第181話 いつもと違う彼女達の顔



謎のUMAを倒した事で、普通に遊覧船もスワンボートも動いていた。


「ま、まずは遊覧船に乗ろうか?」


「「「「ええっそうね」」」」


4人はニコニコしているが、この次が怖い。


恐らくスワンボートになる筈だ。


この間の事が思い出される。


どうすれば良いんだよ…


◆◆◆


「「「「セレス(くん)(さん)(ちゃん)優柔不断は駄目だよ」」」」


「「「「さぁセレス(くん)(さん)(ちゃん)誰と乗るのかな?」」」」


「セレスくん、誰と乗るのかなぁ~」


「セレス、私とだよね? 違うのかな?」


「セレスさん…私よね?」


「セレスちゃん、私以外いないわよね?」


◆◆◆


思い出すだけでもどうして良いか解らない。


贅沢なのも解るし、優柔不断なのも解っている。


だが、それでも俺は…選べない。


「ふぅ~風が気持ち良いわねセレスくん」


「セレスー-っ、あそこ大きな魚が跳ねたよ!」


「セレスさん、あの変なの鳥居っていうんでしょう?」


「セレスちゃん、水が透き通る位綺麗…ほら」


やはり4人は凄いな。


こうして船の上で見る4人は本当に綺麗で絵になる。


「本当に気持ち良いし、うん凄いね」




思わず見惚れてしまう。


一生懸命働いて、偶に妻を連れてのバカンス。


これ位で俺には充分なんだよな。


それ以上の幸せは特に必要ない。


平凡が一番だよな。


湖の水面を眺めていると急に頭に念話が届いてきた。


『黄竜セレス様、今度この湖に越してきました古代水竜のスイと申します』


『引っ越してきた?』


『はい、黄竜様の住む地域に『変な存在が住むのも問題がある』と考えたバウワー様に此処に住むように言われました。凄く水が綺麗で良い場所ですね』


『気にいって貰えて良かったよ。それじゃ頼んだよ』


『頼まれました』


「どうしたの? また考え事かな?セレスくん」


「相変わらず、ぼーっとしているし」


「セレスさん、もしかして疲れました?」


「セレスちゃん顔色は、悪くないわね」


「全然気にしないで大丈夫だから、俺は元気だよ」


これからが、怖いけどね。


◆◆◆


「それじゃ、セレスまずは私とスワンボートに乗ろう」


「えーと姉さん? あの…」


「大丈夫、大丈夫! 昨日ジャンケンで順番を決めたんだよ!1番は私」


「ふ、不本意ですが、ジャンケンの結果ですから、よりによって4番目」


「そうね、仕方ないわ、私は3番目」


「うふふっ、だけど2番目は私なのよ、セレスちゃん」


これは全員とスワンボートに乗るという事か。


まぁ良いや楽しそうだし。


「さぁ、そういう事でセレス、さぁ行こうか?」


「そうだね、行こうか?」



「もしかして兄ちゃん達、本当は5人で乗りたいのか? それならこの大型スワンに乗れば良いんじゃないかな? 6乗りだから全員乗れるよ」


横を素早く走って静子がスワンボートに飛び乗った。


「それで良いわ、それじゃセレスくん、ほらこっち」


俺は静子に手を引っ張られ強引にスワンボートの前に乗り込まされた。


「静子ぉぉぉぉぉー-っ!ジャンケンで勝ったのは私なのに」


「そうよ、静子ズルいわ、セレスさんの隣は…」


「公平に決めるべきよ、ズルいわよ」


「あら、そう? 急がないと漕いじゃうわよ?」


「「「あっこらズルい」」」


結局俺の反対側の横にはハルカが座り、後ろにミサキとサヨが座った。


「全く、いつもは静かなのにこういう時は本当にずるいんだから」


「静子…何時もズルいわよ」


「まったくもう静子と来たら」


「ふふふ偶には良いじゃない? ねぇセレスくん」


静子ってこういうお転婆でお茶目な面もあったんだな。


「ぷぷっふふっははははっ」


「どうしたの?セレス急に笑い出して」


「セレスさん、なにか可笑しな事あった?」


「セレスちゃん、急に噴出してどうかしたの」


「いや、静子さんや皆の面白い面がみられたからついね」


「「「「セレス(くん)(さん)(ちゃん)酷い」」」」


「いや違うって、いつもと違う面が見られて嬉しい…上手く言えないけどそう言う事だよ」


「そうね、セレスくんと一緒だと若い頃に戻ったみたいだわ」


「確かに、若い頃はよくこうやって抜け駆けしたかも?」


「まぁ最近は静子が引いちゃうから、それで終わっちゃうのよね」


「セレスちゃん、凄く静子ってズルいのよ。こう言う勝負だとまず勝てないのよ」


「そうなの?」


最近、こう言う素の面も良く見せてくれるようになった。


凄くお茶目な顔も見せてくれる。


それが凄く嬉しい。


「セレスくん、それは違うのよ…私そんなにズルくないわ…大体ズルいって言ったら、サヨじゃない? サヨには私勝てないわ」


「そんな事無いわ、私はハルカには負けるわ」


「なんで私になるのかな? ミサキの方が」


「私? どうして私になるのよ!」


何気なく喧嘩しているみたいに見えるけど、これはただのじゃれあいだ。


仲良さそうで良いな。


俺も良く、ゼクトやリダとこういうじゃれあいをしていたから良く解る。


「まぁまぁ、そろそろ時間だし、今度は香草パスタと石窯ピザを食べに行こうか?」


「「「「そうね」」」」


ほら、やっぱり仲が良い。


◆◆◆


食事が終わり俺達は買い物に来ている。


冒険者証はクレジットカードを兼ねているからこういう時は便利だ。


「それじゃ皆、好きな物を自由に買って良いからね」


「セレスくんは一緒に回ってくれないの?」


「そうだよセレス一緒に回ろう」


「セレスさん寄木細工を一緒に見てくれない?」


「ガラス細工を一緒に見ようよ」


俺も本当はそうしたいが…駄目だ。


気がつくと知り合いが多くなり過ぎた。


考えるだけでも大量のお土産が必要になりそうだ。


「あはははっ、気がついたら俺、つきあいが広くなっちゃったから、大量に買わないと不味いから…ゴメン」


「「「「そうだね」」」」


しかも、偉い人ばかり、お土産が地味に面倒くさいな。


◆◆◆


俺が何店舗かのお店で大人買いをしていると…空に大きな空竜艇が現れた。


多分、これで…本当にバカンスは終わり…そんな気がする。






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