第191話 リゾート⑦ 聖女だから
凄いなこれ…
部屋の中には、男特有の栗の花の様な臭いと汗、他にも女特有の何とも言えない甘酸っぱい臭いが充満している。
俺は換気の為にカーテンと窓を開けた。
風が心地よい。
三人は…物凄く淫らな格好で疲れた様に眠っている。
一糸纏わぬ裸でうつ伏せだったり、仰向けだったりだが、口からは涎を垂らして気持ちよさそうに眠っている。
俺は、このだらしない姿が好きだ。
普段清楚で、しっかり者の女性が好きな男にだけ見せる『だらしない姿』これを見ると愛おしく思える。
その次に好きなのは『終わった後に腕枕をしている時』だが、残念な事に昨日は、マリアーヌ達は、静子達への対抗心からか、気絶して寝落ちするまでやり続けていたから…そんな余裕はなく、この通りだ。
俺は三人に毛布と布団を掛け、まぁ見られる様に簡単に周りを片付けた。
流石にこのままじゃ仲居さんに申し訳ない。
尤も、それでも、汗や布団についたシミから、誰が見ても昨日の事は解るが…これは、仕方ないな。
まだ朝食の時間にまでかなり時間がある。
「さてと、一つ風呂浴びてくるかな」
しかし、黄竜の体は凄い…疲れが全くない。
この体にとって睡眠は最早、ただの嗜好品にしか過ぎない。
恐らく年単位で眠らなくても何も問題は無いが、眠ったらしっかり爽快感がある。
それに溶岩や軍神の攻撃すら耐えるのに、人間の姿ならしっかりと快感も味わえる。
それなのに、痛みや不快な物は一切感じない。
本当に良いとこどりした状態だ。
理屈は…解らん。
こんな人知を超えた存在の事なんて…所詮俺の頭脳は人間だから解る筈が無い。
温水プールを前世で言うマグロより速く泳ぎ、飽きてきて露天風呂を味わっているとセシリアがやってきた。
「おはようございます」
「セシリアはもう大丈夫なのか?」
「これでも元聖女、回復のプロなのですよ?これ位大丈夫ですから。なんでしたら今から続きをして頂いても充分お相手出来ますよ」
「今は流石に大丈夫だから」
「そうですか。残念です!」
頭からすっかり抜けていたけどセシリアは『元聖女』回復役のエキスパートなんだよな。
確かに、二人とは違う。
もし、あれの時でも回復魔法を使えば、二人が倒れた後でも…恐らくは続けられた筈だ。
「そういえば、昨夜はなんで使わなかったんだ…回復魔法のエキスパートなのに…」
「セレス様もマリアーヌもフレイも、そんな物使っていませんでしたよね? そんな中で私だけが魔法を使うのは卑怯だと思いませんか?」
「確かに、そうかも」
俺は黄竜だから『種族が違う』
そう考えたら『魔法』も使わずに魔王と戦っている以上かも知れない。
「そうですよ? やはり『愛』は正々堂々とあるべきですよ」
「確かにそうかも知れない。だけど、それだと俺は竜だから、平等じゃないのかもな」
「そう言われてみればセレス様はもう神ですね…そう考えたら私が回復魔法やポーションを使っても良かったのかも知れませんね? そうですね、今晩はポーションに回復魔法を使って、頑張ってみますね」
「そこ迄、態々しなくても良いんじゃないかな? その、こう言うのって、お互いの気持ちを…確かめあう様なもので戦いじゃないんだから…ははは」
「あらっ、ですが私、一方的なのは好きじゃないんですよね。幸いこっちは三人…早速、今夜から試してみますね」
「お手柔らかに」
「はい」
確かに男だから、嫌いじゃないけど。
どうも静子達と張り合っている気がする。
静子達には静子達の良い所があって、セシリア達にはセシリア達の良い所がある。
だから、張り合う必要は無いと思うんだけどな。
「それで、セレス様、お願いがあります」
「はい?」
態々セシリアが口に出すお願いなんて何だろう。
◆◆◆
「これがお願い?」
「はいそうですよ? 私はこれでも元聖女で教会では重鎮扱いなのです。これこそが一番したい事なのです」
今、俺はセシリアに体を洗われている。
実際の所は解らないが、この世界には『洗体』をするような風俗は無い。
夫婦の営みでも、もしかしたらこう言うのは余り無いのかも知れない。
実際は静子達とやった事があるが『母親に甘える行為』みたいに思われていた。
『母親孝行の息子が背中を流してくれる』それに近い物と間違いなく思われていた気がする。
セシリアの願いは『奉仕がしたい』という事だった。
確かに、セシリアは元聖女…女神に仕える存在。
そして、俺はその教えの中で『神竜』という扱いになってしまった。
夫ではあるが彼女にとっては仕えるべき『神』でもある。
だから…奉仕がしたい…そう言う事だった。
「どうですか?何処か痒い所とかより綺麗に洗って欲しい所はありますか?」
シャボンを泡立て俺を洗ってくる姿は…不謹慎だが前世で行かなかった、泡の国を思い出した。
「ふぅ~気持ち良かったありがとう」
「どう致しまして」
しかし、こうして傍で見るとセシリアも凄い美人だ。
国を代表する『美女』だったんだからそりゃ当たり前だな。
そんな美女が俺を裸で洗っているんだから、凄い話だ。
「どうかされました」
「いや、こうして見るとセシリアって凄く綺麗だと思って」
「うふっ、凄く嬉しいですが恥ずかしいですね…あらっ」
「ゴメン…」
この状態で元気になるなという方が無理だ。
「それじゃ、折角だから、そちらの奉仕もしますか?」
「お願いします」
この状況で断れる男は居ないよな?
俺も同じだ。
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