第180話 バカンスは続く
マリアーヌから手紙が届いていた。
セシリアが一生懸命、こちらにロマリス教皇達が来ようとするのを止めてくれているのだが、流石にそろそろ難しいとの事だ。
それにフレイからは『幾らなんでも長すぎる』そういう一言も添えてある。
流石にそろそろ帰らない訳にはいかないよな。
俺ってなんなんだろう?
俺が望んだ幸せって、こんな大それた物じゃ無かった筈だ。
ただ好きな人と結ばれて、畑でも耕して、ほんのちょっとした贅沢が出来れば良かった。
それだけだったはずだ。
「セレスくん、また難しそうな顔をしているわね」
「セレス、またなにか考えているの?」
「セレスさん…大丈夫?」
「セレスちゃん、また難しい顔をしているわ」
「少し考え事をしていたんだ」
「「「「そう」」」」
大好きな人4人は全員、俺の妻になっている。
小さい頃の憧れたお姫様や聖女様も今や妻だ。
仲の良かった幼馴染はゼクト以外は全員傍に居て家臣になっている。
これで幸せじゃないわけが無い。
これ以上ない位に出世してこれ以上ない位にお金も持っている。
これで『幸せじゃない』なんて言ったら罰があたるな。
それじゃ俺はこれから一体どうすれば良いんだろうか?
俺は...
「なにを悩んでいるのか私には解らないわ。だけど、セレスさんがしたいようにして良いのよ」
「セレス…勘違いしてない? 『したいようにして良い』って言ってもセレスに全部任せっきりというわけじゃ無いの。セレスがやりたい事に私達も手を貸す…そう言う事だよ?」
「そうだよ!セレスさん。セレスさんがやりたい事を手伝う事が私達がやりたい事なのよ」
「だから、セレスちゃんがやりたいようにやって良いのよ」
そうか『やりたいようにやって良いか』
今思えば俺って流され続けていた気がしないでもないな。
『やりたいように』か。
そうだな、今は何をするか決めていないけど、なにかやってみるか?
「そうだね、なにがしたいか今は解らないけど、やりたい事が決まったら手を借りるかも知れない…その時は頼むよ」
「「「「うん」」」」
「それじゃあ、そろそろ家に帰ろうか?」
「セレスくん、ほらまだ遊覧船もスワンボートにも乗ってないじゃない」
「セレス、姉さんとしては名物の石窯ピザと香草のパスタを食べたいな。それを食べてからでも良いんじゃないかな?」
「そうだよね、セレスさん。コハネには寄木細工の綺麗な箱があるらしいからそれ見に行きたいな…なんて駄目?」
「私はセレスちゃん、ガラス細工を見て見たいし、あと有名な釜飯も食べて見たい」
この場所は凄いな。
過去の転移者や転生者はこんな物まで再現していたのか。
寄木細工やガラス細工に興味は余り無いけど、石窯ピザや釜飯には興味あるな。
マリアーヌ、セシリア、フレイ…悪い。
これはもう暫く帰れそうに無いな。
「そうだね、それなら、それ全部、楽しみ尽くして飽きたら帰ろうか?」
「そうね、旅行はゆっくりとね。セレスくん」
「そうだよ!セレス!折角の旅行だから、もっと楽しまなくちゃ」
「セレスさんとの旅行なんだから私も、ゆっくり楽しみたいわ」
「セレスちゃん。急ぐ必要は無いのよ?」
バカンスは続く。
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