第196話 【閑話】魔王の憂鬱 王子?
「誰か良い相手は居ないのか? これだけ居るのに、どうする事も出来ぬのか」
「魔王様…どうやらセレス様はこれ以上、妻を増やしたくない様子です…下手に割り込ませると、今いる奥方様の反発を買い…事体が悪くなる可能性もありますぞ」
そんな事は余も解っておる。
だが魔国だけが、セレス様の妻を送り込めていない。
これは、色々と不味い。
少しでも立場をよくするために…どうにかせねばならぬ。
本来なら魔族には恋愛上位者の『サキュバス』に『バンパイア』がおるが黄竜のセレス様にその色香はきかない。
ならば天使の様に美しいと言われる…遠くには堕天使の血を引く翼の一族がおる。
だが、フェザーで誘惑を試みたが撃沈。
最早カードは無くなった。
幾ら調べても『年増』が好き…それしか情報は無い。
魔族の女性は力のある者の多くは見栄えは兎も角『年増』だ。
だが、どうもうまくいかない。
確かにあれ程多くの妻がいるのだ…もう充分かも知れない。
しかも、セレス様の妻は凄く気が強く、一部尻に敷かれている。
そう見える時がある。
勇者を超え、あのマモンすら葬った…凄い男。
軍神になったマモン、アークスとさえ戦い抜いて、敵ながらスカルキングは神とし崇拝し…マモンを殺した存在なのにゴルバを含むマモン軍団は尊敬の念を抱いている。
そしてその正体は神に等しい力を持つ神竜。
その中でもかなりの実力者だ。
あの冥界竜バウワー様の眷属…
もう手が付けられない。
魔族全員…いや魔族と人間全員が徒党を組んで挑んでも勝てない存在…はやく取り入らなければ…まずい。
余が魔王である事が恨めしい。
人間の国の王は…嫁を送りこむ事に成功している。
セレス様は優しく温和な人物だが…余はそれでもより確かな絆とでも言える物が欲しいのだ。
◆◆◆
そんな、ある日の事だ。
あの勇者ゼクトがこのコハネに来た。
これは僥倖だ。
運が良かった。
余は魔国からダークコルダーやフェザー達を伴いコハネに居る魔族の元に遊びに来ていた。
魔族である我々の仲間はコハネの外の部分で暮らしていたからこその出会いだ。
勇者であるゼクト殿はセレス様の『親友』だ。
それは…あそこ迄破天荒な事をしても…許している事でも解る。
そして、どうやら信頼もあるようだ。
フェザーとスカルキングから念話で報告を受けていたが、敢えてダークコルダーと共に…今気がついた振りをして挨拶をした。
そして、そのまま取り込む為に四天王に招いた。
◆◆◆
「すまぬな、ゾルバ勝手に話を進めてしまった」
「顔をあげてくれ、気にしないで良いから…四天王なんて肩書きは今は只の名誉職…マモン様が去り、ゴルバ様が死んだから俺が引き受けているだけだ」
もう人族との戦いも終わり事実上、名前ばかりの幹部だ。
余は魔王だが、今の余はもう人間の王と変わりない。
人族との戦いが終わり…平和になったこの世界じゃ…ただの権力者にすぎぬ。
名目上とはいえ、大魔王にはセレス様になって貰っているから…代官みたいなものじゃな。
最近では、体を動かし家庭菜園を楽しんでおる。
それはさておき…
「そう言って貰えると助かるのう…魔国だけがセレス様に嫁を嫁がせておらぬから…絆を深める為に取り込もうと思っておる」
「それで良いと思う…『魔族は力が全て』そう考えたら、勇者ゼクトが強いのか? そういう疑問はあるが、旧マモン軍団はマモン様を失い、ゴルバ様も失った…最早かっての力は無い。それにもう我らが戦う事ももうないだろう…そう考えたら、四天王の地位にもう意味は無い。『魔族は力が全て』はもう実質おわりだ。その力を使う事も無い…それに勇者ゼクトはセレス様の親友と聞く。我が軍団はセレス様に心酔している者が多いから…それも良いんじゃないか?」
「良いでしょうか?」
「どうしたのだ…フェザー」
「そもそも、四天王に拘る必要は無いのでは無いですか?魔王様の片腕、軍事参謀とか人間は早くに亡くなるから養子にしてプリンス(王子)でも良いんじゃないですか? 精々80年しか生きられないから生涯王子のままで終わりますから」
「確かに新たな地位を用意するのも一つの手じゃな…」
「人間と友好的なこの世界…それもありです…魔王様」
「我らに比べれば短命…それも良いかもしれぬ」
結局話し合いの末…場合によっては四天王でなく魔国の王子として迎えるという別案も検討…そう言う事で話し合いは終わった。
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