第194話 【閑話】勇者ゼクトのやり直し⑰ 旅立ち
俺なりにどうにか及第点にはなれた気がする。
炊き出しと治療は上手くいき…スラムはかなりマシになった気がする。
ルナも街に溶け込み、最近では『ルナお姉ちゃん』と慕われスラム近辺じゃ凄い人気者だ。
マリンも今では元王女だからと色眼鏡で見る奴は居ない。
もう帝都では帝王や貴族からスラムの人間までルナを嫌な目で見る奴はいないし、マリンを特別視する奴も居ない。
凄くこれは良い事だ。
今の俺の状態がセレスにとっての理想なのかも知れない。
全てを失いかけた俺を最後まで見捨てなかった『親友』セレス。
どんな顔して会えば良いのか解らなかった。
今の俺は勇者じゃない。
だが、人を助けるために頑張ったせいか、皆が『勇者』と呼んでくれる。
それが恥ずかしくてたまらないのだが、誰もやめてくれない。
セレスはそんなジョブじゃないのにセレスの事を皆が『英雄』と呼んでいた。
同じだ…
俺は今になって初めて、セレスが皆にしていた事のスタートラインに立てたのかも知れない。
あれから後も俺はスラムでの治療や炊き出しをルナやマリンと続けた。
他には希望する者に、冒険者としての訓練をつけてやった。
その結果、かなりスラムは裕福になった。
病気を治し、食事に困らない生活に手に職をつけさせる。
此処迄やれば、少しは変わるだろう…そう思っていたが上手くいったようだ。
「なぁルナ、マリン…少し旅に出たいんだが良いか?」
「ルナは良い…ゼクトに何処までもついていく…」
「私も同じ、ゼクト様のしたいようにすれば良いのですよ!」
「そうかありがとうな」
そろそろ俺はけじめをつけるべきなのだ。
セレスには謝罪をし許しを請う必要がある…それと感謝の言葉を伝えたい。神にすらなった彼奴に俺の手助けは要らないだろうが返せるなら恩を返したい。
母さんにも謝罪は必要だ。
絶縁手前まで怒らせてしまったんだものな…ミサキさんやハルカさん、サヨさんが居なければ完全に絶縁されていた。
土下座して謝って頬っぺたが腫れあがる覚悟が必要だ。
他にはリダにマリアにメル…俺が捨てる様にセレスに押し付けて逃げ出した幼馴染…幾ら謝ってもきっと謝り足りないな。俺は自分を愛してくれた幼馴染を…裏切ったんだ。
心からの謝罪が必要だ。
ふっあはははっ、生活を改めてみたら…自分が如何にクズ人間だったのか…良く解った。
取り敢えずはコハネに行って全員に謝ろう…そして許してくれたのなら…
『ゼクト…いつかまた酒でも飲もうぜ…』
彼奴との約束だ、一緒に酔いつぶれるまで飲み明かすのも良いな。
折角だから最高のお酒を持っていってやろう。
「何処…行くの」
「それでこれから何処に行くのですか?」
「コハネに行こうと思う」
「コハネ…」
「コハネと言えば最高のリゾート地じゃ無いですか?それにお姉さまも居ますし楽しみです」
「コハネ…楽しいの」
「凄く楽しい場所なのよ…温泉に海鮮料理…ルナちゃんも気にいるわ」
「そうなんだ…楽しみ」
今回の旅は『謝罪』の為だ。
だが、それを態々言う必要は無い。
そういえば…二人を連れての旅行は始めてだ。
お金には余裕があるから、謝罪が無事終われば…その後はリゾートを楽しむのも良いかも知れない。
「それじゃ、明日には旅立つつもりだから、後で旅行の準備をしよう」
「「はい」」
こうして俺は再びセレスに会う為に旅立った。
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