第182話 三人



「いい加減遅すぎますわ。確かに旅行に行かせたのは私達ですが、私達だって新妻の筈ですわ」


「私の場合は、師匠が静子様だから、あまり文句は言いたくはないですが、流石に長すぎますね」


「あ~あ、こんな事なら一緒に行けば良かったな。温泉以外にも観光できる場所は沢山あったみたいだし、セシリアの話に乗るんじゃなかったよ」


「そうですわ、セシリアさんの話に乗れば、好感度が稼げると思いましたのに、これなら一緒に行くべきでしたわ」


「マリアーヌさんにフレイさん…二人は静子師匠達と一緒に旅行に行って楽しめるのですか? 此処は4人に恩を売って、私達とセレス様の時間を貰えるようにするのが一番じゃないですかね?」


確かにそうですわね。


私達三人は静子さん達に大きな借りがありますわ。


だから皆が強気に出られない。


王女二人に元聖女。


本来なら大きな権力を持ち、本妻になり独占する権利があるのに…よりによって好きになった男性が、この世で唯一権力が全く通じないセレス様なのですわ


だから、7人が全員同じ本妻という事になったのですが…


大切にはして貰っているのですわ。


それは凄く…ですが…


どう考えても『静子さん達』とは違うのですわ。


「それは仕方ないですよ、セレス様と静子師匠達は恋愛の末の結婚なんですから」


「そうそう、そこに差があるのは仕方ないさぁ」


セシリアさんやフレイさんのいう事は解りますわ。


「ですが、それを寂しいと思わないのですか?」


「思わない訳ないじゃない?だけど静子師匠達には、勝てないよ」


「そうそう、本質は兎も角、セレス様の前じゃ完璧な女性を演じているからね。無理だよ。それに壮大な恋愛の末の結婚。悔しいけど政略結婚の私達とは違うよ」


確かにそうですわ。


それは解り切っていますわ。


ですが、二人は少しだけ勘違いがありますのよ。


それは、セレス様には『恋愛』じゃ無いけど昔から違う感情なら私達三人にもありましたのよ。


「お二人が諦めるなら、此処からのお話はしませんわ。私1人で頑張ります。ですが、セレス様には静子さん達とは違う感情が私達にありましたのよ」


「えっ、なにかあるのですか?」


「何かあるのか?」


ええっ『恋愛』ではありませんが、昔から私達を繋いでいた絆はありましたの。


「ええっ、私達には『憧れ』がありましたのよ。ちゃんとセレス様から聞きましたわ。小さい頃『私に憧れていた事がある』と、年上好きのセレス様ですわ。小さい時に私や貴方達に憧れている。そう言う時期があっても可笑しくないでしょう?」


「「確かに」」


「それで考えたのですわ。勇者や英雄は『姫』や『聖女』に憧れを持つ物ですわ」


「流石に、この歳じゃ痛いですよ」


「そう思うな」


それはセレス様に関して言うなら心配はありませんわ。


「普通ならそうですが、セレス様にはそれは当て嵌まりませんわ。セレス様は…言うと悲しくなりますがババコンですから。だから、その私達を娶って下さったのですわ。そうじゃなければ、静子さん達でなくリダ達を選びますわよ」


「そうね、うんそうだわ」


「確かにそうだ…だけど、どうするの?」


私達には私達だけの武器がありますわ。


「セレス様の憧れた『姫』や『聖女様』に戻るのです。静子さん達に無い『気高さ』それが武器ですわ」


「上手くいくのですかね」


「上手くいくのか?」


「それは解りませんが、流石に旅行が長すぎますわ、そろそろ帰るように手紙書きましょう。まずは帰って来るまでに何か考えませんか?」


「「そうね」」


こうして手紙を書いたのですが…


◆◆◆


「余りに遅すぎますわ…もう待てませんわ」


「そうね、流石にこれは長すぎますね、ロスマン名誉教皇にお願いして空竜艇を出して貰いましょう」


「元聖女って凄いな…簡単に空竜艇って」


「まぁセレス様絡みなら教会は甘いですから、すぐに準備させますから、マリアーヌさんとフレイさんも旅の準備を」


「「そうね」」


こうして私達はセレス様の所に向かう事にしましたわ。




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