第195話 【閑話】勇者ゼクトのやり直し⑱ 勧誘


「しかし、平和だな」


「平和ですね」


「平和…」


セレスの影響で今は魔族との争いは無い。


街道を護衛無くして歩いても、襲われない。


魔物と目が合ってもお互いに会釈をして立ち去る状態。


こんなのは、例え勇者が魔王を倒しても起きなかった筈だ。


この世界を本物の平和な世界に変えたのは…俺の親友セレスだ。


『勇者』なんて要らない世界。


それは幸せな世界だが…少し寂しくもある。


◆◆◆


なんて思っていたんだが…なんだこれ?


セレスが住むと言うコハネ近くに来たんだが…


なんてカオスなんだよ…あそこに居るのは四天王が1人『不死の王 スカルキング』だ…


「お気をつけてお出かけ下さい…」


「スカルキングさんも何時もご苦労様ね…お陰様で安心して暮らせるわ」


「我らが主にして神であるセレス様の民…困った事があったらなんなりと…いってくださいね」


スカルキングの死の軍団…無数のスケルトンがにこやかに街人へ手を振っている。


出会った者には死しかない…死の軍団。


幾人もの騎士や聖騎士が挑めども全員葬られた…あの最強最悪の不死の軍団が…あれか?


「ゼクト様…あれ」


「あれ…」


「ルナは知らないだろう? 確かにあれは四天王スカルキングが率いる死の軍団だ…それにあれは」


空に居るのはたしか魔族の幹部『空のシルフィード』の片腕確かフェザーだ。


沢山の翼の軍団を率いて空を飛んでいる。


まさか…セレスに何かあり、魔族に此処が落とされたのか…


「お前は勇者…ゼクトでは無いか?」


「なぬ..ゼクトだと!」


振りむいた先に居たのは…


嘘だろう…


「ダークコルダーに魔王ルシファード!」


「魔王なのですか? そんな…」


「…魔王、ゼクトの敵」


「貴様らぁぁぁぁーーー此処で何をしているんだ、まさか…」


◆◆◆


「初めてお目に掛かる…勇者ゼクトよ! 魔王の元にたどり着くとは! どうだなかなかの茶葉だぞ…美味かろう」


「あ~確かに美味いな…なかなかの高級品だ」


「しかし、不思議なものだ…そこに居るのはマリン王女」


「そうですが…」


「ルナちゃん…お菓子美味しい?」


「…美味しい」


俺は何を一体しているんだ…元勇者の俺が…まさかの魔王達とお茶をするなんて…


「それで魔王様が俺になんのようだ? 確かに俺は沢山の魔物や魔族を殺したが…マモンに俺だって酷い目にあわされたんだ…文句はきかないぞ」


一応は世界は平和で『王』なんだから敬称位はつけるべきだな。


だが、沢山の魔物や魔族を殺した俺は恨まれていても可笑しくない。


最大の天敵だったからな。


「ああっ、それなら良い、良い…今はセレス様の影響で魔族と人族との戦争は終わった。今更、余も過去の事を蒸し返そうとは思わないから安心して良い」


「そうだ、魔族は『力が全て』戦った結果に文句は言わないな」


「それにゼクト殿はセレス様の親友と聞く我はもう何とも思ってない」


「こちらの翼の軍団はゼクト殿の被害に遭って無いから文句いう筋合いはないですね」


「それじゃ、何で俺に声を掛けたんだ…文句は無いとは言え、わだかまり位はあるだろう?」


魔王ルシファードにダークコルダーにスカルキングにフェザー…が一体なんのようだ。


「それがじゃな、今の魔王軍は余を筆頭に 四天王 ダークコルダーにスカルキング…あと二人は入れ替わり、フェザーとゾルバが主だったメンバーだ」



流石に、魔王軍に囲まれているせいかマリンもルナも静かだな。


まぁルナは黙々とお菓子を食べているだけだが…


「それで、それが俺になにか関りがあるのか?」


「いやな…四天王のうちゴルバなのだが…先代がマモンだったせいか上手く軍団の統率がとれていなくてのう、他ならぬゾルバ自身が自信がないようなのだ…どうじゃ?良かったらゾルバに変わって四天王になって見ぬか?」


嘘だろう…俺を四天王に勧誘しようと言うのか?


「いきなり、何を言いだすんだ?」


「余はゼクト殿の実力を良く知っておる…今の世の中であれば魔王と勇者が仲良くなるのも有りだと思うぞ」


「確かにな…だがこれは重要な話だ。少し考える時間が欲しい」


俺には財産もあるし、今後もお金なら稼げる。


だが地位と言うならS級冒険者それだけだ。


四天王というのであれば貴族になおせば公爵か侯爵と同等。


悪い話ではない。


「ゆっくり考えてくれ…まっておるぞ」


「考えてみる」


それだけ伝えて俺はその場を後にした。




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