第178話 愛おしいだから人間だ。



再び暗転したかと思えば、気がついたら俺は元の部屋に戻っていた。


竜公とは言うけど、バウワー様との差は虫けらと人間以上差があるよな。


いきなり普通の場所から冥界に連れ去り戻す。


しかも…時間も経過して無い。


やはり『神』すら超える冥界の支配者。


桁が違う。


さてと…もう夕方か?


今日は、皆を誘って美味しい物でも食べて温泉にでも浸かるか。


その前に…4人は流石に疲れたのかスヤスヤ寝ている。


『可愛いい』


前世は兎も角、一応俺はまだ10代。


そんな俺から見ても凄く『可愛い』と思える。


『綺麗で』『可愛くて』『包容力もある』


凄いよな…


子供の頃の俺はこのうち誰か1人でも良いから『結婚したい』そう思っていた。


前の世界の記憶がある…それだけじゃ無い。


多分だが、小さくして親を亡くした俺には静子もハルカもミサキもサヨも皆『理想の母親』に見えていたのかも知れない。


初恋が友達の綺麗なお母さん。


前世も含んで良くある話だ。


大体の相場が、前世の初恋は『幼稚園の先生』か『綺麗な友達母親』まぁ稀に『自分のお母さん』があるかも知れないがそんな所だ。


だが、そんな夢は普通は叶わない。


年齢の差もあるし、何より『幼稚園の先生』以外には夫が居る。


だが、俺の場合はどうだ…


叶ってしまった。


前の世界は兎も角、この世界で俺は初恋が叶った。


それ処か…自分が子供の頃、綺麗だなと思ったお姫様や聖女様…全部が俺の嫁になっている。


今の俺にならそれが起きるのは解る。


運を味方につける竜。


黄竜だからな。


だが、あの時の俺は普通の冒険者…運が良かったとしか思えない。


しかし…皆綺麗だし本当に可愛い。


女性の寝顔を見るとかは良く無いのは解るけど…つい魅入られてしまう。



静子は優しくて綺麗だけど、一度ゼクトと一緒に女の子を泣かせた時には…押さえつけられてお尻ぺんぺんされたな。


マリアの背中にゼクトが蜘蛛入れた時も、ゼクトが…あれっ。


俺が怒られたのは全部ゼクトの巻き沿いじゃ無いか?




姉さんには良くゲンコツを貰ったな。


しかし、何で姉さんは昔から俺だけ『セレス』だったんだろう?


俺以外には『くん』をつけていた気がする。


今思えば姉さんには『カズマ兄さん』というお似合いの相手がいた。


だから、俺は早々と諦めたんだ。


他の三人の旦那とは違って『カズマ兄さん』には欠点は全く無かった。


前世をあわせれば俺の方が年上なのに…凄く大人で洗練されていて、カッコ良く思えた。


しかも家族が居ない俺の兄さん、姉さんになってくれた。


まぁ年齢で言うなら『母親』『父親』の年齢だけど、それを言ったら『お姉さん!』と譲らなかったな。


カズマ兄さんも『兄さんだ』と譲らなかった。


だけどリダの親と考えたら…父さん母さんの方が合うよな…言ったら叩かれそうだけど。


サヨは泣きほくろがあるせいか幸うすそうに見えるんだよな。


まぁ、夫のカイトさんが強烈だから余計そう思えたのかも知れないけど。


子供の俺が庇護欲にかられる位に『守ってあげたい』そう思えたんだ。


そしてミサキは…一見知的に見えるけど、見方を変えれば凄くエロく見える。


小さい頃、俺が寂しそうにしていると良く抱きしめて貰ったけど、前世があるとはいえ、思春期のせいか、よく顔を赤くした記憶がある。


今は…それ以上に凄い事しているんだけどな…


顔を見ていると、沢山の思い出が頭に浮かぶ。


凄く綺麗で可愛くて…愛おしい。


しかし、竜になっても、俺の心はきっと人間のままだ。


愛おしいのは竜ではなく『人間の嫁達』なんだから。


俺の体は竜。


だけど、心は人間だ。


静子達と触れ合う度にそう思うんだ。









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