を欲しがった癖に全員を捨てて、王女を取った人間…ねぇゼクト…そんな場所に何をしに来たの? 理由を聞かせてくれないかしら?」
「俺は…償いの為に此処に来た。今やセレスは神竜と呼ばれ、もう俺の力なんて必要ない…それは解っているさ…だが、栄達よりも平凡な幸せを望む彼奴にとって、それは幸せじゃない…そう思った…だから、俺でも何か助ける事が出来ないか…その為に来たんだ。 それに俺はセレスと酒を飲む約束をしたんだ…だから約束の為に…此処に」
「そう? だけどセレスくんは今旅行で此処にはいないわ。戻って来てからの話になるわね…少しは真面になった。それは解るわ。問題は三人。リダちゃんやマリアちゃん、メルちゃんはどうするの? 謝るのは当たり前だわ…どう償うか教えてくれるかしら?」
「…考えてない…謝ってから」
「呆れて何も言えないわね…謝罪をするつもりなのに、どうするか決めていないの…この場所に暫く居て良いから、どうするかちゃんと決めなさいよ…そうね2時間あげるわ…2時間経ったらリダちゃん達を連れてくるから、皆が納得する謝罪をしなさい…良いわね」
「解ったよ」
あと2時間…それでどう償うか決めなくてはならないのか…
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